ベテラン保育士に聞く!自分で“考える力”を伸ばすかかわり方
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幼稚園や認定こども園の教育の中でも、幼児期の終わりまでに育ってほしい力の一つに“自分で考えたり、表現したりする力”があげられています。しかし”自分で考える力“というのは、どのように伸ばせばいいのでしょうか。0歳から親ができることを、保育士経験が豊かな和洋女子大学人文学部こども発達学科准教授の伊瀬玲奈先生に教えてもらいました。
伊瀬玲奈先生が教える!家庭で考える力を育むポイント
“自分で考える力”を育むには、ママ・パパの適切なかかわり方が大切です。考える力がつくと自分のことだけではなく、自然とお友だちや周囲の人の気持ちを考えるようにもなります。これはコミュニケーション能力を育むためには欠かせない要素です。伊瀬先生に聞いた子どもが0歳のときから始められる、年齢別のママ・パパのかかわり方などを紹介します。
Point1 子どもの思いに気づき、受け入れる親子関係を築こう!
どんなに無口な子や恥ずかしがり屋な子でも、自分なりの考えはきちんとあります。もちろん、言葉が未発達な赤ちゃんでも自分の思いはあります。ママやパパに訴えるときに「あーあー」と声を出して呼んだり、指で差したりなど、声やしぐさ、表情で自分の思いを表現します。まずは子どもの年齢にかかわらず様子をよく見て、伝えたいことを理解してあげることが第一です。子どもの伝えたいことや考えがわかったら、ありのままを受け入れてあげてください。そうすることでしだいに「自分の思いや考えを伝えていいんだ!」と思い、素直に表現するようになります。逆に子どもの考えや意見に聞く耳を持たなかったり、全否定をしたりするようなかかわり方を続けていると、自分で考える力は育ちません。
Point2 年齢別のかかわり方を心得よう
0歳代
親子関係を深めて、自分の考えをママ・パパに伝えられるベースを作る時期です。赤ちゃんの表情をよく見て、目を合わせて「○○ちゃん」と名前を呼びかけ「おなかすいたの?」など、子どもの気持ちを言葉にしましょう。そうしたかかわり方を繰り返すことで、ママ・パパへの信頼感が深まります。
1~2歳代
考える力を豊かにするために「今日は、風が気持ちいいね」「お友だちの△△ちゃん、けがして痛かったね。大丈夫かな?」など、感情を伝える言葉を意識して、子どもに話しかけましょう。
また手を洗うとき「なんで手を洗うのかな?」と質問して「砂場で遊んで、手が汚れたからだよね」などと子どもとやりとりしながら、なぜだろうと考える習慣を少しずつつけていきましょう。
3~4歳代
言葉が発達し、自分の考えを伝えられるようになりますが、乱暴な言葉づかいをするなど、時にはママ・パパが正しい考え方を示したほうがいいときも。そうした場合は、最後まで子どもの考えを聞いて「○○ちゃんは、そう思ったんだね。でもママは××って考えたよ」と伝えましょう。ポイントは子どもの考えを否定したり、しかったりせずに、ママ・パパの考え方を伝え、親子でどうしたらいいか話し合うことです。
考える力の芽が伸びない要因の一つに、ママ・パパの指示の出し過ぎがあります。「○○しなさい!」と指示を出して、子どもがそれに従って行動することが習慣になっていると、自分で考える力は育ちません。そのためママ・パパが指示を出し過ぎていないか、子どもの意見や気持ちを否定していないか、この機会にあらためて見直してみるといいかもしれませんね。(取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部)
監修/伊瀬玲奈先生
和洋女子大学 人文学部こども発達学科 准教授。元保育士・元幼稚園教諭。大学で未来の保育士や幼稚園教諭を指導。また、保育園などで多くの子どもや保育者と接しながら、遊びの中で子どもは何を学び、とらえているのかを研究されています。著書に『「あたりまえ」を見直したら保育はもっとよくなる!』(学研教育みらい)。