夜間、休日に心強い小児の#8000 どんな人が答えてくれるの? 上手な活用法は?【小児救急専門医】
休日や夜間の実施時間帯に「小児救急電話相談、子ども医療電話相談(#8000)」に電話をすると、子どもの病状について相談することができます。どのような人がどんなふうに相談に乗ってくれるのでしょうか。#8000事業の設立当初から参加されている、日本小児科医会小児救急医療委員会業務執行理事の渡部誠一先生に聞きました。
また、#8000に電話相談をしたことがあるママに、そのときの様子を教えてもらいました。もしものときにあわてないために、参考にしましょう。
#8000の相談員は、主に小児医療に精通した看護師さん
休日や夜間に子どもの具合が悪くなったときに相談できる「小児救急電話相談、子ども医療電話相談(#8000)」(以下、#8000と表記)は、子育て中のママやパパにとって、とてもありがたいシステムです。でも、どのような人が対応してくれるのか気になります。
「運営は各自治体に任されているため、すべて統一とはいきませんが、電話を受ける相談員は小児医療に精通しています。
小児科医が対応している地域も一部ありますが、多くは看護師です。小児科での勤務経験が3年以上あることを条件とし、さらに、相談員として必要なスキルを身につける研修を受けることを必須としています」(渡部先生)
小児科での勤務経験がある看護師さんに相談できるというのは、ママやパパにとって安心できる情報です。
ところで、病気・けがの受診を相談できる番号といえば「#7119(救急安心センター事業)」もあります。この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
「#7119は、救急車を呼ぶべきか、病院へ行くべきかなどを相談でき、こちらは年齢を問わずすべての人を対象にしています。小児科医療に特化していないので、子どものことを相談したい場合は、#8000に相談するほうが安心だと思います。小児科は基本的に、15才(中学3年生)までを対象にしています。
自治体によっては2つの事業が連携していて、#7119にかけて患者が子どもだとわかると、#8000につないでくれることもあるようです」(渡部先生)
子どもにとってプラスになる方法を選ぶために、#8000を活用しましょう
多くの病院が休診となる年末年始は、休日・夜間救急外来に行くか、家で様子を見るか、悩むことが多くなる時期です。
加えて今年は、新型コロナウイルスの感染リスクを考える必要もあり、いつも以上に受診すべきか悩むことになりそうです。
「とくに夜間救急外来はスタッフの人数が限られるため、通常でも待ち時間が長くなりがちですが、今年は診察ごとに消毒が必要になるなど、さらに待ち時間が長くなることが考えられます。
夜間救急外来の待合室に長時間いることで、新型コロナだけでなく何らかの感染症の感染リスクが高まってしまうかもしれません。医療機関によっては車の中で待つようにと言われることがあります。
また、年末年始でも昼間の外来のほうが、より多くのスタッフがいて、十分に対応できることが多いです。
もちろん、急いで受診が必要な症状が見られたら受診すべきです。でも、翌朝まで待てる症状なら、夜間はホームケアで乗りきるほうが、子どもにとっていい場合もあることを知っておきましょう。
夜間にすぐ受診すべきか、明日まで待てるか判断する、昼間の外来まで待つ場合にどのようにホームケアを行うか、どんなことに注意するかを知るためのサポートとして、#8000を活用してもらいたいと思います」(渡部先生)
#8000で相談してみてどうたった?ママたちの体験談をご紹介
実際に#8000を利用したことがあるママの体験談を、子どもの年齢順に紹介します。渡部先生のひと言コメントもあわせて参考にしてみましょう。
【1才の子のママの体験】
悩んだら必ず#8000に電話して、相談するようにしています。小児科に長く勤務されている経験豊富な看護師さんが相談に乗ってくれるので安心できますし、もし今夜ひどくなった場合どうしたらいいか、地元の医療機関の夜間のかかり方なども教えてくれます。
【渡部先生から】
#8000を上手に利用されていると思います。このような形で活用してほしいですね。
【1才4カ月の子のママの体験】
子どもに発疹が現れ どんどん悪化し、少しかゆがるようになりました。年末年始で通常診療はやっていないので、#8000に電話。救急外来で対応してくださる病院も案内してもらいましたが、胃腸炎やインフル患者がいる中に行くリスクもあると説明を受け、取りあえず手持ちの保湿剤で様子を見ることにしました。
【渡部先生から】
発疹の診断は視診で行うので、電話では答えにくいことがあります。すぐ受診が必要かの判断と、ホームケアの指導もあって、回答が役立ったようでよかったです。もちろん、#8000の相談結果は、ママやパパと相談員との協働作業です。
【3才の子のママの体験】
せきと呼吸音が「いつもと違う」と感じ、休日の夜だったため悩みましたが、♯8000に電話して相談してみました。「呼吸系は早めの受診をすすめます」と言われて決心がつき、夜間救急へ。血中酸素濃度が低く、今まで起きたことがなかったぜんそくの中発作が起きていて、入院瀬戸際でした。大丈夫だろうと待っていたら大変なことになっていたかもしれません。
【渡部先生から】
#8000に寄せられる相談の中で、「ゼイゼイしている」というのは、当日に受診が必要になることが多い主訴です。「いつもと違う」と感じたのは、いい観察でしたし、受診ができてよかったと思います。
【3才の子のママの体験】
息子が冬にノロウイルスにかかりました。12時間以上吐き続け、水分を一口飲んでもそれ以上のものが出てくる状態で、休日診療に2度かかり、吐きけ止めの座薬を使用しながら様子を見ていました。でも、夜に黄色い液体を吐いて不安に襲われ、#8000に相談。今日1日の様子を話したところ、救急レベルと言われ、そのまま救急車につないでいただきました。幸い大事には至らず、点滴だけで帰ってこられましたが、あのまま一晩家で様子を見ていたらどうなったかわかりません。
【渡部先生から】
#8000に寄せられる相談で、吐きけ・嘔吐(おうと)は発熱の次に多い主訴です。嘔吐は半日以上続いて治まる気配がなければ受診するか、このママのように#8000に相談するといいでしょう。
お話・監修/渡部誠一先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部
「#8000にかけると小児科医療に精通した相談員に相談できる」と知っておくと、診療時間外に子どもの具合が悪くなったとき、心にゆとりが持てるかもしれません。子どもの病状について悩んだら、利用してみましょう。子どもの状態が「いつもと違うか、どこが違うか」を見て相談してください。
渡部誠一先生(わたなべせいいち)
Profile
小児科専門医・指導医。日本小児科医会小児救急医療委員会業務執行理事。土浦協同病院小児科。専門は循環器・救急。小児救急電話相談(#8000)の設立以来、実施体制や相談対応の充実に関する研究を継続して行っている。