双子・三つ子になる理由は? 一卵性と二卵性の違いって?【専門家監修】
現在の日本では出産率が減り続けている一方で、2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠する多胎妊娠は少しずつ増えています。
その理由と、赤ちゃんが双子・三つ子になるしくみなどについて、産婦人科医の青木 茂先生に聞きました。
多胎妊娠はどうして増えているの?
多胎妊娠とは、2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠することです。1人の妊娠は「単胎(たんたい)」、双子は「双胎(そうたい)」、三つ子は「品胎(ひんたい)」、四つ子は「要胎(ようたい)」とも呼ばれます。多胎妊娠の増加について解説します。
不妊治療の影響もあり、とくに双子の割合が増加傾向に
多胎のうち双子の出産率は、従来、東洋人の自然妊娠による双子の出産率である1000の出産のうち6組ぐらいで、推移してきていました。日本では、1975年から注射による排卵誘発剤(以下、hMG)を使った不妊治療が始まり、1983年からは体外受精も行われるようになりました。
hMGが使われるようになってから双子出産率は少しずつ上がり始め、体外受精の実施開始後はさらに上がり、2003年には11組に。三つ子・四つ子も、体外受精の治療が始まってから増えています。
しかし、日本産婦人科学会が2008年に、体外受精で母体に戻す胚(受精卵)は原則1個、最大でも2個までにするよう勧告を出したことから、三つ子、四つ子の分娩は減ってきています。
二卵性の双子が一卵性より少し多い状況
かつては一卵性の双子(1つの受精卵が2つに分離した双子のこと)の出産率が、二卵性の双子(2つの受精卵の双子のこと)を上回っていました。しかし、1987年以降、不妊治療の影響で二卵性の双子の出産率が上昇し、1997年には一卵性の出産率を超えました。それ以降、やや二卵性の双子が多く見られます。
一卵性の双子も、昔より増加傾向に
一卵性の双子は偶然によるものと考えられ、日本では1974年以降、人種や家系にかかわらず、1000の出産のうち4組くらいと、ほぼ一定の出産率を示していました。ただ、不妊治療の影響によって、ごくわずかではありますが、増えてきています。理由ははっきりしていませんが、排卵誘発剤の刺激や体外受精の物理的な刺激が、受精卵の分離を促しているのではないかなどと考えられています。
三つ子の場合は、3人とも違う受精卵の三卵性のほか、1つの受精卵と一卵性の双子が組み合わさったケースもあります。
双子や三つ子になる理由って?
ヒトの体には、1回の月経周期で1つだけ排卵するしくみが備わっているので、ほかの哺乳(ほにゅう)類と違って、ヒトは1人ずつ生まれてくるのが通常と考えられています。ところが、排卵された1つの卵子が1つの精子と受精したあと、2つに分かれたり、あるいは一度に複数の排卵があり、それぞれに精子が結びつき、複数個の受精卵となって子宮の中に着床した場合は、双子・三つ子などの多胎妊娠となるのです。
一卵性の双子と二卵性の双子は、何がどう違うの?
【一卵性の双子】…もともとは1つの受精卵が早い時期に2つに分離し、そのまま育っていった双子のことです。ほとんどの場合、なんらかの理由で自然に受精卵が分離したものですが、不妊治療によるものではないかと考えられる、一卵性の双子もわずかにあります。
【二卵性の双子】…最初から2つの受精卵が、それぞれ育っていった双子のことです。二卵性の双子になるのは、ママが複数個の排卵が起きやすい体質の場合もあれば、不妊治療による場合もあります。
体外受精で受精卵を2個母体に戻し、2つの受精卵が着床して育ったもののほか、排卵誘発剤で2個の排卵が起き、それぞれが受精・着床して成長した場合もあります。
ちなみに、三つ子では、排卵誘発剤で3つの受精卵ができる場合と、体外受精で2個の受精卵を母体に戻したあと、1つが一卵性の双子として分離し、もう1つの受精卵も着床して、最終的に三つ子となる場合があります。
異性の双子なら二卵性、同性の場合は両方の可能性が
一般に、容姿がよく似ていれば一卵性の双子、年の違うきょうだい程度に似ているようなら二卵性の双子といわれることが多いようです。でも、毎日双子ちゃんに接しているママ・パパには、一卵性の双子であっても、それぞれの違いがよくわかるようです。一卵性、二卵性の特徴は、以下を参考にしてみてください。
【一卵性と二卵性の特徴】
<性別>
一卵性/
男の子と男の子、もしくは、女の子と女の子というように、必ず同じ性の組み合わせです。
二卵性/
