双子・三つ子の出産方法 帝王切開、経膣分娩、それぞれのメリット・デメリットって?【専門家監修】
双子・三つ子のお産は、どのような出産になるのでしょうか? 分娩方法とそれぞれのメリット・デメリットを産婦人科医の青木 茂先生に聞きました。
お産方法を決める基準
分娩方法の考え方は病院の方針にもよりますが、双子の場合は1人目の胎位(おなかの中にいる赤ちゃんの位置)がポイントになります。
多くの場合が帝王切開に。経腟分娩が可能な場合も
双子のお産では赤ちゃんたちの胎位や大きさ、ママの合併症の有無などを考慮して分娩方法が選択されます。赤ちゃんたちの胎位によって、どのような出産スタイルが可能か、下記に一例をまとめました。
ポイントとなるのは、先に生まれる1人目(子宮口により近い位置にいる赤ちゃん)の胎位です。1人目が頭位(頭が下の状態)の場合は、経腟(けいちつ)分娩が可能。逆に1人目が骨盤位(足やおしりが下の状態。「さかご」とも呼ばれる)の場合は、帝王切開(おなかを切開し、赤ちゃんを取り出す手術)の場合がほとんどです。
なお、スタッフや設備の関係で、「双子はすべて帝王切開」という方針の病院も少なくありません。また、三つ子の場合は安全のため帝王切開になることが多いでしょう。施設によっては、分娩方法の希望を受け入れてくれる場合もあるため、自分のケースが帝王切開と経腟分娩のどちらに適していて、どちらが安全なのか、医師からよく説明を聞きましょう。
1人目・骨盤位×2人目・頭位
1人目が足やおしりを下にした骨盤位になっていて、2人目が頭位のケース。1人目が骨盤位の場合は、経腟分娩をするにはリスクが高くなるため、帝王切開になることが多いです。
1人目・頭位×2人目・骨盤位
1人目は頭位ですが、上にいる2人目が骨盤位になっているケースは、経腟分娩が可能な場合も。2人目の赤ちゃんが妊娠32週未満または1500g未満の場合や2人目の赤ちゃんが極端に大きいなど体重差がある場合は、帝王切開になることがあります。
1人目・頭位×2人目・頭位
2人そろって頭を下にした頭位を保っているケース。経腟分娩が可能なことが多い胎位です。
1人目・頭位×2人目・横位(違うパターンもあり)
1人目が頭位を保っていても、2人目の体が重なり合うように横になっているケース。経腟分娩が可能な場合もありますが、2人目の胎位によっては帝王切開に。
1人目・骨盤位×2人目・骨盤位
1人目も2人目も、2人そろって足やおしりを下にした骨盤位になっているケース。帝王切開での出産が大半でしょう。
帝王切開と経腟分娩、それぞれのメリット・デメリット
双子・三つ子を出産するとき、単胎(赤ちゃんが1人の場合)と同じく、経腟分娩と帝王切開の2つの方法が考えられます。それぞれのメリット・デメリットを把握しておくといいでしょう。
【多胎の出産】帝王切開のメリット&デメリット
帝王切開は開腹手術なので経腟分娩に比べて出血量が多くなり、おなかに傷が残るというデメリットもあります。けれど、赤ちゃんたちの胎位にかかわらず、短時間で安全に出産できる点がメリット。微弱陣痛でお産が長引く心配がないので、2人目の赤ちゃんの回旋異常(通常赤ちゃんはゆっくり体の向きを変えながら産道を通りますが、なんらかの理由で向きを変えられずお産がスムーズにいかないこと)や、へその緒・胎盤のトラブルなども回避できます。術後、まれに母体に、肺血栓(下半身に形成された血栓が肺動脈を詰まらせる症状)が起こることがありますので、早期に起きて歩行するなどの予防も必要です。
さらに妊娠高血圧症候群などの合併症がある場合、骨盤が狭い人、前回の出産時に帝王切開だった人も帝王切開の可能性が高くなります。いずれにせよ、事前に出産について医師に確認しましょう。妊娠経過が順調なら、37~38週に出産日を設定されますが、早産傾向がある場合はもう少し早めの出産となるでしょう。
帝王切開の方法やプロセスは、単胎も双子もほぼ同じです
前もって日時が決まっている予定帝王切開は、手術の前日から入院し手術当日は絶食して、体温や脈拍、血圧測定、ノンストレステスト(胎児の心拍数を調べる検査)などの前処置を受けます。双子だからと特別な検査はありませんし、帝王切開の方法や流れも単胎と同様です。
麻酔方法は部分的に麻酔する局所麻酔が一般的ですが、一刻も早く赤ちゃんたちを取り出す必要があるときやママに合併症があるときには全身麻酔になるでしょう。麻酔後、下腹部を縦か横に10~15㎝ほど切開します。傷あとが目立ちにくい横切りに対し、子宮筋腫や前置胎盤などで出血が多くなると予測されるケースや緊急時は、手術しやすい縦切りになることが多いようです。どちらに切るかは病院の方針にもよります。
手術時間は約30~50分。執刀から5分後に、まずは子宮口の近くにいる赤ちゃんの卵膜(らんまく)を破って取り出し、へその緒を結んで切ったら、次の赤ちゃんも同様に数分以内に取り出し、赤ちゃんたちが誕生します。最後に胎盤を取り出し、切開のあとを縫合したら手術は終了です。局所麻酔の場合は意識がはっきりしているので、誕生の瞬間に産声を聞くこともできます。
【多胎の出産】経腟分娩のメリット&デメリット
経腟分娩のメリットは、帝王切開に比べて出血が少なく、母体の回復が早い場合が多いということです。ただ、2人目の赤ちゃんが急変してトラブルにつながる可能性があるというデメリットも。そのため、医師は1人目の誕生直後、次の赤ちゃんの胎位と心音をチェックして慎重にお産を誘導します。
経腟分娩ができる条件
経腟分娩ができるのは1人目の赤ちゃんが頭位のケースですが、中には赤ちゃんが2人とも頭位であることを条件とする病院もあります。加えて、赤ちゃんが大きすぎたり小さすぎたりしないこと、ママの骨盤が十分に広く、妊娠経過が良好なことも必要条件です。
ちなみに、先に生まれる赤ちゃんがたどるお産の流れは単胎と同じです。1人目が誕生してホッとしたのもつかの間、再び陣痛が起きて、数分から30分ほどで次の赤ちゃんが生まれてきます。
安全を守るためにお産の途中で緊急帝王切開に切り替える場合も
双子は子宮筋が大きく伸びてしまうため、微弱陣痛でお産が長引くことがあります。また、1人目の誕生後、2人目が回旋異常で下りてこられずに状態が悪くなってしまったり、胎位を変えて骨盤位や横位になり、へその緒が出てきてしまうケースも。2人目が危険な状態になり、直ちに経腟分娩することが不可能な場合は、緊急帝王切開に切り替える必要があります。突然のことで心配になるかもしれませんが、安全のための処置と受け止めましょう。
多胎の出産は、帝王切開になる可能性が高く、不安も大きいでしょう。事前に医師から説明を聞いたり、ママ・パパで話し合ったり、ほかのママの体験を聞いたりしながら、不安を解消できるといいでしょう。
監修/青木 茂先生 イラスト/坂本直子 取材・文/ひよこクラブ編集部
青木 茂先生(あおき しげる)
Profile
横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター 産科担当部長。1995 年、横浜市立大学医学部卒業。2010年より横浜市立大学付属市民総合医療センター総合周産期母子医療センターに勤務。2015年より現職。
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