夏の屋外やけどに注意!日陰で遊んでいてもやけどすることがある⁈注意点とホームケア【皮膚科医】
2025年の夏も、猛暑の日々です。ギラギラと太陽が照りつける、公園のすべり台は70度、アスファルトは65度の熱に近くになることもあり、屋外でやけどをする子どももいます。
溝の口駅前皮膚科など3つの皮膚科の総院長を務め、1児の母でもある皮膚科専門医の玉城有紀先生に、この夏、注意したい屋外のやけどと、外でやけどをしたときのケアについて話を聞きました。
赤ちゃんが機械式駐車場の鉄板に座ってやけどの報告も
国民生活センターでは「夏のやけど 思いがけない場所に注意」というリーフレットの中で、次の3つの事例をあげています。
●日ざしですべり台が熱くなっていて、おしりをやけどした(1歳女児)
●屋外の機械式駐車場の鉄板の上に座ってしまい、やけどをした(0歳男児)
●真夏の炎天下に駐車してあった車のチャイルドシートの金具が熱くなっていて、やけどしそうになった(2歳男児)
――先生も夏に、屋外でやけどをした子どもを診察したことはありますか。
玉城先生(以下敬称略) 昨年ですが、2歳ぐらいの子どもが炎天下に止めていた車のバンパーに触り、手のひらをやけどして来院しました。
診察すると、手のひらの指が水ぶくれになっていました。バンパーは地面から近く、夏は40度を超えることも。
またJAFの報告では、真夏の晴天下(気温35度)で行ったテストによると、午後12時~4時間エアコンを切った状態で駐車しておいた黒い車で、サンシェード装着や窓開けなどの対策がないと、車内の平均温度は51度、ダッシュボードの最高温度は79度もの高温に達したそうです。
この子の場合は、やけどはⅡ度の状態で、ステロイド軟こうを処方して、2日後にもう一度、受診。水ぶくれが完治していなかったので、抗生剤の軟こうに変えました。この子は、合計3回受診しています。
――Ⅱ度のやけどとは、どの程度でしょうか。
玉城 やけどはⅠ~Ⅲ度まであり、Ⅰ度は、表皮のみの浅いやけどで赤みがあります。
Ⅱ度は、表皮・真皮のやけどで、水ぶくれができます。
Ⅲ度は、皮膚全層・皮下組織のやけどで、黒色や白色に変色します。
――子どもは、大人よりもやけどをするとひどくなりやすいのでしょうか。
玉城 子どもは皮膚が薄いので、やけどをすると大人よりも深いやけどになりやすいです。
また先ほど、車のバンパーに触ってやけどをした事例を紹介しましたが、子どもは好奇心旺盛なので、興味があるものにすぐに手を伸ばします。
大人のように「炎天下で熱くなっている」などの危険を予測できないため、やけどをするリスクは高いでしょう。
日陰で遊んでいても、低温やけどに注意
夏、直射日光が当たるアスファルトや公園の地面は65度近く、すべり台は70度近くになることもあります。
――公園などで遊ぶときは、日陰で遊べばやけどの心配はないのでしょうか。
玉城 日陰でも、たとえば地面にずっと座って遊んでいたりすると低温やけどの危険性はあります。低温やけどとは、体温より少し高い温度(44~50度ぐらい)のものが、皮膚に長時間触れることで起こります。
子どもは遊びに夢中になると、ずっと座ったまま遊び続けることがあります。気がついたら地面などに触れていた部位が赤くなっていることもあるので、「日陰だから大丈夫」とは思わないでください。「おふろに入ろうとしたら、赤くなっていることに気づいた」ということもあるようです。
――夏の屋外のやけどから、子どもを守るには、どうしたらいいのでしょうか。
玉城 熱中症の危険もあるので、暑い日は、外遊びは控えて、冷房が効いた涼しい場所で室内遊びをさせるのが安心だと思います。
また砂場、すべり台、ブランコの持ち手、金属類など、やけどの危険性があるものは、ママ・パパがまずは触って熱くないか確かめるようにしましょう。
直射日光が照りつけるアスファルトや鉄板の上などで転んだ拍子にやけどをすることもあるので、子どもが転びやすい時期はとくに注意が必要です。
転んでマンホールに手や足をついてやけどをしたという子どもも診ています。
屋外でやけどをしたら、患部を冷やす物を購入
やけどをしたら、患部を冷やすことが第一です。
――子どもがやけどをしたときの対処法を教えてください。
玉城 まずは流水で20分以上、患部を冷やしてください。保冷剤を薄手のタオルやハンカチで巻いて冷やしても構いません。
屋外で保冷剤がないときは、コンビニやドラッグストアで冷凍のペットボトル飲料や冷却パックなどを購入して代用しましょう。受診の目安は、次のとおりです。
【診察時間内に受診】
●やけどの範囲が小さくて、赤くなっている。小さい水ぶくれができた。
【診察時間外でもすぐ受診】
●やけどした部位が、白や黒などに変色している。
●やけどの範囲が大きい。
●水ぶくれが大きい。
●頭、顔(口、鼻、目)、外陰部、関節をやけどした。
やけどの範囲が大きいと、血管から体液が失われて脱水症になることもあります。そのため子どもの大きなやけどは、とくに注意が必要です。診察時間外でも、すぐに受診してください。
――屋外で足の裏をやけどした場合は、歩かせないほうがいいのでしょうか。
玉城 足の裏をやけどして赤くなったり、水ぶくれができたときは、子どもも痛がって歩かないでしょう。そのため抱っこしたり、ベビーカーや自転車に乗せたりして受診しましょう。
――やけどのホームケアの注意点を教えてください。
玉城 やけどをしたとき、患部に薬を塗ってガーゼで覆うママ・パパもいますが、ジュクジュクするとガーゼがくっついてはがれにくくなります。
傷につきにくい、やけど専用の保護パッドがあるので、ガーゼの代わりにそれを使うといいでしょう。
もしガーゼがはがせないときは、シャワーでぬるま湯をかけながら、ゆっくり優しくガーゼをはがしてください。無理してはがすとやけどの傷口が悪化してしまいます。
お話・監修/玉城有紀先生 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
東京消防庁の発表では、同管内で過去5年間(令和元年~令和5年)、やけどにより救急搬送された0~5歳の子どもは1893人にのぼります。最も多いのは1歳で約42%(801人)、次は0歳で約26%(491人)です。
玉城先生は「子どものやけどは、冬に多いイメージをもつママ・パパもいるかもしれませんが、夏でもやけどには注意が必要です。室内では炊飯器の蒸気によるやけどや電気ポットを倒してしまいやけどをする子もいます。屋外・室内問わずに、事故が起きないように対策をとってください」と話します。
●記事の内容は2025年7月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。