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「常に尿がもれる」状態などから診断される、先天性の疾患。幼少期に気づいてあげたい【ママ泌尿器科医】

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パジャマ姿の日本人の子供たち
●写真はイメージです
TATSUSHI TAKADA/gettyimages

男の子と女の子2人のママであり、泌尿器科医である岡田百合香先生の連載。今回は尿管に先天性の異常があることに気づかずに大人になってしまったケースから、子どもの排せつに関するサポートの大切さと医療への適切なアクセスについてて考えます。「お母さん・お父さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#48です。

尿管の先天異常に40代まで気づかないことが!?

病院で診察をしていると、「実は子どものころから」「かなり若いときから」症状があったのだという方に時々出会います。
とくに印象的だったのは、「常に少量の尿がもれる」という40代の女性です。物心ついたころから尿もれがあり、子どものころに一度保護者と病院を受診したけれども、「とくに異常はない」と言われ、そのままになってしまったそうです。

検査の結果「異所性尿管」という尿管の先天異常がありました。本来であれば膀胱につながるはずの尿管が腟とつながってしまているため、常に腟から尿がもれる状態になります。原因さえわかれば手術による治療が可能で、その女性も無事手術によって尿もれはなくなりました。
しかし、思春期や若い年代を常に原因不明の尿もれとともに過ごさざるを得なかったことは、彼女の人間関係や社会生活にネガティブな影響を与えたのではないかと想像します。
子どものころ、せめて思春期前までに適切な診断が下され治療につながっていれば・・・、と思わずにはいられません。

医療の進歩と専門家領域の細分化による課題も

だからといって、本人や保護者を責めるのは違います。子どものころにちゃんと病院を受診しているわけで、医療に精通していない人が医師から「異常はない」と言われたら、その診断を疑うのは難しいことだと思います。
子どもも年齢が上がるにつれて保護者に排せつのことを相談するハードルが高くなり、子どもが排せつのことで悩んでいるのか否かを把握すること自体が難しくなってしまいます。思春期以降、性や排せつに関する受診が羞恥心によってためらわれるのは当然のことです。

それでは医師に問題があったのでしょうか。彼女の「異所性尿管」という病気は泌尿器を専門とする医師にとっては「尿が常にもれる」という症状に対して容易に浮かぶ病気ですが、泌尿器科以外の医師にとってはなじみが薄い病気です。また、この病気を診断するには総合病院レベルの設備が必要です。
なので、幼少期の彼女と保護者が受診したのが泌尿器科疾患に詳しくない医師であった場合、尿検査やエコーのみで「異常なし」と判断されてしまう可能性は考えられます。
とはいえ、基本的な検査の結果に異常がなかったからといって病気がないとは限りません。患者さんの症状が改善しないのであれば、医師はその領域の専門家がいる病院に紹介するべきだったと思います。

医療の進歩のスピードは目覚ましく、専門領域の細分化も進んでいます。自分の専門外の領域にはどんどんうとくなっていくからこそ、わからないことは「わからない」と正直に伝え、わかる専門家へつなぐ勇気と責任が必要だ、と自戒をこめて感じています。

わが子の健康に不安がある場合の、受診の目安と受診科とは?

さて、わが子の健康に関して気になることがある際に、病院に連れて行くべきか。何科に、どのタイミングで連れて行けばいいのか。多くの保護者にとって悩ましい問題だと思います。
さまざまな情報をインターネットから得やすい時代ではありますが、保護者に医療者並みの医学知識と判断能力、責任を持たせようとするのはむちゃな要求です。
また、子どもの医療へのアクセスが親の判断に依存してしまうのも「子どもの権利」の観点では問題ではないでしょうか。

たとえば子どもの排せつに関する情報は、保護者だけでなく保育園・幼稚園・小学校の先生方の気づきも重要です。気になることがあっても「保護者に伝えるべきか」判断に悩まれることも少なくないようです。子ども本人、保護者、保育教育機関、医療がうまく情報共有して連携できるようなしくみをつくれたらいいなと思います。

医療への適切なアクセスを意識しよう

病院での診療以外に、自治体がやっている「まちかど保健室」という事業の相談員もやっています。無料で医師(私)に体や心の相談をすることができ、これまで自身のトイレの悩み、子どもの夜尿症、メンタルの相談などさまざまな話を聞いてきました。
その場で検査や処方はできませんが、ていねいに話を聞いて医師ならではの情報を提供することができるため、「病院に行くほどじゃないけど気になる」「行くべきかどうか悩んでいる」という方のニーズに合ったかかわり方ができると感じています。

オンライン診療、チャット相談、小児科訪問診療・・・、医療へのアクセスにもさまざまな選択肢が出てきています。それぞれが使いやすいと感じるものでいいので、どんどん頼って「健康に関する責任」を1人で抱え込まないようにしていきましょう。

文・監修/岡田百合香先生、構成/たまひよONLINE編集部

「子どもは年齢が上がるにつれて、排せつについて保護者に相談するハードルが高くなる」という岡田先生の言葉が印象的です。幼少期の間に、保護者だけなく周囲の大人がささいなことでも一歩踏み出すことで、その後の生きやすさにつながることがあることも覚えておきたいものです。

●記事の内容は2024年7月の情報で、現在と異なる場合があります。

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