【医師監修】赤ちゃんの「初めての熱」 受診すべき熱と突発性発疹、ホームケアのポイント
初めての発熱の原因として、最も多いと言われているのが「突発性発疹(とっぱつせいほっしん)」です。そして「熱性けいれん」の原因でいちばん多いのが、「突発性発疹」と「インフルエンザ」。つまり、初めての発熱で「けいれん」が起こることが多いということです。
そのときにパニックにならないよう、初めての発熱の対処法を「かたおか小児科クリニック」院長 片岡正先生に教えていただきました。
熱が出たら、まず確認すべきこと
赤ちゃんの平熱は37度近くと大人よりも高めのため、通常37.5度以上が「発熱」とされています。新生児はさらに高めで、平熱が37.5度近くの赤ちゃんもいます。そのため新生児の場合、38度以上が病的な発熱とされています。
体内にウイルスや細菌が侵入すると、体は体温を上げてそれらの増殖を抑え、体を守ろうとします。発熱は体の防衛反応ですから悪いことではありません。体に抵抗力(免疫)をつけるためには、むしろ必要なことです。
熱が出たらあわてずに、以下の点をチェックしましょう。
わきのした用の体温計で体温を測る
わきのしたの汗をふき取って体温を測りましょう。耳体温計は早く測れますが、使い方しだいで測定値が不安定 になるので、わきのしたで測るタイプがおすすめです。
平熱を知っておくと、熱が出たときの判断に役立ちます。普段から1日1回は体温を測って、赤ちゃんの平熱を把握しておくと安心ですね。
ただし、赤ちゃんは体温調節機能が未熟で、大人よりも体温の変動が激しいという特徴があります。新生児は服の着せすぎや部屋の暖めすぎなどで、すぐに体温が上がってしまうことが少なくありません。とくに冬生まれの新生児の赤ちゃんの場合、風邪をひかないようにと服を必要以上に着せたり、ブランケットをたくさんかけたりしまいがち。「病気の熱」と「着せすぎの熱」を間違えないように注意し、快適な室内温度を心がけましょう。
体温の変動も観察
体温の変動を調べておくと診断に役立つことがあります。おでこや体を触って体温の変動がありそうに感じたら、再度体温を測ってみましょう。可能であれば数時間おきに測って体温の変動を記録し、受診時に医師に伝えるといいでしょう。
発熱以外の症状がないか、よくチェック
元気があるか、機嫌はいいか、食欲はあるか、おしっこはいつもどおり出ているかなどを確認します。発疹、下痢、嘔吐、鼻水、せきなど、発熱以外の症状がないかも観察します。
■確認したい発熱以外の主な症状
・元気や食欲がない
・機嫌が悪い
・おしっこの回数や色がいつもと違う
・発疹
・下痢
・嘔吐
・鼻水
・せき
水分がとれるかどうかを確認
発熱時には体内の水分が奪われるので、脱水症状に注意しましょう。おっぱいやミルク、麦茶など赤ちゃんが好んで飲むものなら飲ませてOKです。少量でもいいので、こまめに水分を与えることが大切です。
受診の目安は「月齢×熱の高さ」で異なります
生後3ヶ月以下の赤ちゃんは、たとえ元気であっても容体が急変することがあるので注意が必要です。
特に新生児の場合、高熱でなくても重症の場合があります。熱が37度以上あったら、元気があっておっぱい・ミルクを飲んでいていても、診察時間内に受診するようにしましょう。もしも元気がない、おっぱい・ミルクの飲みが悪いなど全般に状態がよくないと感じたら、緊急に受診してください。
生後4ヶ月以上の赤ちゃんは、発熱以外とくに気になる症状がない場合は、診療時間内の受診でいいでしょう。ただし、熱が38度以上の場合は受診のタイミングが変わります。以下を参考に、受診が遅れないようにしましょう。
■月齢×症状別 受診のタイミング
*画像クリックで拡大
受診の際に先生に伝えること
受診のときに以下のことを先生に伝えられるように事前に確認しておきましょう。
・熱は何度あるか
・体温の変動(記録しておくといい)
・発熱以外の症状
・水分や食事がとれているか
・おしっこがいつもどおり出ているか
また、発疹を伴う場合は、発疹が出た時期が診断の鍵になります。発熱と同時、熱が下がってからなど、発疹が出た時期を的確に医師に伝えるようにしましょう。
赤ちゃんに多い「突発性発疹」とは?
