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アスペルガー症候群の赤ちゃんの行動特性(症状)と診断方法、サポートの仕方

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脳の機能が特異な働きをすることで起きる発達障害。特徴の一つは、その場にふさわしい社会的行動がとれないことです。特に、自閉症を中心とした自閉症スペクトラム(ASD)に含まれるアスペルガー症候群は、ことばの意味を表面的にしかとらえられなかったり、自分の言いたいことだけを一方的に、相手の気持ちを考えずに話したりすることがあるため、周囲とのコミュニケーションに困難さを抱えてしまう障害です。アスペルガー症候群はどのような行動特性なのか、乳幼児期にどんなサインが現れるのかを見ていきましょう。
※近年、アメリカの精神医学会の診断基準が改訂され、「自閉症」「アスペルガー症候群」を診断名として分類せず、統一して「自閉症スペクトラム(ASD)」と診断するようになっていますが、ここでは従来の診断名である「自閉症」「アスペルガー症候群」をそのまま使用しています。

アスペルガー症候群の特徴は? 赤ちゃんのときにどんなサインが?

アスペルガー症候群は、自閉症の仲間と考えるとよいでしょう。知的な遅れがないため、知的障害を伴わない自閉症である高機能自閉症とよく似ていますが、アスペルガー症候群は「ことばの発達」の面でも遅れがないという面で、高機能自閉症と異なります。アスペルガー症候群の場合は、むしろ発達障害がない子どもよりもことばを覚えるのが早く、幼少時から大人が使うような難しい語句、表現を知っていたり、話し好きだったりするため、一見、人とのコミュニケーションを円滑に進められているようにも見えます。
 しかし、ことばを字義通りにしか受け取ることができず、婉曲な表現や皮肉、お世辞も意図をくみ取ることができません。相手の気持ちをくんで、遠回しに話したりすることも苦手ですので、率直な物言いで相手を不快にさせたりすることもあります。また、顔の表情から喜怒哀楽を読み取ることが苦手なため、他人との意思疎通や関係構築の面で大きな困難を抱えることがあります。このほか、自閉症と似た行動特性として、特定のものや場所、行為への強いこだわりを持つことがあります。

アスペルガー症候群の赤ちゃんはどんなサインを出す?

アスペルガー症候群は自閉症の仲間であり、アスペルガー症候群の赤ちゃんも、自閉症と同じような行動特性を乳児期から示すことがあります。

・視線が合っても反応しない
・抱っこしたり、あやしても喜んだり、笑ったりしない
・パパやママ、身近な人がそばに来てもうれしそうにしない
・一人でもさびしがらない
・ミルクやおむつ替えなどを泣いて要求することが少ない
・ママをハイハイして後追いすることがない

 アスペルガー症候群の赤ちゃんも、自閉症の赤ちゃんと同様に、一人でいることが好きで、親にとっては手のかからない赤ちゃんであることが多いようです。このように、アスペルガー症候群と高機能自閉症は、ことばの遅れの有無を除けばとてもよく似た障害です。

アスペルガー症候群の子どもの特徴 成長するにつれて現れる特性

ほかの発達障害と同様に、アスペルガー症候群の子どもにも成長と共に顕著になってくる行動特性があります。ただし、すべての子どもに同じような行動特性が現れるというわけではなく、個人によって特性の現れ方は異なります。

アスペルガー症候群の子どもの特徴の例

・顔の表情を読むことが苦手
アスペルガー症候群の子どもは、自閉症の子どもと同じように、人と視線を合わせようとしない傾向があります。顔の表情からどんな気持ちかを読み取ることも苦手です。

・話し方が大人びている
大人が話すような難しい表現、語句を使ったり、丁寧な言い回しをしたりする子がいます。言葉に感情を込めることができないため、抑揚のない淡々とした口調の子どももいます。また、声の調子から感情を読み取ることも苦手です。

・比喩や皮肉、お世辞がわからない
「まっすぐ家に帰りなさい」「(夜更かしする子どもに)何時だと思っているの?」といった言い回しをされると、字義通りにしか理解できません。婉曲的な表現の真意をくみ取ることが苦手です。

