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AI時代、「ナンバーワン」より「オンリーワン」 子どもの才能を伸ばす親のかかわり方【脳科学者】

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●写真はイメージです 写真提供/ピクスタ

人工知能(AI)が当たり前になる時代、子どもの「強み」はどう育てればいいのでしょうか。実はカギになるのは、「夢中になれるかどうか」です。1児の父でもある脳科学者・瀧靖之先生に、好奇心の引き出し方やデジタルとのつき合い方を聞きました。

AI時代に必要なのは「ナンバーワン」より「オンリーワン」

『夢中になれる子の脳』より

――AIがさらに普及する時代を生きていく子どもたち。そのために、「子どもに何か得意なものを見つけてあげて、AI時代に強みとなる個性、生かせるような個性を身につけさせたい」と考える親は多いようです。子どもの個性を育てるにはどうすればいいでしょうか。

瀧先生(以下敬称略) ここ十数年で、情報の質と量は大きく変わっています。さまざまな情報にだれもがアクセスできるようになりました。勉強やスポーツに取り組む中でも、ネットを通じて、自分より優れた人を簡単に見つけられてしまうと、「ナンバーワン」を目指すのはなかなか難しくなってきます。そこで重要になるのが「オンリーワン」です。

だれもがオンリーワンの存在ではあるのですが、子どもは自分ではそのことに気づきません。ですから、ぜひ親が子どものすばらしいところを見つけて伝えてあげましょう。足が速い、計算が得意、ピアノが上手、友だちがたくさんいる、思いやりがある・・・など、子どもの個性を3つくらい組み合わせると、実は周囲にその子だけの「オンリーワン」の個性が見えてきます。

――子どもの強みを伝えてあげることが大事なんですね。

瀧 言葉にして伝えると、その個性はどんどん伸びていくと思います。自分の強みを無意識のうちに考えながら行動するようになるのです。

脳には、経験によって変化していく「可塑性(かそせい)」という性質があります。また、1つの能力を身につけるとほかの力にも広がる「汎化(はんか)」という特性もあります。つまり、何かに一生懸命取り組むと、その能力が獲得できて、かつそれ以外のこともある程度できるようになるということなんです。

これらの脳の特性から見ても、自分らしい強みを伸ばしながら「オンリーワン」を意識してさまざまな能力を獲得することで、脳の活性が高まっていくのです。「オンリーワン」「自分らしさ」を見つけていくと、子ども自身の自己肯定感も高まっていきます。

子どもが夢中になれるものはどう見つける?

『夢中になれる子の脳』より

――親が子どもに働きかけたとしても、当の本人があまりいろんなことに興味を持たない場合、どうやって好きなことや得意なことを見つけるといいでしょうか。

瀧 まずは親の好きなことを、親子で一緒にやってみるといいと思います。子どもは、親が楽しそうにしていることに興味を持つものです。

ただ、そのとき気をつけたいのが、ティーチングよりもコーチングを心がけること。親が得意なことを子どもと一緒にやるとき、上手な親の姿を模倣して上達する、という面もありますが、親が熱が入りすぎて厳しく教えてしまうと子どもがイヤになってしまうケースが多いです。一緒に伴走する気持ちで行うこと、親子で楽しくやることは、とても大事です。

ひょっとすると、親があまり得意じゃないことに、親子でチャレンジしてみると、案外いいこともあるかもしれません。一緒に始めても子どものほうが上達が早いですから、「お父さん、なんでできないの?」なんて笑い合いながら、子どもの自己肯定感を伸ばすのもいいかもしれませんね。あとは、ポジティブな声かけも意識してほしいです。

――ポジティブな声かけ、というとどういうことですか?

瀧 何か習いごとを始めたとして、やめたくなるときもあると思います。そのときには、できるだけ挫折体験にならないようにしてあげたほうがいいでしょう。「できなかったからやめる」のではなく、「別のものに興味があるからやめる」「ここまでできたからやめる」というように、前向きなイメージで切り替えることが大切です。

挫折体験になってしまうと「ダメだった」「失敗した」と失敗がこわくなってしまいますが、そうではなく、次の成功への通過点と考えられるようなマインドセットをしてあげるといいと思います。

スマホやタブレット、AI、子どもはいつから使っていい?

『夢中になれる子の脳』より

――近年、幼いうちからスマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスを使う機会が増えましたが、このことによるデメリットやメリットはありますか?