発熱から考えらえる赤ちゃんの病気は、「風邪」や「インフルエンザ」から「はしか」「水ぼうそう」「ヘルパンギーナ」「中耳炎」「気管支炎」など、とてもたくさんあります。
中でも、赤ちゃんが最初にかかる病気の代表格が「突発性発疹(とっぱつせいほっしん)」で、ほとんどの子が4歳ごろまでになんらかの症状を伴って発症するといわれています。どういう病気なのか知っておきましょう。
突発性発疹になりやすいのは4ヶ月から2歳にかけて
母体免疫が低下してくる4ヶ月ごろから2歳過ぎくらいまでが最もかかりやすく、4歳ごろになってからかかる子もいます。濃厚に接する人の唾液から感染します。突発性発疹の原因となるウイルスは数種類あるため、2回以上かかる赤ちゃんもいます。
逆に風邪のような症状や下痢などだけで発疹が出ずに終わることもあるため、感染したかわからない場合もあります。
高熱が3〜4日続き、そのあと発疹が出ます
突然38〜39度の高熱が出て、3〜4日続きます。熱のわりには比較的機嫌がよく、食欲もそれほど落ちないことが特徴です。熱が下がるころからあせもに似た赤くてこまかい発疹が胸やおなかに出て、やがて全身に広がります。発疹が出て初めて突発性発疹と診断されます。
急に不機嫌になったり下痢をする赤ちゃんもいますが、2〜3日すると発疹の色も薄くなり消えていきます。ほかの赤ちゃんにうつることはほとんどありません。ただし、高熱が熱性けいれんのきっかけになったり、まれに急性脳症などの合併症を引き起こすこともあるので注意が必要です。
薬は処方されず、 自然に治まります
機嫌がよく水分も十分にとれているなら、ほとんどの場合は処方薬なしで自然に治ります。ただし、熱が高い場合には熱冷ましが処方されることもあります。4〜5日たっても熱が下がらない場合は、再度受診しましょう。
発熱のホームケアですべきこと&してはいけないこと
発熱しているとわかったらお出かけや外遊びは避け、室内で過ごすのが基本です。たとえ元気でも、体を激しく動かしたり興奮するような遊びは避けます。絵本を読み聞かせるなどして静かに過ごしつつ、以下のホームケアを行いましょう。
ただし、新生児の場合はホームケアではなく、医師の指示に従った対応を行ってください。
熱の上がり始めは冷やさずに、上がり切ったら汗をこまめにふく
熱の上がり始めは寒けがします。寒がってふるえているようなら、衣服や布団を1枚重ねて一時的に体や手足を温めてあげます。
熱が上がりきると、顔が赤くなって汗をかき始めます。この時点からは熱を放散させる必要があるので、薄着にしたり室温を調節して涼しくします。
体を冷やすときは、タオルでくるんだ保冷剤などを太もものつけ根(鼠径部・そけいぶ)にあてたり、両わきに挟むなどすると効果的です。
市販の冷却シートはヒンヤリ感はあるものの、熱を下げる効果はあまり期待できません。赤ちゃんが落ち着くなら使用してもいいですが、嫌がるのを無理をしてまでやる必要はありません。小さい赤ちゃんの場合は冷却シートがズレて口や鼻をふさいでしまう危険もあるので、額(ひたい)など鼻や口の近くにはるのは避け、使用したときは目を離さないようにしましょう。
発熱時は汗をたくさんかきます。汗が冷えると体温が奪われて症状が悪化することもあります。汗はこまめにふき、取ってあげましょう。たくさん汗をかいたときは着替えさせます。
水分を少しずつ何度も与えます
熱があると水分が失われて脱水症状になりやすくなります。水分をこまめに与えましょう。
