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その「夢中」、逆効果かも?子どもの才能を伸ばす「いい夢中」と「悪い夢中」の違い【脳科学者】

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●写真はイメージです 写真提供/ピクスタ

子育てをする中で「子どもの好きなことをさせてあげたい」「夢中になれることを見つけてほしい」と考える人は多いでしょう。一方で、子どもがゲームや動画に夢中になってしまうことはちょっと心配・・・。脳科学者の瀧靖之先生は「夢中になることは、子どもの才能を開花させる秘けつ」だと言います。瀧先生に子どもの力を伸ばす「夢中」について聞きました。

「いい夢中」と「悪い夢中」とは?

『夢中になれる子の脳』より

――「病院の待ち時間や電車内で見せたタブレットをきっかけに、子どもがYouTubeやゲームに夢中になってしまった」という声をよく聞きます。ネットやゲーム依存が心配な場合、どのように対応すればよいでしょうか。

瀧先生(以下敬称略) 好きなことに夢中になるときは、その物事に対する強い興味関心がある状態です。自分の内側からわいてくる「おもしろい」「楽しい!」といった内発的動機づけによってものごとに興味関心を持つとき、脳では「ドーパミン」という物質が分泌され、ワクワク感や快感が生まれます。ドーパミンはやる気を引き出し、目標に向かって行動するために必要な脳内物質で、「報酬系(※1)」と呼ばれます。
ドーパミンが脳に流れると、とても気持ちがよくなり、「もっとやりたい」という気持ちが生まれると言われています。それ以外にも、集中力に関与して学習の効率を高めるなどの機能もあると考えられています。

子どもが「楽しい!」と自発的に行動して夢中になることを「いい夢中」とすると、オンラインゲームや動画アプリなどにはまりすぎて生活に支障が出るほどに夢中になってしまう状態は「悪い夢中」。ご相談のようなケースでは、「悪い夢中」になってしまうことを心配されているようです。
1つ注意したいのは、「いい夢中」でも「悪い夢中」でも、ドーパミンは同じように働くという点です。

――いい夢中にも悪い夢中にも、どちらもドーパミンが関与しているのですね。

瀧 そうです。私たちの研究チームは依存の研究もしていますが、依存的な行動も同じくドーパミンが関与していると言われています。依存とは「やめたいと思っているのにやめられない状態」です。生活や人間関係、健康、お金などに悪影響を及ぼしていても続けてしまう状態。たとえばゲームに夢中になっても、ある程度でやめられる場合は依存ではありません。おふろも入れず移動時や食事の際も手放せない、夜通しやり続けたり学校を休むほどになる、と、それは依存です。

ただ、ゲームであっても物語や構造に興味を持てば、プログラミングや創造的な活動につながる可能性もあります。したがって「ゲーム=悪」と単純に決めつけるものではありません。「いい夢中」「悪い夢中」は見極めが難しいところですが、生活や人間関係に悪影響を与えるものにはまってしまうのは悪い夢中の状態です。YouTubeを見すぎて睡眠不足になる、ゲームのことを注意すると激しく怒るなど、日常生活を送るのに支障が出てしまうようなら依存に近い状態でしょう。

※1:報酬系/「うれしい」「楽しい」と感じることで、その行動をくり返したくなる脳のしくみのこと。 報酬系にかかわる脳内物質はいくつかあり、代表的なのが「ドーパミン」 

自分で決めてもらうこと、子どもの話を聞くこと

『夢中になれる子の脳』より

――幼稚園や小学校低学年くらいからゲームや動画アプリにはまってしまうような場合、どのようにルールを決めてつき合うのがいいでしょうか。

瀧 これは正直なところ、明確な答えはありません。管理するのはなかなか簡単ではありませんよね。

大事なのは「やってはダメ」と強制しないことです。「何かを考えないようにしようとすればするほど、かえってそのことが頭から離れなくなる」現象が起こり、禁止されるほどやりたくなってしまう傾向があるんです。
そのような現象を心理学では「シロクマ効果(※2)」と言います。

ですから、1つの方法としては、選択肢を与えて自己決定権を持たせることが考えられます。たとえば「ゲームをしてから勉強するのか、勉強してからゲームをするのか、どっちがいい?」と二択で子どもに選んでもらう。こうすることで、子どもは自分で選んだという感覚を持ちやすくなり、自分で決めたことを守れれば自己効力感(※3)も高まります。

――依存まではなくとも、何度声をかけてもやめられない場合はどうでしょうか。

瀧 時間を決めても守れないことはよくありますよね。私自身も子育ての中ではうまくいかないことも多く、つい子どもに怒ってしまうこともあります。いろいろと試行錯誤する中で実感しているのは、子どもは「夢中になっていることについて話したい」という欲求を持っているということです。

「そろそろやめる時間だな」と思ったときに、「時間だよ!」ではなく、まず「今どこまで進んでいるの?」と聞いてみるんです。するとゲームの内容について楽しそうに説明してくれます。そのように会話を通じてかかわると、好きなことを話せた満足感が得られ、比較的スムーズにやめられることもあります。