年の違うきょうだいのように、同じ性の場合と、男の子と女の子というように異なる性の組み合わせ、2パターンがあります。
<血液型>
一卵性/
2人とも同じ受精卵の同じ遺伝子情報を持って生まれてくるので、血液型も同じです。
二卵性/
同じ両親から生まれるので、2人の血液型が同じこともありますが、異なる場合もしばしば見られます。
<体の大きさ>
一卵性/
本来、同じくらいですが、ママのおなかの中にいる間は胎内環境によって大きさに差が生じることもあります。
二卵性/
同じくらいのこともありますが、年の違うきょうだい程度には差があることもあります。
<性格>
一卵性/
本来の性格は似ているかもしれませんが、生後は環境や受ける刺激の違いによって個性が出てきます。
二卵性/
もともと別の遺伝子を持っているので、年の違うきょうだいと同じように、それぞれの性格は違っているといえます。
<顔・手や足>
一卵性/
顔、手や足の形、指紋などは似ています。ただ、利き手が逆だったり、つむじの巻き方向が違ったりする場合もあります。
二卵性/
年の違うきょうだいの場合と同じように、顔、手や足の形、指紋などはそれぞれ違っています。
場合によっては正確な卵性診断が必要なときも
医師は、出産のときに胎盤や卵膜(らんまく)の数から、一卵性・二卵性の判断をしてきました。しかし、遺伝子診断など厳密な卵性診断の技術が進んでくると、二卵性だと思われていた場合も一卵性の双子の可能性もあるとわかってきました。胎盤が1つだから一卵性、胎盤が2つだから二卵性、ましてや、不妊治療の経験があるから二卵性と決めつけることは誤りといえます。
より正確な卵性診断が求められる例としては、双子のどちらか1人が遺伝的な病気になり、治療のためにもう1人の遺伝的な情報が必要となる場合です。
多胎妊娠の経過は“膜性”が重要。早めに膜性診断を受けて
しばしば「多胎妊娠は単胎妊娠よりもリスクが高い」と言われます。さらに、“膜性“によってもリスクの高さは異なってきます。“膜性”とは、子宮内で赤ちゃんがどんな部屋で過ごすかを表す言葉です。
膜性の種類は主に3つあります
双子・三つ子の種類は、ママのおなかの中にいる間は「絨毛膜性(じゅうもうまくせい)(膜性)」、誕生後は卵性で区別しています。
絨毛膜は卵膜(赤ちゃんが入っている膜状の袋のこと)の一部で、赤ちゃんのいる部屋の壁のようなものです。
これが1つの場合、“一絨毛膜性”と呼びます。一絨毛膜性の場合、胎盤は1つで、2人で1つの胎盤を共有することになります。
一絨毛膜性の中でも、1人が1つの羊膜に包まれているケースと、2人が1つの羊膜に包まれているケースがあります。
また、絨毛膜が2つの場合、“二絨毛膜性”と呼ばれ、2人に2つの胎盤(ただ、癒合して1つに見えることも多い)があります。
胎盤を共有している一絨毛膜性の場合、妊娠中にリスクを生じる可能性が高くなるので、赤ちゃんが双子とわかったら、できるだけ早い時期に絨毛膜の数を確認しておくことが重要。妊娠14週を過ぎると膜性が確認しにくくなるので注意してください。
【一卵性:一絨毛膜性 (※2種類あります)】
●一絨毛膜一羊膜(いちじゅうもうまくいちようまく)
赤ちゃんは1つの胎盤を共有し、1つの羊膜内に2人いるので、厳重な管理が必要となります。もっともリスクが高いといえるでしょう。
●一絨毛膜二羊膜(いちじゅうもうまくにようまく)
赤ちゃんは1つの胎盤を共有し、それぞれの羊膜の中にいます。一絨毛膜一羊膜に次いでリスクが心配されるため、入念な管理が必要となります。
【一卵性・二卵性:二絨毛膜二羊膜】(にじゅうもうまくにようまく)
胎盤は2つあり、赤ちゃんそれぞれに持っているので、栄養や酸素の供給は安定しています。比較的リスク発生は少ないでしょう。ただ、胎盤は2つあるものの、妊娠が進んでくると2つがくっついて発育し、見かけ上、1つの胎盤(癒合胎盤)になることもあります。
双子・三つ子など、多胎妊娠と判明したら、妊娠初期に膜性診断を受けることが重要です。もし、きちんと膜性が確認できなかったときは、リスクが高い絨毛膜性かもしれないと考えて、それ相応の管理をしていくことになります。
監修/青木 茂先生 イラスト/ヨモギ田リョオコ 取材・文/ひよこクラブ編集部
青木 茂先生(あおき しげる)
Profile
横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター 産科担当部長。1995 年、横浜市立大学医学部卒業。2010年より横浜市立大学付属市民総合医療センター総合周産期母子医療センターに勤務。2015年より現職。
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