「イヤイヤ期」とちがう、「キレやすい子」。歯磨きや片付けで、心のコントロールを学ばせる方法
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“キレやすい子”というと思春期ごろをイメージするママ・パパもいると思いますが、実は幼児期からキレやすい子はいます。キレやすい子は、ママ・パパが「ごはんだから手を洗って!」とひと声かけるだけで機嫌が悪いと怒り出したりするので、生活習慣を教えるのが難しい一面も。心の安定を図りながら生活習慣を教えていくコツを、怒りをコントロールするアンガーマネジメントに詳しい、早稲田大学教育学部教授 本田恵子先生に教えていただきました。
心の安定を図れば、生活習慣がスムーズに身につく! 年齢別のかかわり方のコツ
歯磨きや手洗い、トイレトレーニング、片づけなど、子どもに教えたい生活習慣はいろいろありますが、生活習慣を教えるときに困るのが「うまくできない!」「今はやりたくない!」など、ちょっとした理由でかんしゃくを起こして怒ったり、泣き出したりするなどの対応の難しさです。
しかしこれは、子どもの脳の発達と深いかかわりがあり、自分の感情をコントロールする脳の制御機能が未熟なために起こる行動です。自分の感情をコントロールできるようになるのは3歳以降が目安。ママ・パパは子どもの心の安定を図りながら、生活習慣を根気よく教えていきましょう。年齢別かかわり方のコツを紹介します。
【0~2歳代】遊びや安全性と関係する生活習慣から教えて
0~2歳代は、キレない心のベースづくりを最も意識してほしい時期。そのためには子どものことを否定しないかかわり方を意識してみましょう。この時期は好奇心旺盛で、ママ・パパからしたらやめてほしいいたずらや遊びをすることが多々ありますが、危険でない限りは「ダメ!」と言わずに見守ってください。
また生活習慣を教えるときは「公園から帰ってきたら手を洗う」「おもちゃを踏むと痛いから片づける」など「安全性」を目で見える形にすることや、楽しくおかたづけができるように「遊び」と関連づけると、比較的スムーズに身につくでしょう。
【3~4歳代】できたら“ほめる”を繰り返すことがカギ!
3~4歳代は「なぜ毎日、歯を磨かなくていけないのか?」「トイレの後に手を洗うのか?」など、習慣にする理由が目に見えにくく、自分は困らないのでまだ理解できない子もいます。生活習慣が定着しにくいのはそのためですが、ママ・パパからすると「何度言ったらわかるの!」と、つい怒ってしまうことも…。しかしママ・パパが興奮したり、声を荒らげたりすると、子どもは余計に興奮してかんしゃくを起こしたり、キレやすくなるので要注意! ママ・パパに意識してほしいのは、失敗は温かく見守って、「何がいけないのか」状況を自分で理解させ、少しでも自分でできたらほめることです。そうしたかかわり方を繰り返すことで、生活習慣は定着していきます。
子どもがキレるってどういう状態!? イヤイヤとは違うの?
子どもに生活習慣を教える時期はイヤイヤ期とも重なりますが、「イヤイヤ」と「キレること」は同じではありません。
イヤイヤは自己主張の表れで、自立への第一歩。ちょっとしたことでヘソを曲げて、泣いたり怒ったり、機嫌を損ねたりして、一見、キレているように見えるかもしれませんが、イヤイヤは“自分でしたい!”という思いの表れなので、「やりたい気持ちを受け止めてから、適切に行う方法を教えてください。
しかしキレやすい子はなんでも「イヤ!」と反抗します。なかなか収まらないときは、本人も何が嫌なのかがわからなくなっているようです。3歳ごろからは幼稚園などの集団生活の中で、お友だちとのトラブルが多くなるなど、気になることが増えてきます。心配なときは、幼稚園の先生と連絡を密にして、園での様子を教えてもらいましょう。一つ一つを解決していくと、アンガー状態が減ります。
生活習慣を教えるとき、スムーズにできないとつい怒ってしまうママ・パパもいるかもしれませんが、怒るのは逆効果ということがわかりますよね。また生活習慣は怒ったからといって身につくものではないので、遊び感覚で楽しみながら、根気よく進めていくことがポイントです。(取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部)
監修/本田恵子先生
早稲田大学教育学部教育 教授。公認心理師、臨床心理士、学校心理士、特別支援教育士SV。脳科学を活かして幼児から大人まで、それぞれの個性に合わせた学習方法やソーシャルスキル教育、アンガーマネジメントなどを実践。 米コロンビア大学院でカウンセリング心理学博士号を取得。著書に「脳科学を活かした授業をつくる」(みくに出版)など。