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自身も2児の母、産婦人科医・宋美玄先生。日々、女性の体と向き合う医師として、今、伝えたいこと

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(宋先生Facebookより)

東京の「丸の内の森レディースクリニック」の院長で、女性のヘルスケアについて発信している宋美玄先生。産婦人科医として多忙な日々を過ごしていますが、先生自身も2児の母親でもあります。医師として母として活躍する宋先生に、自身の子育ての悩みから、現代の女性のヘルスケアの課題について聞きました。「多くの女性に正しい知識をもって、正確な情報をつかんでほしい」と先生は話します。

産婦人科医になったのは、外科医の父の影響が大きい

講演中の宋先生。(宋先生Facebookより)

――宋先生は数々のメディアでも、情報発信をしています。産婦人科医をめざしたきっかけについて教えてください。

宋先生(以下敬称略) 父が外科医だったことが大きいと思います。子どものころ、父から手術の話をよく聞いていたので自然と手術にあこがれをもつようになりました。しかし、進学した大学の外科には女医がほとんどいない状態で、外科医を志すことが難しい雰囲気でした。
一方で、産婦人科には多くの女医がいたこと、「おめでとう」という言葉があふれている科ということに魅力を感じるようになりました。女性であることがプラスになる科ということ、場合によっては手術を執刀することもあることから、産婦人科医を志すようになりました。

――先生が医師になった当時と今とでは、医療の世界でも働きやすさに差がありましたか?

宋 今は多くの女医が外科でも活躍していますが、昔は女医が手術を執刀するとなると「あなたが私のおなかを切るんですか?」と患者さんに躊躇(ちゅうちょ)されたなんて話はよく聞きました。でも産婦人科の場合は、昔も女医を指名する方もいたので働きやすい環境ではありました。

――そこから産婦人科の世界で医師としてさまざまな活動をされているわけですね。

宋 今はだいぶ変わったと思いますが、私が通っていた大学のしくみは研修医の最初の1年は婦人科全般を学び、そこから病院に派遣されました。行った先の病院が周産期をメインにした病院だったので、周産期を学んでいました。

「スマホ依存が怖い!」子どものスマホ問題に直面中

――宋先生自身の子育てについても教えてください。お子さんは現在、何歳ですか? 子育てにおいての悩みはありますか?

宋 子どもは2人で、中学1年生の女の子と小学3年生の男の子です。現在の子育ての悩みと言えば、娘のスマホ問題ですね。よくないよな…って思いながらも、連絡手段としては便利な部分もあるので完全に取り上げるわけにもいかないです。でもやっぱり依存も怖いな…と今はもっぱらスマホとのつき合い方に悩んでいます。

――たしかに依存は怖いです。

宋 中学生になって向上心をもった活動をしてもらいたいなって思っていますが、そもそも思春期なので口うるさく言ってもきかないだろうなって躊躇する部分もあります。でもスマホが近くにないと不安そうな姿を見ると心配になります。

――下の息子さんについてはどうでしょうか?

宋 息子に関しては、友だちともめることもありますが、まだまだ子どもなので、すなおでかわいいです。スマホでYouTubeやゲームがしたいとは言ってきますが、自分の携帯を持っていないので、時間を決めて貸してあげたりしています。お姉ちゃんが中学生になって自分のスマホを買ってもらっている姿を見ているので、自分も中学生になったら買ってもらえると思っているかもしれません。

――日々の仕事が忙しい中、子育てにも向き合っている状態ですね。

宋 子どもはどんどん成長し、自立していくでしょうが、いまは私も子育ての理想と現実のはざまにいるような感覚です。ほかのお母さんたちと同じではないでしょうか。

女性の体に生まれたがゆえ、命題を突きつけられている人が増えている

中1の娘さんと、小3の息子さん。

――日々いろんな女性の体や病に向き合っているかと思いますが、昨今、女性が抱える悩みはどんなことが増えていると感じていますか?

宋 子どもの生理の悩みで相談にくる患者さんや、子どもは欲しいけれど、今は産んで育てる自信がないという女性。そして卵子凍結についての相談も増えています。

――ひとつずつ詳しく聞かせてください。まずは生理についてどんな相談で来院されるのでしょうか?

宋 初潮を迎える時期の低年齢化が進んでいるので、ホルモンバランスの悩みや、生理痛、ピルの服用についての相談が多いです。今は生理痛をがまんするような時代ではないので、ピルの安全性や効果などを説明し、生理とのつき合い方をお話しします。

――次に卵子凍結の相談について教えてください。

宋 東京都が卵子凍結をする女性に対し、最大30万円を助成する制度の開始を発表したことで、私のクリニックも都内にあるので、卵子凍結についての相談は増えました。とくにパートナーはいないキャリアウーマンの方が多い印象です。いつか産むときのために、今から準備しておこうと考えている方が多いように思います。

――社会的に少子化問題も深刻化しています。しかし政府の方針は的を射ていないような印象もあります。そこで、産婦人科医として先生が課題に感じていることを聞かせてください。

宋 いろいろとありますが、出産の保険適用については疑問に思うことがあります。「保険適用」と聞くと安くなる、無料になるというイメージがあるかもしれませんが、決してそうではありません。もちろん、産む人の負担は減らすべきです。しかし、地域によっては国が定めた金額ではやっていけない病院もあります。地域医療が崩壊してしまったらだれが困るのかと言えば、その地域に住む妊婦さんです。公定価格による保険適用は、別の意味合いであるということを政府がわかっていないような印象があります。