また、親自身がゲームを理解するのもいいと思います。子どもが好きなゲームを一緒にやってみると、なぜハマるのかがよくわかりますし、コミュニケーションも増えます。

※2:シロクマ効果/「シロクマのことは考えないで」と指示された実験で、被験者は逆にシロクマを頻繁に思い浮かべてしまったことから、思考を抑えようとすると、結果としてその思考が逆に強まりやすくなる現象のこと。皮肉過程理論とも言う。
※3:自己効力感/「自分はできる」と思える気持ちで、子どもの挑戦する力や自信につながる大切な感覚のこと。

「夢中になる」経験は一生もののスキルにつながる

『夢中になれる子の脳』より

――では、子どもが「いい夢中」を見つけるために親子でできる具体的な取り組みについて教えてください。

瀧 子どもはまだ経験が少なく、自分の好きなことを簡単に見つけることはできません。ですから、まずは親が好きなことを一緒にやってみることをおすすめします。それは、人は乳幼児期から模倣によって能力を獲得するからです。脳のミラーニューロンという神経細胞は、言葉や食事のしかたなどの行動だけでなく感情も模倣する働きがあります。周囲の人が楽しそうにしていると、自分も楽しいと感じるようになるのです。

親と一緒に楽しみながら遊びや運動を経験することで、子どもは「夢中になる方法」を学ぶことができます。

――親自身にとくに趣味がない場合はどうすればいいでしょうか。

瀧 無趣味だと感じている人は少なくないようですが、実際には「忙しすぎて好きなことを忘れている」だけの場合が多いと思います。子どもの「いい夢中」を見つけてあげたい場合、親子で一緒に考えながら、「そういえば昔はこれが好きだったな」と思い出してみるのもいいでしょう。

昔好きだった運動や山歩きなどを再開してみるのも1つですし、一緒に料理をしたり旅行に出かけたりするところから始めても十分です。特別なことをするのではなく、「一緒に楽しくやること」が大切です。

――親がうまくできなかったり、失敗したりしてもいいということでしょうか?

瀧 はい、親は完璧である必要はありません。なんでも答えられる必要はありませんし、上手にできる必要もありません。むしろ、わからないことは一緒に調べたり、試行錯誤したりする姿勢が大切です。できなくても「失敗しちゃったね」と笑い合える関係のほうが、よほど価値があります。

子どもが何かに熱中する経験は、成長とともにスポーツ、芸術、勉強、さらには仕事やビジネスにも応用できる一生もののスキルになります。調べて、計画を練り、行動する、というように、試行錯誤を繰り返しながら成長する方法を獲得できるからです。

親は、子どもが「いい夢中」を見つけられるよう、できる範囲で協力しながら、できるだけ一緒にやってみるといいと思います。

――瀧先生が2026年4月に出版した本『夢中になれる子の脳』には「8歳までの土台作りが大事」とありますが、この時期の脳の発達について教えてください。

瀧 生まれてすぐからは、見る・聞く・ぬくもりを感じるなどの原始的な感覚領域が発達すると言われています。そして2歳ごろまでに母国語の獲得に関わる領域が発達します。2歳から4歳ごろになると、自分と他者の区別ができるようになるとともに、気持ちや考え方の違いも理解し始めます。知的好奇心が伸びはじめ、いろんなことを知りたがる、いわゆる「なぜなぜ期」が訪れます。

3歳から5歳くらいは運動領域が発達し、さらにその後は前頭前野と呼ばれる脳の領域が発達していきます。この前頭前野は、考える、判断する、新しいものを創造する、コミュニケーションをとるといった高次認知機能を担う重要な部分です。これらの機能は小学校から中学校にかけて大きく伸びていきます。

小学校低学年のころまでは、このように知的好奇心や運動、記憶や判断など、脳のさまざまな能力がダイナミックに発達する時期です。

その一方で、学年が上がるにつれて塾やゲーム、インターネットなどの影響も強くなります。そういった社会的な環境も含めて考えると、8歳くらいまでに好奇心を育み、好きなことに夢中になって取り組む経験を重ねることで、脳の土台をしっかりと作っておくことは非常に重要だと思います。

お話・監修/瀧靖之先生 取材・文/早川奈緒子、編集・構成/仲村教子(entente)、たまひよONLINE編集部

子どもが「いい夢中」を見つけることは、才能を伸ばす鍵。一方で依存的になると生活に影響するため見極めが重要です。親も一緒に楽しみながら「いい夢中」を育てていきましょう。

●記事の内容は2026年7月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

『夢中になれる子の脳』

東北大学教授の脳科学者・瀧靖之先生が、最新の研究知見と自身の子育て経験をもとに、「夢中になれる子」に育つためのヒントをQ&A方式で実践的に解説。日常で実践できるかかわり方や声かけも紹介し、子どもの可能性を引き出すヒントが詰まった1冊。瀧靖之著/1650円(サンクチュアリ出版)

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