水分とともに失われる電解質を効率よく補える経口補水液(薬局などで買える「OS-1」など)や、乳幼児用イオン飲料がおすすめです。もし嫌がるようならおっぱい、ミルク、湯冷まし、麦茶など、とりあえず飲めるもので構いません。
眠っている間も汗やおしっこで水分は失われます。眠り続けていることで安心せずに、様子を見ながら、起こしたり抱っこするなどして水分を欲しがるかを確認し、欲しがるときは飲ませましょう。
食事は食欲があればいつもどおり与えます
「熱があるときは体力をつけなければ」と考える必要はありません。離乳食や食事は無理をせず、食べられるもの、食べられる量を与えます。
食欲があれば本人が好んで食べるものを与えていいでしょう。ただし、下痢の症状を伴っている場合は、普段より消化のよいものを与えましょう。
機嫌がよければおふろに入れてもOK
おふろで汗や汚れを洗い流し、清潔を保ちます。ただし、熱が上がることがあるので、浴槽に長くつかるのは避けましょう。機嫌が悪いときはさっとシャワーを浴びさせます。
もしも「熱性けいれん」を起こしたら
「熱性けいれん」は発熱したときに起こるけいれんで、多くは熱の上がり際に起こることが多いです。急に目をつり上げて白目をむき、唇が紫色になります。または、手足をピーンと突っ張らせて全身を反り返らせ、ガクガクと体を震わせたりするので、驚いてしまいますが、ほとんどの場合が2〜3分で治まります。重篤な後遺症を残すことはありません。
とはいえ、赤ちゃんがけいれんを起こした場合、それが熱によるものなのか危険なけいれんなのかは素人では判断できません。けいれんが起こったら、赤ちゃんを抱き上げたり揺さぶったりせずに、時計を見て、何時何分に始まり、何分に収まったか確認してください。5分経ってもけいれんが治らない場合は救急車を呼びましょう。
また、以下のような症状がある場合も急いで病院へ行きましょう。
・けいれんが治った後もなかなか目覚めない
・目覚めたあとの様子がおかしい
・目覚めたあと、体のどこかにまひが残る
・手足の硬直が左右対称でない
・1回治まっても、数分〜数時間後以内に再びけいれんを起こした
要注意!発熱時にやってはいけないこと
■温めて汗をかかせる、または体を冷やしすぎる
発汗は病気を治そうとしているときに起こり、汗が蒸発することで体温が下がって体が回復に向かいます。体がまだ病気と闘っている途中でいくら汗をかかせても、熱は下がりません。乳幼児の場合、温めるとより体温が上がってしまうこともあります。
逆に、ただ冷やしても熱を下げる効果はありません。とくに乳幼児は体温調節機能が未熟なので、冷やしすぎると血行が悪くなり、かえって病気を長引かせることもあります。
■解熱薬に頼りすぎる
「熱を下げさえすれば、病気は治る」は間違いです。解熱薬の目的は、熱が高くて眠れないなどの不快症状から少しでも楽にしてあげること。発熱は体が病気と闘うために起こる防衛反応なので、むやみに解熱薬に頼るのはやめましょう。
こんな発熱はどうする? たまひよママたちの「熱のトラブルQ&A」
Q 熱で診察してもらったら「腎盂腎炎」と言われました
4ヶ月の男の子です。38.6度の熱があって診察してもらったら「腎盂腎炎(じんうじんえん)」と診断されました。このくらいの子には珍しくないと言われましたが不安です。再発したりしないかも心配です。今後、気をつけることなどありますか?
