【小児科医監修】赤ちゃん。熱があるのに体が冷えているのは暖房器具が問題?
ある寒い日、熱があると言って来院した3ヶ月の赤ちゃんとその両親。でも、なんだか様子が変だと気づいた陽ちゃん先生は…?
赤ちゃんやママ・パパにいつもやさしく寄り添う陽ちゃん先生こと、小児科医の吉永陽一郎先生が、日々の診察室で起きた、印象深いできごとをつづります。先生は育児雑誌「ひよこクラブ」でも長年監修として活躍中です。「小児科医・陽ちゃん先生の診察室だより」#11
39度の熱であわてて来院した3ヶ月の赤ちゃん
私がまだクリニック開業する前のことです。寒い夜に総合病院で当直をしていると、夜10時ごろ、「熱があるんです。39度になりました」と生後3ヶ月の男の子の赤ちゃんを連れて、ご両親がやってきました。
—そうですか。ちょっと診させてもらいましょう。
「こんな赤ちゃんでも熱を出すんですか?重症でしょうか?」
ご両親はとても心配そうです。
—今診ますから、ちょっと待ってください。診察を始めて、すぐに違和感がありました。身体が熱くないのです。片方の腕は冷えているような感じさえします。しかし確かに体温計では39度になったようです。
ひととおり診察をして、とくに目立った所見がないことを確認しました。
—熱はどうやって測りましたか?
「体温計をわきに挟んで測りました」
—今夜は冷えますけど、赤ちゃんは寒くないようにされていますか?
「はい、そばにストーブを置いて、この子がいちばん暖かいようにしています」
—どんなストーブですか
「普通の反射式の石油ストーブです。部屋が乾燥しないように上にはヤカンを置いています」
—原因はそれかもしれませんね
「え?」
発熱の原因はストーブだった!
反射式のストーブとは、燃焼部分の奥に反射板がついたものです。
どうやらこの赤ちゃんは、ストーブにあぶられた方だけ熱が上がっていたようです。身体の中心は平熱なのですが、体の表面だけ温度が上がり、そこに体温計を挟めば、本当の体温ではなく、高くなった皮膚の温度を測ることになります。それでストーブにあたっていない方はあたためられていないので、冷えているような感じがしたのです。赤ちゃんは比較的寒いところにいたのでしょう。
—反対側の腕はむしろ冷たいですね。おうちは寒いですか。
「はい、寒かったので、ストーブをこの子に向けていました」
窓からはしんしんと冷気が伝わってくるので、赤ちゃんはできるだけ部屋の中央にいるようにすること。そして、部屋全体を暖かくして、ストーブの熱が赤ちゃんに直接あたらないようにとご家族には伝えました。もちろん、沸騰しているヤカンへの注意も加えました。
今では、ファンヒーター、エアコン、オイルヒーターなどの暖房器具が一般的になり、反射式のストーブは減って、赤ちゃんが強い熱に直接あたることは少なくなりました。しかし、体温調節のためにも、体の水分が奪われていかないためにも、温風を直接当てないこと。赤ちゃんをできるだけ窓際に置かないことは、今でも同じように大切です。
適切な室温は、地域でも違いますし、部屋の場所によってもかたよりがあります。ご家族が「寒くない。暑くない」と思える部屋の、できるだけ中央よりで育児をしましょう。
(構成・ひよこクラブ編集部)
初回公開日 2019/11/25
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