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産後パパ育休制度の導入で、日本の子育てはどう変わる?パパの産後うつなど新たな課題も!【緊急フォーラムリポート】

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泣く赤ちゃんに疲れたアジアの両親
●写真はイメージです
kazuma seki/gettyimages

2022年、国内で生まれた子どもの数は、統計がある1899年以降、初めて80万人を割り、79万9728人でした。想定より約10年も早く少子化が進んだと報道されており、少子化対策、産み育てやすい社会の実現のために、男性育休が注目されています。
そうした中、2023年3月初旬、2022年10月からスタートした産後パパ育休制度による男性育休取得促進についての緊急フォーラム(主催・NPO法人ファザーリング・ジャパン)が開催されました。産後パパ育休制度による新たな課題などについての講演内容の一部をリポートします。

育休中「話し相手がいない」と孤独を感じるパパも

フォーラムの名称は『第4波!男性育休ムーブメントで、パパの家庭参画は本当に定着するのか!?』です。NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事 安藤哲也さんは、「これまでパパの育休については、2010年にイクメンが新語・流行語大賞をとったり、2020年に国会議員の小泉進次郎氏が育休を取得するなど、3つの波が起きています。しかし残念ながら、大きな波には至っていません。
2022年10月からスタートした産後パパ育休制度が、4回目の波になりますが、この波を確かなものにしたくて、今回のフォーラムのタイトルを第4波とした」と言います。

第1部の基調報告では、「ファザーリング・スクールの現場から見えるパパたちの理想と課題」というテーマでファザーリング・ジャパン理事 池田浩久さんが、パパたちの現状について話しました。池田さんは4人の子のパパでもあります。

「育休取得を予定・検討しているパパたちは取得するタイミング・伝え方に悩んだり、なかには勤務先に言い出すことができない人もいるようです。

育休を取得したパパからは『話し相手がいなくて孤独』『家族関係が変わってしまった』『パパ友がほしい』という声も届いています。こうしたことがパパの産後うつや育児中の孤立につながっていると考えられます。

また育休から復帰したパパからは『復帰後、働き方が改革されない』『復帰支援が得られない』『子育て、家事・仕事の両立に悩む』という意見も聞かれます。
こうした課題には、
①企業が取り組むこと
②自治体・地域で取り組むこと
③パパ本人が取り組むこと
に分かれます。
パパ本人が取り組めることとしては、パパ同士のピアサポートの場に参加するのも一案です。そうした場に参加することで、育児中の孤立が防げたり、子育てが楽しいと思えるきっかけになると思います」(池田さん)

パパの育休が普及すると、パパの産後うつの増加が新たな課題に

国立成育医療研究センター 研究所政策科学研究部部長 竹原健二先生は「父親の産後うつについて」講演しました。竹原先生は3人の子のパパでもあり、自身も乳幼児期の子育ての大変さと、父親への支援がまったくないことを実感したそうです。

パパが育休を取って子育てをすると、ママの負担の軽減や良好な親子関係、夫婦関係の構築などが期待できるといわれています。しかし、なかにはうまくいかずに産後うつを発症するパパもいるそうです。

「パパの産後うつのリスク要因は、ママの産後うつのリスク要因とほぼ同じで、
①育休を取ったことで収入が減る
②育休による就労状況の変化
③周囲からの支援不足
④夫婦関係の変化
などが考えられます。
パパが産後うつになると、育児の質・量の低下、虐待リスクの増加、赤ちゃんとの愛着形成が築きにくくなる、ママのメンタルヘルス不調につながりやすいなどの影響も出てきます」(竹原先生)

パパの産後うつの問題は、アメリカやイギリスでも課題となっていると竹原先生は続けます。

「2010年にDave先生らが、イギリスの15年分の診療データをもとに、抑うつと診断されたもしくは抗うつ薬の処方を受けた産後ママ、パパの産後うつの発症率について発表しています。
それによると産後1年間で、産後うつを発症したパパは100人中3.56人/年で、産後12年間を平均した発生頻度の2.69よりも高いことが示されました。産後1年間という期間だけ発症者が多いです。ママの産後うつに至っては、パパの産後うつの2倍以上でした」(竹原先生)

また2016年の厚生労働省の国民生活基礎調査によると、1歳未満の子どもを育てている夫婦3514世帯を対象に調べたところ『夫婦のどちらかにメンタルヘルスの不調のリスクがある』と答えたのは15.1%。『夫婦の両方にメンタルヘルスの不調のリスクがある』と答えたのは3.4%でした。

「夫婦いっしょにメンタルヘルスの不調になると、子育てへの影響がかなり心配です。
この調査は、産後パパ育休制度がスタートする以前に行っているので、産後パパ育休が本格化すれば、パパの産後うつは増加傾向になる可能性もあり、注視する必要があるでしょう」(竹原先生)

2022年、厚生労働省の研究班が、パパたちに育児のモヤモヤについて聞いた調査では、「妻のイライラの原因がわからない」「妻が自分にどんな家事を求めているのかよくわからない」など、夫婦間で解決できる問題がある一方で、「パパへの育児支援が整っていない」「パパの育児に関する情報がママに比べて少ない」など、社会として取り組まなくてはいけない課題もあったと竹原先生は続けます。

「私は、パパの産後うつ、ママの産後うつ、父親支援、母親支援と各論で対応するのではなく、世帯全体を対象に健康を支えるようなしくみを考える必要があると思います」(竹原先生)

育休中に赤ちゃんを虐待したパパが逮捕。パパ育休の課題とは!?

2022年2月、大阪市で育休中の父親が生後数カ月の次男の頭部など17カ所を骨折させたとして、傷害容疑で再逮捕されました。父親は育休中の2021年6~8月に自宅などで、赤ちゃんに暴行を加えたようです。父親は「なぜ子どもが骨折しているかわからない」と供述しているものの「7月ごろから妻が体調不良で、自分1人で育児をする時間が多かった」とも言っています。

ファザーリング・ジャパン代表理事 安藤哲也さんは、フォーラムの最後、以下のように締めくくりました。

「この痛ましい虐待事件が起きたのは、産後パパ育休制度がスタートする前です。
産後パパ育休制度が普及し、育休を取得するパパが増えると、パパの産後うつや育休中の虐待といった、新たな社会問題も出てくるのではないかと懸念しています。
今は、パパの育休取得率に目が向けられていますが、私は育休中、どんなふうに過ごすのか、パパのメンタルヘルスを含めて質が求められる時期に来ていると思います」(安藤さん)

取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

NPO法人ファザーリング・ジャパンでは、パパの産後うつや育休中の子どもへの虐待などを防ぐには、パパ同士のネットワーク作りが一つのカギになると言います。

NPO法人ファザーリング・ジャパン丨笑っている父親になろう (fathering.jp)

●記事の内容は2023年3月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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