A
腎盂腎炎と診断されたということは、尿路感染症(にょうろかんせんしょう)になり発熱したということです。尿路感染症はこのくらいの赤ちゃんには珍しくありませんが、女の子によくみられる病気で、男の子がかかることはあまりありません。再発の可能性もないとは言えませんので、おしっこの流れなどに異常がないか、一度小児科で検査してもらうと安心でしょう。
今後は熱が出たらおしっこを採って、病院で調べてもらいましょう。採尿バッグは薬局では売っておらず、病院でもらいます。そのためにも一度小児科を受診して相談しておくと安心です。
Q 熱が下がり咳だけあるときの再受診の目安は?
7ヶ月になる息子が夜に発熱して救急外来へ行きました。そのとき解熱剤と咳止めを処方してもらいました。翌日には熱は下がったのですが、咳だけが止まりません。咳止めの薬も飲みきってしまいましたが、もう一度病院へ行くべきでしょうか?それとももう少し様子を見るべきなのでしょうか?熱がなく、咳だけが残っているときの再受診の目安を教えてください。
A
夜の赤ちゃんの突然の発熱、びっくりしたでしょうね。咳が残ってしまったようですが、もし咳が軽くなっていて水分を十分にとれ、よく眠れていれば、このまま様子を見ていいでしょう。逆に咳がひどくなっておっぱいやミルクが飲みづらそう、よく眠れないなどの症状が出たら、できるだけ早く再受診してください。
Q黄緑色のドロッとした目やにが出ます
もうすぐ8ヶ月になる女の子がいます。3日前に発熱し、現在は下がりました。が、黄緑色のドロッとした目やにが目の中に入っています。次に私も熱が出て同じ目やにが出ます。とても心配です…。
A
赤ちゃんと同じ症状が出ているということは、赤ちゃんからママに病気がうつったのでしょうね。アデノウイルスの感染によって起こる咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)の可能性があります。
これは夏に多い病気ですが、一年中流行し、高熱やのどの痛みのほか、目の充血、涙目、目やになどの結膜炎の症状が出ます。結膜炎の症状があるうちはタオルや洗面器などは別にして、家族にうつらないようにしましょう。特効薬はないので水分補給をしながら自然に治るのを待ちます。高熱が出たり結膜炎の症状が強かったりするときは受診が必要です。
Q 手足口病と突発性発疹、同時にかかりますか?
先日発熱し、手足口病(てあしくちびょう)と言われました。その後、熱が40度ぐらいまで上がりました。3日後、熱が下がったあとに全身に湿疹が出ました。湿疹の感じでは突発性発疹のような気がするのですが、同時にかかることもありますか?
A
手足口病と突発性発疹が同時にかかることはあり得ます。手足口病の診断がつくころには、ほかのウイルスに感染していることもあるからです。また、発疹だけを見て、突発性発疹と診断するのは難しいです。手足口病の際に受診した病院に早めに行くようにしてください。
Q 熱で予防接種がなかなかできません!
1歳になってから2~3週間に一度ぐらいのペースで熱を出し、なかなか予防接種に行けません。MRは接種しましたが、水ぼうそうを受けるタイミングがなくてまだ受けていません。熱が下がってからどのぐらい間を空ければ予防接種は受けられるのでしょうか。
A
発熱のあとの予防接種は熱を出した病気によって異なります。はしかでは4週間空けますが、普通の風邪では解熱後間を置かなくても接種できることが多いです。熱が下がったら次の日に接種をしてもいいのですが、「解熱」と判断するのは熱が下がった翌日も熱が出ないことです。熱が出た際に診断してもらったかかりつけ医に相談しましょう。
Q&Aは全て「たまひよプレミアム」より転載。
赤ちゃんは大人よりも熱が高めで変わりやすいので、普段から1日1回は熱を測り、平熱を知っておくと安心です。授乳のあとや元気に遊んだあと、気温が急に上がったときなども体温が上がりやすいので、おとなしくしているときに測るのがおすすめです。
(取材・文/かきの木のりみ)
初回公開日 2019/03/15
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