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東京都がコロナ禍での出産に10万円分の現物支給。その効果は?【経済学者に聞く】

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ハートのシンボルを持つ人々
※写真はイメージです
itakayuki/gettyimages

コロナ禍で世界中で出生数が急減したことを受け、子育て支援策を打ち出す国が出始める中、東京都は独自に出産応援事業を始めました。少子化対策として効果は出るのでしょうか。また、コロナ禍の今、国が最も力を入れるべき子育て支援策は何なのでしょうか。結婚、出産、子育てなどを経済学的に研究している、東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎先生に聞きました。

コロナ禍に出産した都内の家庭に、都が10万円分の育児用品や子育て支援サービスなどを提供

「東京都出産応援事業」は、「コロナ禍で子供を産み育てる家庭を応援・後押しするめに、10万円分の育児用品・子育て支援サービスなどを提供する」というもの。令和3年4月から事業がスタートしました。そこで、東京都の担当者に内容について聞きました。

<対象者>
【1】令和3年1月1日~3月31日に出産し、出生日および令和3年4月1日に都内に住民票がある世帯 
【2】令和3年4月1日~令和5年3月31日に出産し、出生日に都内に住民票がある世帯
*いずれも世帯収入の額による制限はなし

<利用方法>
住民票のある区市町村を通じて、10万円相当のポイントが使用できる専用IDを記載したカードを対象世帯に配付(ご本人様からの申請は不要)。

<ポイントと交換できる商品>
食料品:ミルク(粉、キューブ、液体)、離乳食など
日用品:紙おむつ、衣類など
育児用品:抱っこひも、ベビーカー、チャイルドシードなど
そのほか:ベビーシッター、家事代行サービス、お掃除ロボットなど

※専用IDを記載したカードに記載されている二次元コードから専用WEBサイトへアクセスしてください。
詳細は、現在お住まいの区市町村の東京都出産応援事業担当窓口にお問い合わせください。
事業の詳細については、東京都福祉保健局のホームページまたは東京都出産応援事業コールセンター(℡0120-922-283)へお問い合わせください(開設時間:午前9時~午後6時/年中無休(年末年始を除く))。

東京都福祉保健局のホームページ

(東京都福祉保健局 少子社会対策部事業調整担当課長 青山佳司さん)

――今回の東京都の支援は現金ではなく現物支給です。この点について、経済の専門家、山口先生にお話を聞いてみたいと思います。先生はどうお考えですか。

山口先生(以下、敬称略) 現金支給は使い勝手がいい反面、子育て支援につながらない使い方をされても止めることができません。確実に子どものために使ってもらえるという点では、現物支給は現金支給より優れています。新型コロナによる経済的困難がある中で子育てが始まる世帯にとっては、10万円分の育児用品がまかなえるということは、非常に助かる支援になるでしょう。一方、経済的な打撃を受けていない世帯も、東京都からの“ギフト”ですから、赤ちゃんのために堂々と使ってください。

コロナ禍での出産育児支援の拡充を図る国が増える中、日本は…

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界的に出生率が急減したようです。この状況を食い止めるために、各国や地域がさまざまな子育て支援策を打ち出しました。以下にその例を紹介します。

・イタリア:子ども1人当たり月250ユーロ給付(妊娠7カ月から21才まで)
・フランス:出産時の父親の休暇日数を現行の2倍の28日に
・シンガポール:第2子への補助を従来比の5割増に
・韓国:2022年まで出産時一金として200万ウォン、1才まで毎月30万ウォンを支給
・香港:産休を従来比4週間延長
・日本:派遣型ベビーシッターサービスの利用補助を拡充
(日本経済新聞4月9日記事より)

――現金を支給する国、育休などの休暇を増やす国など、支援方法はさまざまですが、それらと比べると、日本の支援策はとても頼りないように感じます。

山口 そのとおりですね。コロナ禍での出産育児支援として目玉となるような国策は出てきていません。

――2020年1月と2021年1月の出生数を比べると、日本は14%減ったと報道されていました。コロナで出生率が急減したのを受け、世界のさまざまな国や地域が出産育児支援の拡充を進めているのに、なぜ日本は何もしないのでしょうか。

山口 コロナ禍での対策に限らず、日本の子育て支援策は常に貧弱で、子育て支援にかける資金は対GDP比で見ると、ドイツ、フランス、北欧の半分以下という状況が続いています。いまだに「子どものことは家庭で解決するべき」という考えが、政治家の中にあるからです。少子化に歯止めをかけるには、「子どもは国や地域で育てるもの」という視点が必要なのに、それができていないのです。

――新型コロナの不安の中、国が子育て支援に力を入れてくれないとなれば、出生率が低下するのは無理のない話だと思います。

山口 非常に残念な話ですが、子育て世代が何を求めているのかを理解していない政治家が多いように感じています。この状況を変えるには、「子どもがほしいけれど、国が応援してくれないから不安で産めない」という当事者の気持ちを、政治家に届けることも必要です。
最近の日本は『政治的な意見を述べるのは、はしたないこと』という風潮が見られますが、国民が自分たちの希望を政治家に伝えるのはごく普通のことです。自分のSNSで発信する、政治家のSNSにコメントを書くなど、できそうな方法で意見を発信してみてはいかがでしょうか。

コロナ禍での最大の子育て支援は、ワクチン接種の遅れを解消すること

――新型コロナによる出生率の低下を食い止めるために、最も効果的な対策は何だと思われますか。

山口 新型コロナを収束させること、これに尽きると思います。つまり、ワクチンを普及させることです。今、目の前にある不安や心配のほとんどは、それで解決するはずです。実際、ワクチン接種が進んで行動制限が緩和され始めた国では、コロナ前の生活に戻りつつあり、景気も上昇してきています。
日本が今やるべきなのはワクチン接種の遅れを解消し、正常な経済活動ができる状態に戻すこと。そして、安心して出産や子育てができる環境を取り戻すこと。これが最大の子育て支援になると私は考えています。

お話・監修/山口慎太郎先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

東京都の出産応援事業は、コロナ禍での子育てを支援するという意味で一定の効果がありそうです。また、すべての子育て世帯が安心して子どもを育てられる環境を取り戻すために、ワクチン接種の加速化も期待されるところのようです。

山口慎太郎先生(やまぐちしんたろう)

子育て支援の経済学

山口先生の近著。多くの人が働き方や家族の在り方を模索する今、必要なのは「子育て支援=次世代への投資」という考え方。そのエビデンスが詰まっています(日本評論社)

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