「日本の子どものおやつを見ていると心配に」専門医が教える乳幼児の補食の考え方
コロナ禍で、おうちで過ごす時間が多くなった今、子どものおやつに悩んでいるママやパパは多いのではないでしょうか。なかには「家で過ごす時間が多くなった分、おやつやジュースを与える回数が増えた」という声も。アメリカで子育て経験がある小児科医 工藤紀子先生は「アメリカでは、育ち盛りの子どものおやつを大切に考える傾向がありますが、日本でも乳幼児期から、おやつの与え方を見直したほうがいい」と言います。乳幼児期に気をつけたい、おやつの与え方について話を聞きました。
補食の目的は、栄養やエネルギーを補うため。小学校就学前までは1日2回の補食が基本
工藤先生によると、アメリカでは農務省主導のもと、学校に食べ物を提供する人(カフェや売店など)向けのガイドライン「学校での賢いおやつガイド」があり、健康的な食生活を送っている子は、成績もいい傾向があるとされています。
「私は、日本の子どものおやつを見ていると心配になります。
おやつ(以下 補食)とは、本来3食の食事ではとりきれない栄養やエネルギーを補給するための軽食です。軽食とは、おにぎりやゆで卵、フルーツ、温野菜などで、決してお菓子のことではありません。
補食は、3回食になる9カ月ごろから始め、朝と昼の食事(離乳食)の間に1回、昼と夕の食事(離乳食)の間に1回与えましょう。ただし、おなかがすいていないときは、無理に与える必要はありません。また1日2回の補食は、小学校就学前までは続けて大丈夫です」(工藤先生)
「ア」甘い、「ク」(栄養が)空っぽ、「マ」丸飲みしてかまないおやつはやめましょう
補食のとき「手軽だし、子どもも喜ぶから!」とお菓子類を中心に与えるママやパパもいるのではないでしょうか。しかし工藤先生は、「ア・ク・マ」のおやつは与えないでくださいと言います。「ア・ク・マ」とは、「ア」甘い(糖質が多い)、「ク」(栄養が)空っぽ、「マ」丸飲みできてかまないおやつのことです。
「たとえば、ジュースもその1つです。炭酸飲料やオレンジジュースでは栄養は補えませんし、中には500mlのペットボトル1本に角砂糖20個程度の糖質が含まれているものもあります。家庭で料理をするとき、角砂糖を20個も入れて味つけをしませんよね? しかしジュースの中には、そのぐらいの糖質が含まれています。
糖質を一気にとると、血糖値が急激に上がり、一時的に興奮状態になります。しかし急激に上がった血糖値は、一気に下がるため、急に元気が無くなり脱力感に見舞われます。また肥満にもつながりやすいです。
そのためジュースは買わないことがいちばん! わが家も2人の子どもがいますが、冷蔵庫には水と麦茶しか入れていません。
そのほかのア・ク・マのおやつは、菓子パン、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、グミ、プリン、アイスなどです。
お菓子類は、子どもを魅了する味つけがされていて、栄養は考慮されていないことが多いため、ごほうびとして与えるのもできるだけ控えたいものです」(工藤先生)
ママたちの補食の悩みを、工藤先生が解決!
補食については、素朴な疑問も! ママたちの質問に工藤先生が答えます。
Qフルーツは糖質が多いから、補食に与えるのはダメ?
うちの子はフルーツが大好きで、補食にフルーツをよく与えています。しかし糖質が気になって…。フルーツの与え過ぎはダメ?
A食事をきちんととっていれば、フルーツは与えて構いません
きちんと3食食べていれば、補食にフルーツを与えても構いません。ただし食事を食べない場合は、フルーツは控えましょう。フルーツには糖質も含まれていますが、天然の糖質は心配しないで大丈夫。フルーツ以外では、焼きいもなどもおすすめです。
Q 牛乳は栄養価が高いので、欲しがるだけ飲ませていい?
うちの子は2歳ですが、牛乳が大好き!毎日1日1ℓ近く飲んでいます。私も「飲み過ぎでは?」と思うのですが、飲みたくなると冷蔵庫を自分で開けて探すし、飲めないと「牛乳~!」とひたすら泣き叫びます。牛乳は栄養もあるので、欲しがるなら飲ませていいですか?
A牛乳には鉄が含まれていません! 飲ませるならば1日500mlまでに
1歳代から幼児期は、牛乳は1日500mlまでを目安にしてください。それ以上、飲んでしまう場合は、少し不経済ですが500mlのパックで購入して「この1本が無くなったら終わりだよ」と伝えましょう。牛乳は脂肪分が多いので、飲み過ぎは肥満の原因につながります。また牛乳は、一見栄養バランスがいいように思いますが、成長に必要な鉄がほとんど含まれていないので「牛乳さえ飲んでいれば大丈夫!」と思うのは間違いです。
Q小食で体が小さい子は、補食をお菓子にしてもいい?
うちの子は小食で小さめ。4歳で体重12kgです。しかし、お菓子は大好き! 補食でお菓子を与えてもいい?
Aお菓子を与えるのはNG! 食事を基本に考えて
いくら小食だからといっても、補食をお菓子にするのはNGです。しっかりおなかがすくと、どんな小食の子でも食べるようになるので、まずはお菓子やジュースなどのおやつをやめましょう。また、とろみをつけると食べるようになったり、フライなどかみごたえがあるものだと食べるようになったりする子もいるので調理法も工夫してみてください。
取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
工藤先生によると、補食を与えるときは窒息事故にも注意が必要と言います。たとえばパンは、ママやパパが目を離したすきに一気に口に押し込んでしまうことがあるので、パンを与えたときは、絶対目を離さないで! 大粒のぶどうやミニトマトなどを補食として与えるときも、のどに詰まらないように4等分にカットするなど注意しましょう。
●できる子どもの最強ごはんとおやつ術
定価/1300円(文友舎)
※文中のコメントは口コミサイト「ウィメンズパーク」の投稿からの抜粋です