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【経済学者に聞く】東京のベッドタウンで出生率が上昇傾向。その理由は?

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歩く親子
※写真はイメージです
maruco/gettyimages

東京に隣接する埼玉、千葉、神奈川は、東京と同様に出生率は低めですが、「東京のベッドタウン」といわれる市で、出生率が上昇しているようです。その要因について、結婚、出産、子育てなどを経済学的に研究している、東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎先生に聞きました。

「ちょっと郊外」は子育て世帯にとって魅力的!?

6月に厚生労働省が発表した2020年の都道府県別出生率を見ると、東京は最下位(47位)の1.13。千葉県は40位で1.28、埼玉県は41位で1.26、神奈川県は43位で1.25と、1都3県の出生率は総じて低くなっています。そんな中、「東京のベッドタウン」といわれる市の出生率が上昇しているようです。

――「ベッドタウン」の出生率が上がっているのは、どのような理由が考えられますか。

山口先生(以下敬称略) まず考えられるのは地価や家賃の安さだと思います。東京と同じローン(家賃)を払うつもりなら広い家に住めるし、東京と同じ広さならローン(家賃)を節約できる。それがいちばんの魅力でしょう。

実は子育て世帯がある地域に集まるきっかけとなるのは、マンション建設だといわれています。東京都港区や中央区に子育て世帯が急に増えたのも、タワーマンションの建設ラッシュがきっかけでした。現在、都内では中央区と千代田区の人口の伸びが顕著ですが、この2つの区は現在、マンションの建設が盛んに行われています。

――ベッドダウンは子育て環境としてはいかがでしょうか。

山口 ベッドタウンでのびのびと暮らしつつ、東京でのイベントなどにも参加できる距離に住んでいるわけなので、子どもが体験できることの幅が広がるという意味では、子育て環境としてはいいのではないでしょうか。
そして人口の流入が増えている自治体は、子育て世帯に配慮した施策を取り入れているとは思います。しかし、近隣の自治体は、施策をお互いに取り入れ合うことが多いので、その自治体の子育て支援策だけが飛びぬけて素晴らしい、ということにはならないものです。

「子どもの人口が増えている市は、さぞや暮らしやすいに違いない」と過度の期待を抱くと、がっかりすることになるかもしれません。

働き方によっては郊外での暮らしが負担になることも…

内閣府が2021年6月に発表した「第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、2021年4~5月の地域別テレワーク実施率は東京23区が53.5%、全国が30.8%、地方圏が21.9%でした。

――都心に通勤するママ・パパが、ちょっと郊外に住むことを選択できるのは、テレワークができるようになったからでしょうか。

山口 「週5回の長距離通勤はつらいけど、週1~2回程度で済むなら、ちょっと郊外に住んでもいいか」と考える人はたしかにいるでしょうね。

しかし、政府の発表ほどテレワークが定着していないのが実情です。前述のアンケートは、出勤中心(50%以上)で定期的にテレワークを併用(12.1%)、基本的に出勤だが不定期にテレワークを利用(11.3%)も含んでの53.5%なので、数字から受ける印象ほどテレワークが浸透しているわけではないんです。別の調査結果だと、東京区部で25%、それ以外の地域では15%程度の浸透率でした。

――多少、家賃が安くなったり、子育て支援がよくなったりしても、ママ・パパの働き方によっては、通勤時間が長くなることで子どもと過ごす時間が減ってしまうなど、デメリットが大きくなる可能性もあるわけですね。

山口 そのとおりです。都心が子育てしやすい場所とは言いきれない面もありますが、通勤時間が長くなる郊外に住むことが、ベストな選択ではない家庭も当然あるわけです。
郊外に住むことにメリットを感じられるかどうかは、ママ・パパの働き方によると思います。

子どもだけでなく、自分にも夫婦にも暮らしやすい場所とは?を考えよう

――住む場所は子どもが生きていく拠点となるものなので、ママ・パパの仕事の事情で転居が必要になるケースを除き、子育て世帯は一度住む地域を決めたら、そう大きな移動はしなくなることが多いと思います。都心に住み続けるか、郊外へ引っ越すかを検討するときに、ママ・パパが考えるべきことはなんでしょうか。

山口 どういう子に育てたいか、どんな経験をしてほしいか、夫婦でよく話し合うことが大切だと思います。また、「子どものためにはここがベストだから」と自分のことをないがしろにして決めると、のちのち、つらくなってしまうことがあるかもしれません。子どもだけでなく、自分がどう暮らしたいか、夫婦としてどんな人生を送りたいのかを考えることも大切です。
「今」だけでなく「これから」も見据えて、自分たちの家庭が根を張って生きていく場所を見つけてほしいと思います。

取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

お話・監修/山口慎太郎(やまぐちしんたろう)先生 

ちょっと郊外と都心のどちらが暮らしやすいのかは、家庭によって違います。この機会に夫婦で話し合ってみるといいかもしれません。

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