・道順、手順、物の位置などへの強いこだわり
アスペルガー症候群の子どもも、自閉症の子どもと同様、変化に対応するのが苦手です。目的地への道順がいつもとは違ったり、電車やバスで座る席などが変わったりすると不安になってしまい、パニックを起こすことがあります。保育園や幼稚園では、1日のスケジュール(時間割)が変わったり、遠足などの特別な行事があったりしたときに、それに合わせた行動をするのが苦手です。

・感覚が過敏(あるいは感覚が鈍麻)
触覚、視覚、聴覚、温度感覚などの感覚器官の働きに独特の特徴があります。例えば、救急車のサイレン、掃除機の音、犬の鳴き声など普通の人が平気な音に強い恐怖を感じたり、人に触られただけで痛みを感じたりすることがあります。気に入った肌触りの服しか着ない子ども、粘土の感触が気持ち悪くて触れない子どももいます。

・数字や漢字、記号の暗記が得意
自閉症スペクトラムに特有の特定分野へのこだわりを興味のある分野に向け、漢字や数字、記号などに強い関心を示す子どももいます。2、3歳くらいから、大人が読む本を読んだり、数字や記号の羅列を瞬時に暗記したりすることがあります。中でも、並外れた能力(漢和辞典のすべての漢字が書ける、高い計算能力を持っている、など)を発揮する特性をサヴァン症候群といいます。(サヴァン症候群は、すべてのアスペルガー症候群、自閉症の人に見られるものではありません)

ASD(自閉症スペクトラム)とは?

高機能自閉症やアスペルガー症候群は、実際には知的な発達の状況や行動特性の現れ方は多様で、さまざまなタイプの人がいます。そのためどこからがアスペルガー症候群で、どこからが高機能自閉症かといった分類にこだわるよりも、多様な自閉性障害を包括的にとらえて、ASD(自閉症スペクトラム)という枠組みで考える見方が広まってきています。「スペクトラム」は連続した状態を表す言葉で、ASD(自閉症スペクトラム)は自閉症、アスペルガー症候群を包括する概念です。自閉症、アスペルガー症候群の子どももそれぞれに日々発達し、成長していますから、診断名にしばられることなく、その子のその時々の状況と困難さに向き合い、支援の方法を考えていくことが重要になります。

アスペルガー症候群の原因は? 赤ちゃんへの接し方、育て方との関係は?

 アスペルガー症候群は自閉症と同様、脳の機能上の障害です。脳の機能の特異性が生じる理由ははっきりとはわかっていませんが、脳そのものに外傷や病変があるから生まれるものではなく、複数の遺伝子のかかわりが原因になっていると考えられています。生まれつきの脳の機能の偏りが原因で特有の行動特性が現れるわけですから、アスペルガー症候群は、親の育て方や接し方、生まれ育った環境などが原因で起きるものではありません。乳幼児期のスキンシップ、しつけの仕方などと、アスペルガー症候群特有の行動特性が生じる原因とは関係はありません。
 なお、アスペルガー症候群は、親や親戚にアスペルガー症候群の人がいると、子どももアスペルガー症候群になりやすい(家族性がある)ことがわかっています。このことからも、脳機能にかかわる複数の遺伝子の変異がアスペルガー症候群の原因と考えられます。

アスペルガー症候群の診断方法 赤ちゃんのうちに診断できる?

 アスペルガー症候群は、ことばの遅れがないこと以外は、高機能自閉症ととてもよく似た行動特性の障害です。周囲の人と相互にかかわろうとする意欲、能力が欠けていたり、表情や身振りで感情を伝えることが少なかったりなど、自閉症と同じ行動特性は0歳児のころから現れています。そのため、保護者自身が周囲の子どもと比べて「うちの子はほかの子と違う」と感じることもありますし、また、定期健診などで小児科医が自閉的傾向に気がつくこともあります。
 ただ、赤ちゃんから幼児期の成長のしかた、スピードは子ども一人ひとりまちまちです。一時的に自閉傾向のある行動が見られても、その後消えてしまったり、発達が追いついたりすることがあるため、実際にアスペルガー症候群や自閉症の診断が行われるのは2歳時以降になってからが多いのです。
 しかし、すぐに診断はつかなくても、自閉傾向があり、自閉症やアスペルガー症候群のリスクが高いと判断されることはあります。その場合は、定期的に医療機関を受診し、経過観察を行うことが望ましいでしょう。赤ちゃんの状況を丁寧に観察していくことができ、適切なタイミングでその子に合った療育(治療教育)につなげることができるからです。

