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1年にわたる白血病の治療を終え、学校へ復学するも授業はほどんど受けられず。その経験から母に芽生えたある決意

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白血病治療の影響で変化した身だしなみが大きなストレスとならないよう、美容師さんがケアする様子。「アピアランスケア」と言う。

小学2年で急性リンパ性白血病を患い、現在は寛解期に入った石嶋壮真くん(13歳)。
前編では、白血病が判明した経緯や入院中の様子などをお届けしました。
後編では、退院後の壮真くんやご家族の様子、母親の瑞穂さんが代表理事を務める『チャーミングケア』の活動内容などに迫ります。

特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも子育てしやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています。

子どもにとって見た目の変化は大きなストレスに

退院後の壮真くん(写真右)と弟たち。

1年にわたる入院生活を終え、自宅に戻った壮真くん。退院後はどのような様子だったのでしょう?

「退院したときの息子は、髪の毛もまゆげも抜け落ち、顔は蒼白くパンパンにむくんでいました。
地元の小学校に通うとなると、自分の見た目が気になって、学校に行きたくないと思うみたいで…。初めの一歩を踏み出すのはすごく大変でした。

見た目の変化が、子どもにこれほどの大きなストレスになっているとは、息子から学ばなければ気づけなかったです」(瑞穂さん)


退院後しばらくは、院内学級の先生が定期的に来てくれて、2~3時間勉強を教えてもらっていたと言います。壮真くんは通学に二の足を踏んでいましたが、先生からのある提案が小学校に行くきっかけとなります。

「”髪の毛が生えそろって、顔のむくみが落ち着いたら、先生やお母さんと一緒に給食だけ食べに学校へ行こうや“と言ってくださって。まずは給食の時間だけ登校して、徐々に授業に復帰していきました」(瑞穂さん)

瑞穂さんは小学校と相談し、壮真くんが安心して過ごせるように、復学後は入院前と同じ担任の先生が受け持つクラスに在籍できる
ようにお願いしていました。

「息子は歌が得意だったので、担任の先生がカラオケ大会を企画してくれたんです。
出場すると、髪の毛がなくて顔がむくんでいても、みんなからの喝采を受けて息子は意気揚々となって。
復学に向けていい準備ができたなと思いました」(瑞穂さん)

薬の副作用で授業はほとんど受けられず…

小学校に復学するころの壮真くんは、院内学級に通い始めた時期とつらい治療の時期が重なったことから、小学2年の学習内容が習得できていない状況でした。
復学後は、退院後も続く経口タイプの抗がん剤の影響で勉強が進みにくかったそうです。

「小学校と相談して、特別支援学級の『病弱児』として学習面のサポートをしてもらいました。でも、服用していた抗がん剤の副作用で体はずっとけだるく、風邪も引きやすかったんです。授業に出席できても、1~2時間目でぐったり。1日6時間の授業を受けられるようになったのは小学4年になってからでした」(瑞穂さん)

医療者、教育者、理美容関係者がチームを組んでサポートしてくれたら…

壮真くんの復学をサポートした経験から、瑞穂さんは気づきがあったと言います。

「病気療養中の子どもなどが、負担なく学校生活を送るためには、医療・教育・理美容などの専門家がチームを組んでサポートしてくれたらなと実感しました。
子どもの外見や心のケア、その家族にフォローするしくみがあったらなと。家族だけでは子どもをサポートしきれないんです」

学校によっては、できる範囲で配慮してくれたり、一部の病院では医療者が中心となって院内学級や地元の学校に、退院後の過ごし方を申し入れてくれるケースも。ただし、そう多くはないそうです。

「残念ながらチームになって子どもや家族をサポートしてくれるしくみや制度がないのが実情だったんです。これはどうにかならないのかなと思いました」(瑞穂さん)

わが子の何気ないひと言が活動の原点に

ポータルサイト「チャーミングケア」より。「まなぶ」「はたらく」「かう」「しる」「おうえんする」という5つの側面から病児や障がい児、その家族をサポート。

『チャーミングケア』は、生活に不便さを感じたり、ほかの子との違いなどで気分が沈みやすい病児や障がい児が、自分らしくかわいらしく過ごせるように、家族へのケアも含め、さまざまなサービスの提供やその啓蒙活動を行っています。

「現在の活動を始めたいちばんのきっかけは、病気や障がいのある子がかかえる見た目の問題でした。私が思っていた以上に、息子は自分の見た目の変化を気にしていたことが大きな理由なんです」(瑞穂さん)

病児・障がい児専用のポータルサイト『チャーミングケア』の特徴は、「まなぶ」「はたらく」「かう」「しる」「おうえんする」という5つの側面から、子どもとその家族をサポートしていること。

「子どもへの適切な配慮がオンライン研修で学べたり、病院の付き添いや子どもの介護などで就労しにくい保護者に働く場を提供したり。
オンライン研修は、息子の復学をサポートした経験から産まれたものなんです。
子どもにかかわるさまざまな人が一つのチームとなって、配慮を必要とする子に適切な配慮ができる体制がつくれたらなと。
積極的治療の終了がゴールではなく、家族も子どもにとって適切な日常生活の体制を知ってほしい。そして子どもは自分の言葉で意見を示していくことも必要だと思っています」(瑞穂さん)

ほかに、日常の困り事をサポートするグッズ販売、子どもがかかえている課題の調査、その解決に向けた情報発信などもしています。

「より有意義な活動につながるように、寄付やサポーターなどは随時受付中です」(瑞穂さん)

