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視力がどんどん成長する乳幼児期。「スマホを見せるのは絶対にダメなの?」「どうつき合うといいの?」目の専門家に聞きました

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部屋の中の日本人の兄弟
●写真はイメージです
kokoroyuki/gettyimages

デジタル機器(スマートフォン、タブレット端末、携帯ゲーム機器など)の使用が低年齢化している昨今、デジタル機器の長時間使用が原因と考えられる目のトラブルも低年齢化しているといわれています。目の機能が著しく発達する幼児期は、デジタル機器とどのようにつき合えばいいのでしょうか。デジタル機器が子どもの目の成長に与える影響を研究している、国立成育医療研究センターの眼科医・吉田朋世先生に聞きました。

乳児~幼児期は目の機能がぐんぐん発達する、とても重要な時期

生まれたばかりの赤ちゃんは、物の形がぼんやりと見える程度の視力しかありませんが、その後どんどん視力が上がっていき、1才で0.2程度、2才で0.4程度となり、3才までに視力は急速に発達。そして6才までにはほぼ大人と同じ1.0~1.2程度になります。
目には「目の前の物を見る力」以外に「見たいものにピントを合わせる力(調節反応)」や「物を立体的にみる力(両眼視機能)」など、いろいろな機能があり、それらも乳児~幼児期に発達していきます。

「距離に応じてピントを合わせる『調節反応』は生後2カ月ごろから始まり、4カ月ごろ正確にできるようになります。そして10カ月ごろには大人と同じ反応がみられるようになります。
また、左右の目で同時に見て遠近感をとらえる『両眼視機能』は3~5カ月ごろから急に発達し、4才ごろに大人と同じレベルに達します。
このように、乳児~幼児期は目のさまざまな機能が急速に発達する、とても重要な時期なのです」(吉田先生)

デジタル機器の使用は、子どもの目の発達に悪影響を与えてしまう!?

コロナ禍の外出自粛などの影響で、デジタル機器を使う時間が増えたことに伴い、子どもの視力の低下や急性内斜視(きゅうせいないしゃし)の発症が問題視されるようになりました。

「デジタル機器が子どもの目の機能の発達にどのような影響を及ぼすのか、はっきりとしたメカニズムは解明されていません。しかし、2021年度に国が初めて行った『児童生徒の近視実態調査』では、現在の子どもたちは、低年齢から近視が進行していることが明らかになりました。
低年齢から近視になると、どんどん近視が進み、大人になるころには目から16センチくらいの距離しかはっきり見えない“強度の近視”になる可能性が高くなります。そして、強度近視は将来、緑内障(りょくないしょう)や網膜剥離(もうまくはくり)などになるリスクが高まります」(吉田先生)

また、幼児期の急性内斜視は子ども自身が自覚できず発見が遅れることがあり、放置すると立体感覚が育たなくなることがあるそうです。

「近視や急性内斜視の原因がすべてデジタル機器にあるわけではありませんが、無関係だとは考えられません。2019年にWHO(世界保健機構)は2才~4才の子どものデジタル機器の使用は1時間を超えないようにすること、2才未満はテレビやデジタル機器を視聴させないことが望ましい、というガイドラインを出しました」(吉田先生)

画面が小さいほど目の負担は増える。見せるときはできるだけ大きな画面で

子どもの目の発達を妨げることは避けるべきなのはとてもよくわかります。でも、外出先で子どもがぐずったときや、家事や仕事などで忙しいときなどには、どうしてもデジタル機器に頼ってしまうことがあるものです。

「デジタル機器が生活の必需品になっている今、幼児期にまったくデジタル機器に触れない生活をするのは無理だと思います。だからこそ、デジタル機器と上手につきあう方法を、ママやパパには知っていてほしいのです。

目から30センチより近い位置を見続けると、近視や急性内斜視のリスクが高くなります。画面が小さいほど30センチ離してみるのは難しくなるため、スマホよりはタブレット端末、タブレット端末よりはテレビ画面のほうが、目に与える負担が少なくなります。子どもにデジタル機器を視聴させるときは、できるだけ大きな画面で見せるようにしてください。

また、子どもの手は短いので、デジタル機器を持たせると、非常に目から近い距離で視聴することになってしまいます。たとえば、テーブルの上に置いたタブレット端末をスタンドで固定し、子どもは椅子に座らせて、タブレット端末に近づけないようにして見せるなどの工夫ができるといいでしょう。寝っ転がった姿勢も、画面との距離が保てないためよくありません。座って見ることを習慣づけてください」(吉田先生)

大人の場合、デジタル機器を長時間使用して目の疲れを感じたら、自分で使うのをやめます。しかし子どもは、夢中になると目の疲れを自覚できないことが多く、何時間でも見続けてしまう恐れがあるそうです。

「デジタル機器の使用時間は、ママやパパがコントロールする必要があります。幼児期は1日1時間以内を目安にしてください。1時間連続して見るのではなく、30分に少なくとも1回、5分は休憩を取らせ、窓から外の景色を見るなど近距離以外を見るように促し、目を休ませます」(吉田先生)

2才未満のデジタル機器の使用は、ぐずり対策の最終手段としてごく短時間に

WHOは2才未満の子どもにはデジタル機器を見せないのが望ましいと提唱していますが、公共の場でぐずったときなどにも使ってはいけないのでしょうか。

「『ぐずり対策=デジタル機器』と、デジタル機器ありきで考えるのではなく、まずデジタル機器以外の方法であやしてみて、どうしても泣きやまないときにごく短時間だけデジタル機器を見せる、といった使い方にしてほしいと思います。

また、近年の研究で、屋外の明るい環境で過ごす時間が長い子どもほど、近視になりにくいことがわかりました。近くを見続ける時間が長くても、1日2時間の外遊びをする子どもは、近視が進行しにくいというデータもあります。こうしたことから、ママやパパの負担にならない範囲でいいので、外遊びの時間を持ってほしいのです。

今の子どもたちは生まれたときからデジタル機器に囲まれた生活をしているからこそ、ママやパパが使用時間をコントロールして、子どもの目を守ってあげることが欠かせません。そして、幼児期からデジタル機器とのつき合い方を子どもに教えてあげることも、とても重要になります」(吉田先生)

お話・監修/吉田朋世先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

デジタル機器に囲まれた生活が当たり前の今の子どもたちは、目に大きな負担をかけるリスクがあるようです。適切な視聴環境を整え、視聴時間をコントロールすることで、発達途上の子どもの目を守ってあげることが大切です。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

吉田朋世先生(よしだともよ)

PROFILE 
国立成育医療研究センター 小児外科系専門診療部 眼科。2012年鹿児島大医学部卒。14年より同センターに勤務。小児の視機能におけるICT(情報通信技術)機器の影響に関する研究に取り組んでいる。

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