歯学博士が伝授!乳歯を守る3大要素☆フッ素・キシリトール・あと一つは?
乳歯をむし歯にさせないためには、どんなケアをすればいいの? そんなママやパパの悩みに応えるべく、予防歯科の第一人者である倉治ななえ先生の「はじめての歯みがきレッスン」が百貨店のタカシマヤ柏店で開催されました。タカシマヤ各店のベビーマタニティ売り場では、さまざまなイベントが行われていますが、歯磨きレッスンはなんと14年以上続いている大好評のセミナーです。乳歯ケアだけではなく、大人のデンタルケアにも踏み込んだ内容に、思わずメモをとる参加者も。気になる内容を紹介します。
歯が生える前から「仕上げ磨き」を始めることで、歯磨きが好きな子に!
「歯の生え変わりはとても単純で、乳歯の生えたところから永久歯が生えてきます。つまり美しい永久歯を育てるには、美しい乳歯列をつくることが大切です」と倉治先生。
乳歯のむし歯は、永久歯のむし歯や歯並びに影響することがあるため、乳歯のときから1日2回の仕上げ磨きを行うことを習慣にするといいそう。
「理想は、乳歯にママやパパの顔がうつるくらいピカピカに磨くこと。大理石のように、歯は磨くほどに輝きを帯びてくるんですよ」
スライドにつるんと光った乳歯の写真が映し出されると、参加したママやパパたちからは感嘆の声が! しっかり汚れを除くためには、仕上げ磨きにかける時間は2~4才で約3分間が理想だといいます。
「ただ、奥歯が生える前の1才前なら、1本1秒程度で構いません。それを、1才になったら1分、1才6カ月で1分30秒……のようにだんだん時間を延ばしていくと、子どもは自然に慣れていきます」
「歯ブラシ嫌いにさせないためには、歯が生える前の5カ月ごろから、仕上げ磨きの練習をするのがおすすめ。この時期なら、口の中を触られても嫌がることが少ないんですよ」
仕上げ磨き専用のやわらかいブラシを歯茎にあてて、やさしくマッサージをするように、こちょこちょと動かすのがコツだとか。
「歯磨きって気持ちいい!」と思ってもらえれば、赤ちゃんは自ら口を開けてくれるようになるそうです。
「仕上げ磨きが嫌いな子にも、毛先のやわらかい仕上げ磨き専用歯ブラシは有効です。実は歯ブラシが痛くて泣いていた、ということもよくありますから、悩んでいるママやパパは、ブラシの種類や力加減、磨き方を見直してみましょう」(倉治先生)
むし歯菌の感染を防ぐために、親もフッ素とキシリトールの活用を
歯を溶かす「酸」をつくる力の強いむし歯菌(ミュータンス菌)に感染しないことも、むし歯予防に有効です。
「子どもがむし歯菌に感染するのは、奥歯が生える1才7カ月~2才7カ月ごろ。世界的に、むし歯菌は子どもと接触時間の長い母親からうつる確率が高いことがわかっています」
そのため、両親がむし歯にならないことが第一だと倉治先生は話します。
「むし歯を治療することでむし歯菌は急激に減るので、まずは周囲の大人が歯をきれいにしましょう。スプーンや箸を使い回したり口移しで食べ物を食べさせたりすることは避け、さらに歯磨き剤は家族でフッ素が配合されているものを使います。日常的にキシリトールを口にすることもぜひ取り入れてみてくださいね」
フッ素には歯質を強化する役割があり、キシリトールにはむし歯菌を減少させる働きがあると倉治先生が説明すると、思わずスマホで「キシリトールガム」を検索するママも。
「キシリトール製品ならどれでもいいわけではなく、甘味成分の50%以上がキシリトールのものが効果的です。1才6カ月を過ぎた子どもには、子ども向けのキシリトールタブレットがあるので、おやつや仕上げ磨きのごほうびに与えてみてもいいですね」
意外と知らない!?フッ素の含有量でみる歯磨き剤の選び方・使い方
「むし歯予防のためには、大人も子どもも年齢に適したフッ素を日常的に使うこと」と倉治先生は話します。日本の場合、乳幼児用の歯磨きジェルなどに含まれているフッ素の濃度は100ppmのものがありますが、世界的な基準は500ppm。「心配する親も多いけれど、正しく使っている限り、怖がらなくても大丈夫」なのだそう。
「フッ素入りの歯磨き粉の使用量の目安は、2才までなら、その子の“切ったつめの大きさ”と覚えましょう。ごく少量でいいんです。大人の場合はフッ素の配合濃度が1000~1500ppmのも歯磨き剤で磨くのが歯質強化に効果的。ドラッグストアなどでも手軽に手に入るので、今度、歯磨き剤を購入するときはパッケージの裏面を確認してみてくださいね」
このほか「平成以降に生まれた子は親世代に比べて、あごが小さく、永久歯が収まりきらない子が多い」「昨年の法改正があるまでは、フッ素含有量が1000~1500ppmの歯みがき粉は国内では手に入らなかった」といったトピックスを盛り込んだセミナーは、熱心な質問が相次ぎ、ママ・パパの関心の高さがうかがえました。
参加したママやパパからは、
「フッ素の配合濃度など意識したことがなかったので勉強になった」
「仕上げ磨きは子ども用のブラシで磨いていたので、見直したい」
「むし歯菌の母子伝播の話が印象深かった」
などの声が。乳歯ケアをきっかけに、家族の歯の健康に向き合える時間となったようです。(取材・文/中澤夕美恵、ひよこクラブ編集部)
■監修:倉治ななえ先生
クラジ歯科医院 院長。テクノポートデンタルクリニックでも診療。日本歯科大学附属病院 臨床教授。子どもが本来持っている“歯と口が健康になる力”を歯科医の立場で引き出す「子育て歯科」を提唱。『夢は矯正いらず“子育てできれいな歯並びを!”』(主婦の友社)など著書多数。
「Dr.ななえの予防歯科」にて最新情報を発信。
■関連サイト:タカシマヤ「かわいい赤ちゃん~子育てを応援するタカシマヤのサイト~」
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