立ち上げ当初は苦難の連続

「チャーミングケア」で販売している※カテーテルカバーの一例。

『チャーミングケア』の誕生に至るまでは、多くの困難にもぶつかったと言います。

「事の始まりは、治療で使う※カテーテルカバーを急ぎで作るようにと病院から頼まれたことでした。

※「長期間にわたって抗がん剤治療を長期間する際に使う医療用の細い管をカテーテルと言い、体内に埋め込んで使用するもの。体外に露出する部分もあるため、その衛生管理や事故防止のためにカバーを装着する。

そのカバーは市販では売っていなくて、どの家庭も手作りだと言うんです。見本もない中で明日までに用意するように言われて困惑しました。
白血病のお子さんのママやパパは、付き添い入院をしていることが多いので、既製品もなく、材料の買い出しにも行けず、みんな困ってるんじゃないかと。

その様子を見ていた息子が“今困ってるんだから今やらなあんかんと思う”と言ったんです。それがきっかけとなって、一時退院のときに『マミーズアワーズショップ』というショッピングサイトを開設して、送料込みのお試しキットをネット販売しました。
それが『チャーミングケア』の原点なんです」(瑞穂さん)

ネット販売は好調だったものの、瑞穂さんは関係者から厳重注意を受けます。

「子どもの医療ケアグッズは、無償提供が望ましいという風潮があることを知らなくて…。しかし無償では継続できません。試行錯誤しながら発信を続け、理解を深めていきました」(瑞穂さん)

ネット販売開始から2~3年が経ち、『日経ソーシャルビジネスコンテスト』でファイナリストに選出されると、物販の見方が変わってきたと言います。

「ソーシャルビジネスという一つの看板があると、物販を好意的に受け入れてくれるようになりました。インターネットを活用して個人で物を売り買いするのが浸透してきたのもこのころです。時代の変化かもしれませんね」

“機能不全家族”の元で育った経験を原動力に!

育児も家事も仕事もバランスよく精力的にこなしている印象の瑞穂さん。彼女を突き動かす原動力は何かと尋ねると、こう話してくれました。

「実家は比較的裕福な家庭で、私は私立の中高一貫校に通学していたんです。でも、いわゆる“機能不全家族”。
中学2年のとき、父が突然蒸発して、それを機に母は不安定になって。高額な学費を理由に高校進学を断念するように言われました。

私は、今までのお小遣いの貯金とアルバイトで学費を自分で工面して、高校と大学に進学したんです。
同学年の人と比べると、困難さを感じたし、人生の選択肢の少なさを実感しました。

子どもたちには私みたいな思いをさせたくない。私が経験したような家庭環境による理不尽さは味わわせたくない。そんな想いが私を突き動かすんだと思います」(瑞穂さん)

病児や障がい児の居場所をメタバースで構築中。子どもたちの声を未来に活かしたい

プログラミングが得意な壮真くん。現在、メタバース開発中。

現在、とくに力を入れて活動していることは、子どもの※アピアランスケアとメタバースの開発だと瑞穂さんは話します。

※病気や障がいによる見た目の変化が引き起こすストレスを軽減するためのケアのこと。

「アピアランスケア支援事業」は、主にがんを患った女性がウィッグなどの購入に利用している助成制度で、私たちが調べたら、この制度を実施している自治体は全国で約4割だったんです。
子どもには利用しにくい面があるので、子どもも使いやすい制度になるように活動しているところです」

子どものアピアランスケア広がりにくい背景の1つは、病気や障害がある子どもの保護者が、わが子の看病や介護などを理由に働きづらく、個別性の高い子どものケアグッズにお金をかけることに躊躇している背景があるように感じます。
助成が整備され、そのハードルが少しでも下がればいいなと。

さらに瑞穂さんは続けます。
「病気経験者や治療中の子、障がいを持つ子などが気軽に集まれる居場所をメタバースで作っています。今、プログラミングが得意な壮真が開発中で、予算管理も含めて任せてみようと思っています。

より多くの子どもの意見を集めて、世の中に発信することで、その子たちが生きやすい社会になるんじゃないかと思っています。
私は今、企画事務所を運営しながらこの活動を行っています。病気や障害のある子ども界隈には、包括的ケアに関する専門家が少ないことも課題だと感じていて、私も専門家になれたらと、来年から専門大学に通う予定にしています。
何足も草鞋を履くのはさすがに大変ですので、メタバースが定着して壮真がしっかりしてきたら、事業を引き継ぎたいというのが近い将来の展望です」

取材・文/茶畑美治子

「言語化されない心の声にも目を向けて、子どもの声をしっかり聞くようにしています。親子であっても適切な配慮がし合える関係でいたいので、よく話しをして理解を深めているんです」子育てのモットーを教えてくれた瑞穂さん。

わが子の様子を見ていて“何か気になる”とママやパパの勘が働いても、“気のせいかな”と思うことがほとんどだと思います。
そんなときこそ、いつも以上にお子さんに目を向けて、心の声に注目してみてもいいのかもしれませんね。


取材協力・写真提供/一般社団法人チャーミングケア

一般社団法人チャーミングケア 代表理事 石嶋瑞穂さん

写真右は長男の壮真くん

1978年生まれ。大学卒業後、広告代理店などを経て制作会社のネットベンチャー事業に従事。29歳で子宮頚部異形成発症し手術。その後結婚。2011年、切迫早産となり妊娠8ヶ月で長男の壮真くんを出産。低出生体重児、心疾患治療のため1ヶ月間NICUに入院、手術を経験。2010年に次男、2012年に三男を出産。7年間の専業主婦を経てフリーランスとして企画事務所を設立、2016年に開設したショッピングサイト「マミーズアワーショップ」運営を経て、一般社団法人チャーミングケア設立。現在に至る。
受賞歴は2017年「J300アワード特別賞」、2018年「大阪商工信金社会貢献賞」、「第2回日経ソーシャルビジネスコンテストファイナリスト選出」など。


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