ウイルス性胃腸炎「アルコール消毒で感染対策」「脱水を心配して、嘔吐後すぐ大量に水分補給」この対応は間違いです!【小児科医】

赤ちゃんは突然吐くことがあります。とくにノロウイルスやアデノウィルス、ロタウイルスなどを原因とするウイルス性胃腸炎で吐いた場合、感染力が強く、多くの場合二次感染を引き起こすため、後始末が重要に。これらのウイルスはアルコール消毒が効かないため、新型コロナウイルスの感染対策下においてもウイルス性胃腸炎は流行しています。
ホームケアのポイントを小児科医の白井沙良子先生に聞きました。
家庭内での二次感染を防ぐために知っておきたいホームケア
ウイルス性胃腸炎の感染経路には経口感染や空気感染などがあります。家庭内では、便や吐いたものに含まれたウイルスが手について口に入ることで、周囲に感染が広がる”二次感染”を起こすケースが多いです。
「とくにノロウイルスやロタウイルスは赤ちゃんが感染すると、ほとんどの親がうつるほど感染力が強いです。少しでも家庭内に広めないためには、以下の対応が基本になります」(白井先生)
【1】流水で手洗いをする
ウイルス性胃腸炎の原因になるウイルスに、アルコール消毒は効果がありません。おむつなどの処理後は、必ず手洗いをして感染対策をしましょう。吐物を処理する際は、ビニール手袋とマスクを着用するのがおすすめです。
【2】吐物の処理などは次亜塩素酸ナトリウムを使う
ウイルス性胃腸炎のウイルスに対して消毒効果があるのは、次亜塩素酸ナトリウム。家庭用の塩素系漂白剤や哺乳びん消毒薬などがこれに該当します。吐物を処理した後の床、ドアノブ、おもちゃなどは、家庭用の塩素系漂白剤や哺乳びん消毒薬を薄めてつくる次亜塩酸トリウム消毒液を、布などに含ませてふき取りしましょう。
【3】タオルは分けて使う。汚れものは洗濯・消毒
タオルは共有せず、一度赤ちゃんに使ったら洗濯をしてください。洗濯をするときは、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を入れるか自動乾燥機で仕上げて熱消毒(85度以上で1分以上)しましょう。
【4】換気をする
乾燥した吐物や便からウイルスが飛散することがあります。空気感染を防ぐためには、適度に換気をするといいでしょう。
抱っこしているときに、赤ちゃんが突然嘔吐したときは・・・
抱っこしているときに赤ちゃんが嘔吐し、親が吐物をかぶってしまうというケースもよくあります。
「その場合は、2人で浴室に直行して体を洗い、服をすぐに洗濯してください。ふき取った吐物やビニール手袋、マスクはビニール袋に入れてすぐに密封して捨てましょう」(白井先生)
赤ちゃんが何度も吐いてしまうと、水分不足による脱水症なども心配になります。
「ウイルス性胃腸炎の場合、嘔吐後1~2時間は水分を控えるのが基本です。赤ちゃんが泣いているから、水分不足が心配だからと、嘔吐後すぐ水分を与えると高確率でまた吐いてしまうからです。
ただ、赤ちゃんがどうしても泣きやまず、落ち着かせるために飲ませたいのであれば、吐くことを覚悟して与えるのはいけないことではありません。私は患者さんには、『普段からお子さんを見てくださっている保護者の方が、その時の状況によって、どちらがいいか判断していいですよ』と伝えています」(白井先生)
赤ちゃんに与えてもいい水分はどのようなものになるのでしょうか。
「水分は母乳やミルクなど、普段から飲み慣れたものでも十分です。嘔吐の回数などが多く医師からすすめられたときは経口補水液やイオン飲料など、塩分と糖分が含まれているものを与えてください。
イオン飲料などを嫌がる場合は、味噌汁やスープ、ジュースなどでも代用可能です。
胃腸炎で嘔吐や下痢が続くと必要な電解質(塩分などのミネラル)が失われます。そこで塩分の含まれていない水を飲み続けると体内の電解質のバランスが崩れて、体調が悪くなることも。また糖分が含まれていると水分の吸収がよくなり、低血糖を防ぐことができます。
水分補給をする際は、5分間隔で少量ずつ飲ませましょう。再度嘔吐した場合は、最後に嘔吐してから、また1~2時間待ってからあげるようにします」(白井先生)
一方、離乳食などの固形物は、最後の嘔吐から12時間ほどあけてから食べさせるのが基本だそう。
「12時間くらいあけるのが基本ですが、どうしても難しい場合もあるでしょう。
吐きけが落ち着いていて水分もとれるようになっている、最後の嘔吐から6時間くらいたっているのであれば、ゼリー飲料などを与えてみても。赤ちゃんの様子を見ながら臨機応変に対応できるといいでしょう」(白井先生)
おむつはこまめに替えて。汚れたおむつは密閉して廃棄
ウイルス性胃腸炎に感染した場合、下痢が続くことがあります。下痢便でおしりが荒れやすくなっているので、おむつは便が出るたびにこまめに変えましょう。
「二次感染を防ぐために、おむつ替えのときはマスク、ビニール手袋などを着用するのがおすすめです。また、赤ちゃんを寝かせるときはあらかじめ布団の上にタオルなどを敷いておくと、うんちモレによる汚れを防ぐことができます。
おしりにこびりつきやすい下痢便は、ソースボトルの容器などにぬるま湯を入れ、おしりにぬるま湯を少しずつかけながら洗い流すと落としやすくなります。汚れたおむつ、手袋やマスクは1つ1つビニール袋に入れてすぐに密閉して捨てます。またトイレに便を流す場合は、ウイルスを吸い込まないようにふたを閉めてから水を流すことが大切です」(白井先生)
取材・文/中澤夕美恵、たまひよONLINE編集部
体調の悪い赤ちゃんのお世話をしながら、吐いたものや下痢便の後始末をするのは大変ですが、二次感染を防ぐためにも、適切な処理が大切です。嘔吐のあと、おなかがすいた赤ちゃんに飲み物や食べ物をがまんさせると、泣かれて大変かもしれません。でも、再び嘔吐してしまう可能性が高いので、「12時間くらいは固形物を控える」を原則にしつつ、赤ちゃんの様子を見ながら臨機応変に対応しましょう。
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