双子・三つ子の病院はどう選ぶ? 健診の内容や入院のタイミングは?【専門家監修】
双子・三つ子を妊娠しているとわかったら、万が一のトラブルが起こることも想定した病院選びが必要となってきます。健診の内容、入院・出産までの流れも含めて、ポイントを産婦人科医の青木 茂先生に聞きました。
病院は“万が一”に対応ができるところを。双子・三つ子とわかってから転院するケースも
ママは、初診またはその後何回目かの診察で「双子・三つ子を妊娠している」と診断を受けてから、「双子・三つ子出産のために、病院はどうする?」という問題に直面することが多いでしょう。実際、多胎の妊娠と判明したママの多くは、個人病院からNICU(新生児集中治療室)の設備がある大学病院、総合病院などへ転院しています。
【二繊毛膜性の双子の場合】個人病院での対応が可能な場合も
双子の妊娠の場合、膜性診断を行った結果、リスクが比較的少ないとされる二繊毛膜性(にじゅうもうまくせい)であれば、個人病院で出産まで診てもらえることもあります。毎日多くの診察を抱える大学病院・総合病院よりも、双子・三つ子の妊娠・出産の特性を熟知した個人病院で診てもらうほうがいい場合も。ただし、医師や助産師などが双子の妊娠・出産の特性を理解した上で、経過をていねいに観察できることが条件です。加えて、トラブルが起こったときにすぐに受け入れてもらえる医療機関があるか、常にその医療機関と連携がとれているかなど、医師としっかり話し合い、気がかりを解決することが必要です。
【一絨毛膜性の双子の場合】母子の管理ができる病院へ
一絨毛膜性(いちじゅうもうまくせい )の双子は、胎盤の中に赤ちゃん2人の血管の共有部分があることで、二絨毛膜性の双子に比べてトラブルが起こりやすくなります。そのため、母体のトラブルに対応でき、新生児医療の設備も整った大学病院や総合病院で管理していくのが一般的です。
【三つ子の場合】リスクの高い三つ子は医療設備の整った病院を
ママのおなかの中に、3人の赤ちゃんが正期産(妊娠37~41週で出産すること)の時期までとどまることは、物理的に困難です。そのため、早産とされる時期に生まれることが多いので、小さく生まれた赤ちゃんのための医療設備が整った病院を選ぶことが基本です。
三つ子はリスクが高いため、転院が必要と医師が判断すれば、トラブルが起こる前、あるいはトラブルがまだ小さいうちに、緊急時にも対応ができる地域の中核病院などへ転院となることが多いです。
転院した場合は、医師や助産師などのスタッフに小さなことでも相談し、不安を解消していきましょう。病院側との信頼関係を積極的に築いていくことが大切です。
双子・三つ子の妊娠の見守り方は?
双子・三つ子の妊娠は、単胎妊娠より健診の頻度が多く、トラブルの内容によっては、ある時期から「管理入院」をするなど、一般的な出産までの流れと少し異なります。
※ここでは、横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センターを例に、流れを説明します。経過の見守り方は病院によって異なります。
早産を防ぐため「子宮の張り具合」をこまめに観察
本来、赤ちゃん1人を育てていくはずの子宮に、赤ちゃん2人・3人が育っていくので、早い時期から子宮はいっぱいになります。早い時期から大きくなる子宮は張りやすく、赤ちゃんが子宮の容量いっぱいに育つと、必然的に赤ちゃんは外に出ようとするのです。そのため、単胎の場合に比べて、どうしても早産になりやすいといえるでしょう。
早産は、場合によっては赤ちゃんに深刻な影響を与えることもあります。ママにはっきりした自覚症状がなくても、頻回に診察を受けることで、早産の兆候をキャッチできることも。そこで適切な処置を行えば早産を避けられる場合もあるため、「早産を予防する」ことを主眼として経過が見守られます。
赤ちゃんの膜性診断を行ってタイプをチェック
膜性診断は、遅くとも妊娠14週までに行います。ただし、診断しても膜性タイプが不明のケースも。その場合は、リスクの高い一絨毛膜性として、見守っていくことになります。
妊婦健診は2週間に1回くらいです。健診の度に、超音波検査を行います。妊娠高血圧症候群(妊娠時に高血圧となる症状)、早産兆候などがないか、赤ちゃんの発育具合、羊水量などをチェックします。
入院時期はケースによって異なります
【一絨毛膜性の双子の場合】
リスクが高めとされるので、妊娠28週ごろからすべてのママが「管理入院」となります。早産や双胎間輸血症候群(※参考:双子・三つ子ならではの妊娠中のトラブルって? どう対処する?【専門家監修】)などのトラブルが起こらないよう、病院で見守るためです。
【二絨毛膜性の双子の場合】