――政府は「保険適用されるから産んでください」と言わんばかりな感じなのは、安易だということでしょうか。

宋 そんな簡単な問題ではないと思います。お産が減っていく局面で、採算が取れるところだけがやっていくような状態にしてしまっては、産む場所がなくなっていきます。たとえば、隣接したA市とB市にそれぞれ市民病院があり、産科もあったとします。しかし、この2つの病院の産科はそこまで患者さんがいないので1つにまとめましょう、となった場合、閉じてしまった市に住む妊婦さんや医療関係者は大変です。

産婦人科の医師として、お産が減っていく中でこれからどうやって産業を維持していこうかという問題もありますが、政府が計画性のない状態でいろいろと提案してしまうと、あとあと困る人が出てきてしまうので、しっかり考えたうえで方針を打ち立ててほしいと考えています。

あやしい情報に惑わされず、信頼度の高い情報をもとに楽しく子育てをしてほしい

子育て中の宋先生、「ママお誕生日おめでとう」のケーキと共に!(宋先生Facebookより)

――最近は実名でSNS等を使って正しい情報を発信する医療従事者の方も増えているようですが、いまだに間違った情報を鵜呑みにする人も多いです。

宋 産科・婦人科に限ったことではないですが、ニュースになるとどうしても一方的な発信のしかたをされてしまいます。そして、そのニュースを見た人も安易に信じてしまう傾向にあるので、もう少し専門家の意見の深堀をして確認してほしいなと思います。

――先生は朝や夕方のニュース番組にも専門家として出演されていますが、今後も機会は増えていきそうですか?

宋 テレビ離れが加速していますが、それでもテレビでの発信は大きいと思います。自分が出演しているときに専門分野の解説が必要なときはもちろんしっかり解説しますし、VTR出演で正確な情報を伝えることもできます。ですから、正しい情報を伝えるということにおいて、今度もメディアとは連携していければいいなと思っています。多くの産婦人科医が抱える課題ですが、診察に来てくれた人には正しい情報を伝えていきます。しかしそれでは間に合いません。産婦人科に来る前の段階の人に情報を伝えたい、来院してからも「こんな選択肢もあるよ」と提示することで一緒に問題に取り組むことができます。

――先生はこれまでの活動の集大成として、新しいメディア「Crumii」の立ち上げを考えているそうですが、どんなプロジェクトか教えてください。

宋 「CREATE」と「YOU&ME」という言葉から「Crumii」と名づけました。正しい情報を伝えたいという思いが大前提ですが、女性にまつわることや、産婦人科にかかわりのある問題について企画段階から医師が関与しているメディアがあるといいなと思い、立ち上げることにしました。
法律や制度についても解像度を上げた、よりわかりやすい内容を女性に伝えたいというコンセプトです。それぞれの事象や社会問題など、多くの女性が「これはどういうこと?」というような内容を深堀していくメディアをめざしたいと考えています。

――既存の女性の健康をうたっているメディアとの違いはどんなところですか?

宋 一番の特徴は、産婦人科医と女性をつなぐプラットフォームであるということです。一方的にこちらから情報を発信するのではなく、読者と一緒に作っていくメディアであることも特徴です。たとえば、病気の症状や治療法などは医師から発信し、実際にかかった患者さんの声も知れる、そして不安に思っている人の声もコメントから共有できるようになっているので、ひとつのことを多方面から知れるようなしくみになっています。

生理のことや更年期、診察時の悩みなど、ささいな悩みも検索できるようなしくみになっているので、産婦人科医に質問しているような気持ちで頼ってもらえるようなメディアになるといいなと思っています。そして、産婦人科にかかることにハードルが高いと感じていた人が、安心してかかることができる産婦人科の情報も知れます。女性の健康に関しては多くの選択肢があるということ、もっと主体的で健康的に生きられるということを知ってもらえたらうれしいです。

――最後に「たまひよONLINE」の読者にメッセージをお願いします。

宋 妊娠から子育て中まであらゆる情報であふれているので、その中からベストな情報を集めることは大変です。情報の取捨選択が難しくなってきていますが、あやしい情報に惑わされず、信頼度の高い情報をもとに楽しく子育てをしてほしいなと思います。子育て中のお母さんには、頑張りすぎるお母さんが多い印象です。でも、だいたいで大丈夫です。失敗することがあって当たり前なので、もっと肩の荷をおろして楽しんでほしいなと思います。

お話・写真提供/宋美玄先生 取材・文/安田ナナ、たまひよONLINE編集部

宋先生自信の子育ての悩みから、産婦人科医として現在の日本の医療の問題まで、幅広く話しを聞くことができました。信頼のおける医師の存在は私たちにとって心強いと感じました。宋先生は、女性のための新しい医療メディアのためのクラウドファンディングを実施中です。

宋美玄先生(そん・みひょん)

PROFILE
産婦人科医。丸の内の森レディースクリニック院長。1976年生まれ。兵庫県出身。
2001年に医師免許を取得し、周産期医療、女性医療に従事するかたわら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信を行う。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的とし活動中。

●記事の内容は2025年3月の情報で、現在と異なる場合があります。
●2025年3月14日、記事の一部を修正しました。

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