双子・三つ子って単胎の子に比べて発達が遅いって本当?【専門家監修】
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双子・三つ子の赤ちゃんは早産になりやすく、出生体重が単胎(赤ちゃんが1人の場合)より少ない傾向にあります。また、言葉の発達も遅いと言われています。だからといって、心配はいりません。双子・三つ子の赤ちゃんが、どのようなペースで成長していくのか、双子のママであり、子どもの心理の専門家である仲 真紀子先生に聞きました。
多胎の赤ちゃんの体の発達
双子・三つ子の赤ちゃんは、生まれたばかりのころは小さめでNICU(新生児集中治療室)に入院する子もいますが、1才くらいになると平均的な体重・身長になる子が多いようです。
小さめに生まれた場合も3~6才までには標準値に
早産が多い双子・三つ子は、1才くらいまでは出生時の妊娠週数と出生体重に比例して、小柄な傾向にあります。たとえば、36週以前と40週の出生では、ママのおなかの中で育った週数により出生体重に差が出るため、生後4~5ヶ月くらいまでは身長・体重の体格差がなかなか縮まりません。しかし、1才くらいまでには、ほぼ同じ体格に近づくでしょう。1000g未満の超低出生体重児も、3~6才までには体の発育がしだいに追いついていきます。
小さめに生まれた場合は、0才代の運動発達の目安とされる首のすわりや寝返り、おすわり、はいはい、つかまり立ち、ひとり歩きなどが、やや遅れがちかもしれません。でも、その子なりに成長し、いずれは成長が追いつくので安心しましょう。早産の場合は本来の出生予定日を生まれた日と仮定して、そこから数えた月齢を「修正月齢」として発育・発達を考えましょう。それほど大きな遅れがないことがわかるはずです。
子どもたちの体格差は成長によって変わります
双子・三つ子の場合、きょうだい間でも、出生時に多少の体重差があるのは珍しいことではありません。体重差が極端に大きい場合は、その後の成長の過程で大きめ、小さめの差が残ることもありますが、出生時に小さかったほうの子がぐんぐん成長し、1才ごろには大きいほうの子に追いつくケースも多々あります。
子どもの出生後の体格差の変化には、卵性もかかわっています。
【一卵性の場合】
ほとんど同じ体格に育っていくことが多いです。
【二卵性の場合】
性別が違う場合など、体の大きさに年の違うきょうだい程度の差が出ることも。
双子・三つ子の場合、きょうだい間で、体の発育・発達のペースが同じとは限りません。ママやパパは子どもたちの成長や発達に違いがあると気になってしまいがちです。体格の小さな子や発達がゆっくりな子が心配かもしれませんが、それぞれに個性やペースがあると考えるといいでしょう。
多胎の赤ちゃんの心の発達
心の発達の様子は、単胎の子と大きく変わることはありません。ただ、双子・三つ子ならではの行動が見られることもあります。
お世話をされる経験から他者の存在を知ります
双子・三つ子に限らず、生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ複雑な感情を表すことはありません。でも、快・不快の感覚はちゃんと持っていて、気持ち悪い、寒い、眠いなどの不快は泣いて訴えます。
赤ちゃんが泣くと、親が抱いてくれたり、おっぱいをくれたり、おむつを替えたりしてくれますよね。このようにだれかに働きかけられる体験を繰り返すことで、赤ちゃんは「自分以外のだれか」の存在を認識するようになります。
ママやパパが赤ちゃんの要求を満たしてくれたり、にっこりと語りかけてくれたりすると、それが心地いい体験として赤ちゃんの中に蓄積されます。その積み重ねが赤ちゃんたちの感情を豊かにはぐぐみ、親との絆を強めます。
赤ちゃんにとってママやパパが大好きな、かけがえのない存在となっていくのです。
5~6ヶ月くらいになると、多くの赤ちゃんは人見知りを、10ヶ月くらいからは後追いをするようになります。これはママやパパとほかの人をはっきりと区別できるようになった証しです。
そして、親がそばにいてくれれば、少し離れたところでも遊べるようになり、さらには2才を過ぎると少しずつお友だちとかかわれるようになります。
譲り合いやルールの観念など社会性が育っていないので、初めはおもちゃの取り合いなどもしますが、そんな経験から赤ちゃんは人とのかかわり方を学び、3才過ぎごろにはお友だちとも遊べるようになります。
単胎の子にはない経験が、発達に影響を与えることも
双子・三つ子も、このような発達の時期やステップは単胎の子とまったく変わりありません。ただ、常に同じような人間が近くにいて、手足を動かしたり、話したり、泣いたりしているという環境にあることから、多少単胎の子と違った道筋をたどることはあります。たとえば、ママやパパに抱っこされたくても、だれかに先を越されるという体験から、他者の存在をより確認しやすいとか、きょうだい間で意思の疎通が事たりてしまうので、お友だちへの関心が薄いなどです。また、自己主張の表し方も、一方が激しいともう一方はおとなしめなど、なんとなくバランスがとれている場合もあるでしょう。
ただし、これらは多胎という環境による一時的なものであって、将来を決定づけるものではありません。多くは環境の変化によって、変わるものと考えていいでしょう。
多胎の赤ちゃんの言葉の発達
双子・三つ子は、言葉が遅れがちといわれることがあります。その理由をみていきましょう。
子ども同士の「以心伝心」が言葉の遅れの一因にも
双子・三つ子は言葉の発達が遅れがちといわれるのには、次のような理由が考えられます。
1つ目は、いつもきょうだい同士で遊んでいるので、お互いに言葉で表現しなくても、以心伝心でわかってしまうということです。子どもたちだけにわかる、暗号のような言葉を使ってコミュニケーションをしていることもあり、そのような場合、大人にも通用する言葉を獲得する動機が低くなってしまうのです。
2つ目は、親が子どもたちと一対一でかかわる時間をとりにくいということがあります。言葉の発達には、ママやパパの語りかけが必要です。なるべく一人一人に対して語りかける時間をとるように心がけましょう。語りかけといっても大げさに考える必要はありません。「〇〇ちゃん、おむつ替えようね」「△△ちゃん、おててやわらかいね」というように、お世話をするたびに、今やっていることやママやパパが感じたことをそのまま言葉にするだけで十分です。それが子どもたちの言葉の発達を促すことにつながります。
子どもたちに言葉の遅れがみられても、悲観する必要はありません。幼稚園や保育園に通い集団生活をするようになれば、自然に言葉を獲得していく子がほとんどです。健診などで言葉が遅いと指摘されたとしても、あまり悩まないで。いずれ解決するものとあせらず見守っていきましょう。
小さく生まれることも多い、双子・三つ子の赤ちゃん。さらには、きょうだいの間での成長にも差が現れることもあり、ママやパパが不安な気持ちになってしまうこともあると思います。しかし、赤ちゃんはしっかり成長しています。長い目で、赤ちゃんたちの様子を見守っていきましょう。
監修/仲 真紀子先生 取材・文/ひよこクラブ編集部
仲 真紀子先生(なか まきこ)
Profile
立命館大学総合心理学部教授、北海道大学名誉教授。1984年、お茶の水女子大学大学院博士課程単位取得退学。東京都立大学助教授、北海道大学教授などを経て2017年より現職。
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