瀧 現代において、デジタルデバイスは生活上不可欠なものとなり、今はスマホやタブレットが欠かせない時代です。急に使い始めると混乱や依存につながるリスクもあるため、小学校中学年ごろから少しずつデバイスに触れ、「デジタルリテラシー」を身につけることも大切です。

デジタルデバイスやAIを活用することは、子どもの知的好奇心を刺激する側面もあります。AIで簡単に答えを得ることも1つの手段ではありますが、それだけでは好奇心の一部しか満たされないという認識を持っていることが大切です。
「簡単に答えが得られること」と「知的好奇心」はイコールではないんです。知的好奇心には「努力してでも知りたい」という要素があります。本や資料を調べたり、時間と手間をかけて理解しようとするプロセスこそが、知的好奇心を高めるために重要だからです。

――TikTokやInstagramなどでは、自分で調べなくてもさまざまな情報を受け取ることができてしまいます。

瀧 そうですね、自分から探そうとしなくても答えを簡単に教えてもらえますね。私もショート動画などは見ますが、楽器の演奏のしかたや、スポーツの体の使い方、数学の問題の解き方など、さまざまな分野で非常にわかりやすい動画が配信されていますよね。自分自身の能力をさらに伸ばしたいときには、そのような動画は役立つと思います。
うまく活用すれば便利ですが、ショート動画などにはまって見続けてしまうこともありますので、注意が必要でしょう。

――親自身も調べものをするときに、すぐAIに聞く時代になってきています。

瀧 時間短縮という点では非常に有効ですし、自分で調べるより詳細な説明も得られる点で便利ですよね。概要を知るには非常にいいツールですが、必ずファクトチェックをする必要があると思います。AIは誤った情報や存在しない文献を提示することもありますから、細部を検討するには自分で確認することが重要です。

子どもと一緒にAIを使って調べるときには、情報の正しさに気をつけることが大切です。また、AIは質問のしかたによって得られる情報の質が変わります。子どもと一緒に活用するときには、どのように論理的に問いを組み立てるかを考えながら質問してみると、学習面でも役立てられるようになるでしょう。「こんなふうに聞いてみたらどうなるかな?」と発想や視点、角度を変えて、親子で試してみると、さらに好奇心を高められるかもしれません。

「きれい」「すごい」と感じる力が才能を伸ばす

『夢中になれる子の脳』より

――瀧先生が2026年4月に出版した本『夢中になれる子の脳』の中で、「美的感覚は好奇心の源ともいえる重要な要素」だとありました。これは、どのようなことか教えてください。

瀧 植物や動物、鉄道、車、人など、美しいものを見ると「わあ!」と感動したり、あこがれるような気持ちになりますよね。実は、美しいと思うものを見ると、脳の報酬系(※)が活性化されることが報告されています。何かを見て「美しい」と感じることは、楽しい、わくわくする、心地いい、という感覚に近いです。

美しいものを見て、それを好きになると、その物事に対して記憶力が高まり、もっと知りたいと思った経験がある人は少なくないのではないでしょうか。

たとえば私はキアゲハという蝶の模様の美しさに心を奪われ、そこから昆虫が好きになり、生態系など自然全般に興味を持ち、外国の昆虫への興味から地理への興味も広がりました。美しいものに対して興味関心がわくと、もっと知りたくなり、さらに興味が広がって、結局学習にもつながるのです。

――何を美しいと思うかは子どもによって違いますか?

瀧 そうですね、たとえば絵画ではクロード・モネの『睡蓮』や、音楽ではショパンのバラード第1番など、多くの人が美しいと感じるアートなどの共通の美という概念はあるだろうとは言われています。

一方で、何を美しいと思うかはその人によって違いもあると思います。単純接触効果といって、人は見たり聞いたり会ったりする頻度が高いものに対して興味・関心がわきやすいものです。生まれてわずか数年間でも、子どもによって見たり聞いたりしているものは全然違いますから、美しいと感じるものも違うと思います。
その子が美しいと感じるものに出会うために、親子でいろんな体験をしてみるといいでしょう。

※報酬系/「うれしい」「楽しい」と感じることで、その行動をくり返したくなる脳のしくみのこと。 報酬系にかかわる脳内物質はいくつかあり、代表的なのが「ドーパミン」 

お話・監修/瀧靖之先生 取材・文/早川奈緒子、編集・構成/仲村教子(entente)、たまひよONLINE編集部

AI時代だからこそ「オンリーワン」の個性を伸ばすことが大切。「何ができるか」より「何に夢中になれるか」、子どもの「好き」を否定せず、広げていくことが、その子らしい強みにつながります。興味が見つからない子は、親と一緒にさまざまな体験を重ねてみましょう。 

●記事の内容は2026年7月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

『夢中になれる子の脳』

東北大学教授の脳科学者・瀧靖之先生が、最新の研究知見と自身の子育て経験をもとに、「夢中になれる子」に育つためのヒントをQ&A方式で実践的に解説。日常で実践できるかかわり方や声かけも紹介し、子どもの可能性を引き出すヒントが詰まった1冊。瀧靖之著/1650円(サンクチュアリ出版)

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