アスペルガー症候群の治療、アスペルガー症候群の子への対応方法

 アスペルガー症候群や自閉症の原因となっている脳機能の特異性を薬や手術で治すことはできません。日常生活で本人が困り感を感じるようになったときには、周囲の人がアスペルガー症候群の特性に合わせた接し方(例:話すときには婉曲的な表現を使わずに、短いことばでストレートに伝える)をしたり、本人の社会的技能を高めるトレーニングを行ったりしていきます。子どもが生活上の困難さを減らせるように、場面に応じた適切な行動がとれるように教育的な支援をすることを「療育」(治療教育)といいます。
 ことばの遅れがないアスペルガー症候群の子どもは、周囲から「発達障害があるのではないか」と気づかれにくい傾向にあります。その一方で、周囲の人とうまくコミュニケーションがとれないことで本人が挫折感や無力感を感じてしまい、社会適応が難しくなることがあります。どんなときに、どんなことばを使うと相手を不快にさせるかといったことを理解し、少しずつ社会生活を送るためのソーシャルスキルを獲得していくことで本人の困り感が減っていきます。

アスペルガー症候群の療育の方針

療育は、指導や訓練を積み重ねることで、子どもの行動、考えを適切な方向へと変えていこうとする治療方法です。根気強く続けていくことで、社会への適応力が身に付き、子どもの困り感が減っていきます。療育の柱は次の三つです。

・療育の柱/行動療法
例)かんしゃくやパニックなど、その場において好ましくない行動に対しては静かに見守り、問題行動が収まったとき、好ましい行動がとれたときにはほめたり、ごほうびを与えたりする。

・療育の柱/構造化
例)1日のスケジュール(時間割)を表にまとめるなど、今何をやればよいか、なにをやらなくてよいかを明らかにしてあげる。

・療育の柱/感覚統合訓練など
例)コマ回しやあやとり、折り紙などで手指の細かな動きと目や手の協調運動を促したり、三輪車やボール遊びで身体の複数の部分を同時に使う動きを行ったりすることで、感覚統合を養う。

 発達障害の療育は、早期に行うほどが有効で、これがアスペルガー症候群の子どもについても言えることです。ただし、その療育は、本人の行動特性に合ったサポートであることが前提です。療育の内容は一人ひとり異なりますから、医療機関の診断、療育機関のサポートを受けながらつくっていくことが重要です。
 療育は専門機関においてのみ行うものではなく、家庭の中で子どもに接する際にも取り入れていくことができます。また、学校や幼稚園、保育園の先生と連携し、学校や園でも子どもの行動特性を理解した接し方をすることができれば、日々の生活の中での子どもの困り感をさらに減らしていくことができます。
 アスペルガー症候群、自閉症の子どもを持つ保護者が、子育ての悩みや不安を家族だけで抱え込んでしまうことがないよう、同じ事情を抱えたほかの保護者とつながり、情報交換することも重要です。親の会、サポートグループなどで保護者が交流するだけでなく、子どもが自立して社会生活を営めるよう、ソーシャルスキルを養うトレーニングを行っているところもあります。保護者がさまざまな人たちと連携しながら、保護者自身が前向きな気持ちで子どもに接することは、子どもにとっても大きな支援となります。

(取材・文/たまひよONLINE編集部) 

監修/榊原洋一先生
東京大学医学部附属病院小児科医長、お茶の水女子大学副学長などを務める。「子ども学」の研究のため、ベネッセコーポレーションの支援のもと設立されたCRN(チャイルド・リサーチ・ネット)所長。発達障害など子どもの心と体の研究の第一人者。お茶の水女子大学名誉教授。

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