必要に応じて入院することもありますが、基本的には外来での健診で経過を見ていきます。
【三つ子の場合】
妊娠24週ごろから「管理入院」となります。
入院後(二絨毛膜性の双子の場合は36週ごろ)に、分娩時期・方法(帝王切開か経膣分娩か)を検討します。それぞれのリスクなどの説明を受け、医師と相談して決定しましょう。
出産時期は、双子の場合は妊娠37週ごろ、三つ子の場合は妊娠34週ごろが多く、単胎の場合より早めです。出産までの流れは病院によって異なるため、妊娠初期のうちに確認し、妊婦生活をイメージしておくことが大切です。
健診や検査は単胎より多め。慎重に経過を観察します
双子・三つ子の妊娠は、リスクがあることを踏まえトラブルを未然に防げるよう、健診や検査が多く行われます。早産兆候、合併症の有無など、しっかり診察していきます。
妊婦健診は一般的に2週間に1回ほど
双子・三つ子の場合、出産予定日が決定したら、妊婦健診は初期の段階から2週間に1回くらいの間隔が一般的。単胎の場合、多くは妊娠6ヶ月までは4週間に1回、7~9ヶ月で2週間に1回くらいなので、多胎妊娠の場合はよりていねいに見守っていくことがわかります。
リスクが比較的少ない、二絨毛膜性の双子の場合、経過が順調なときは、3~4週ごとに1回、という間隔になることもあります。
36週以降になると、双子の種類にかかわらず、健診は1週間に1回となります。ただし、何かトラブルが起こった場合は、さらに頻回に受診することが必要となってくるでしょう。
超音波検査で膜性診断を行います
双子・三つ子など多胎妊娠ならではの検査は、妊娠初期(遅くとも妊娠14週まで)に行われる膜性診断です。
超音波検査で調べ、膜性がどのタイプかによって、見守り方やトラブルを予防する方法を探ります。
妊婦健診で行うことは以下の内容です。単胎に比べて、より頻回にチェックしていきます。
【妊婦健診で行うこと】
・問診
・内診
・体重測定
・血液検査
・尿検査
・腹囲・子宮底長測定
・超音波検査など
※腹囲、子宮底長の測定は、超音波検査を毎回施行している場合は必須ではありません。
超音波検査は毎回行い、しっかり確認
超音波検査は、赤ちゃんのトラブルを早く発見するために欠かすことのできない検査です。
病院によっては、通常の超音波検査とは別に、より精度の高い器械を使って、へその緒の付着部位の確認や赤ちゃんの体の様子などを精査することもあります。
【超音波検査から診断すること】
・赤ちゃんの推定体重
・羊水量
・赤ちゃんの臓器の様子
・ママの子宮頸管(けいかん)の長さ(短くなってくると出産が近い)
・ママの内子宮口の開き具合
・早産兆候 など
【とくに妊婦健診でチェックすることはこの5つ】
1. 早産兆候
子宮頸管の長さが、妊娠を継続するのに十分かどうかを超音波検査で確認。また、おりもの検査などで、早産につながるような細菌がいないかもチェック。
2.妊娠高血圧症候群の兆候
血圧が高くなっていないか、尿タンパクが出ていないかなど、妊娠高血圧症候群の兆候がないかを確認。発症した場合、安静に過ごし、降圧剤を使用します。
3. 妊娠糖尿病の兆候
健診時の尿糖検査、採血による通常の食事後の血糖値検査のほか、決められた量の糖をとったあとに血糖値を調べる糖負荷試験が行われることもあります。
4.羊水量
超音波で、それぞれの赤ちゃんの羊水量を確認。バランスに変化が生じているときは、トラブルの前兆の可能性も考え、さらに詳しく検査をすることもあります。
5.赤ちゃんの大きさのバランス
赤ちゃんたちの間で血液の行き来がある場合、1人が大きくなりすぎ、もう1人の発育が阻害される、双胎(そうたい)間輸血症候群(※参考:双子・三つ子ならではの妊娠中のトラブルって? どう対処する?【専門家監修】)を起こすこともあるので、超音波などで確認します。
赤ちゃんが双子や三つ子の多胎と判明したら、万が一のときでも対応できる病院をすぐに探しましょう。妊婦健診の頻度が多くなるので、通いやすさも選ぶポイントに。ママの不安をできるだけ減らすことが大切なので、健診内容や診察内容などで気になることがあったら、医師や看護師に質問して解決しましょう。
監修/青木 茂先生 取材・文/ひよこクラブ編集部
青木 茂先生(あおき しげる)
Profile
横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター 産科担当部長。1995 年、横浜市立大学医学部卒業。2010年より横浜市立大学付属市民総合医療センター総合周産期母子医療センターに勤務。2015年より現職。
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