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出生率が「西高東低」の理由は?新型コロナの影響は?【経済学者に聞く】

新生児の足
※写真はイメージです
shirosuna-m/gettyimages

日本で長年問題になっている合計特殊出生率(出生率)の低下。新型コロナウイルスの影響で、さらに低下することが懸念されています。しかも、2020年の都道府県別の出生率を見ると、都道府県によってかなり差があるようです。この差はどこからきているのでしょうか。結婚、出産、子育てなどを経済学的に研究している、東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎先生に聞きました。

各地方の中心部の出生率が低くなるは当たり前!?

6月に厚生労働省が発表した『人口動態統計月報年計(概数)』によると、2020年の都道府県別合計特殊出生率(出生率)は、
1位 沖縄県1.86
2位 島根県1.69
3位 宮崎県1.68
と続き、47位(最下位)は東京都1.13でした。
1位から47位までの都道府県の順位を見てみると、関東以東の県は30位の山形県・群馬県1.41まで出てきません。

――出生率はかなりはっきり「西高東低」の傾向にあるようです。原因として考えられることはありますか。

山口先生(以下敬称略) 結論を先に言うと、わからないんです。戦前の出生率は「東高西低」だったんですが、だんだんその傾向は薄れてきて、2005年以降は逆に「西高東低」が続いています。東と西が入れ替わった理由も、納得できるような説明は今のところ見つかりません。

――西の府県のほうが子育て支援に力を入れている、というわけではないのでしょうか。

山口 自治体によって独自の子育て支援策を行っているところはありますが、都道県別の出生率に差が出るほど、子育て支援に差はないですね。

実は出生率を都道府県単位で判断するのは難しいんです。合計特殊出生率は「15~49才までの女性の年齢別出生率を合計したもの」ですが、都市部には進学や就職などでこの年代の女性が多く集まります。その中には、妊娠を希望したり計画したりする予定がない女性が相当数含まれますから、女性の数を分母とし、生まれた子どもの数を分子として計算すると、都市部の出生率が低くなるのは当たり前なんです。

――たしかに、26位 福岡県1.43、39位 大阪府1.30、44位 京都府1.22、45位 北海道・宮城県1.21と、各地方の中心となる府県は、出生率が低い傾向にありますね。

山口 地方から都市部に出てくるのは、男性より女性のほうが多いというデータがあります。地方では今でも男性上位の労働市場が残っているなど、女性が力を発揮できる場が少ないのが原因でしょう。これはこれで考えなければならない問題です。

出生率が低くても「都市部の力」は失われない

――新型コロナの感染防止策の一環として始まったテレワークが、今後も働き方の1つとして定着すると、都市部に住んでいなくても仕事ができる子育て世代が増えていくかもしれません。その場合、都市部の出生率はさらに下がり、高齢化が進んでしまうのではないでしょうか。

山口 新型コロナの感染拡大が始まってから1年半以上たちましたが、テレワークだけで仕事ができる人はかなり限定されています。やはり出社しないとできない仕事は多いので、都市部から子育て世代が劇的にいなくなる、という事態には今後もならないでしょう。
しかも、都市部には常に若い世代が流入してきます。「子どもの数が少ない=活力がない」とならないのが都市の力なんです。

――都市部には都市部にしかない魅力や力があるということですね。
政府は地方への移住支援事業を行っています。人口の地方分散を奨励しているということだと思いますが、日本の人口が減っている中での地方分散は、メリットがあるのでしょうか。

山口 人が集まれば地価が高くなる、家賃が高くなる、物価が上がる、道路や交通機関が混雑するなどデメリットはいろいろあります。子育て世代にとっては、保育園や学童保育施設の不足も心配材料ですね。しかし、人が集まることで経済が動き、イノベーションが起こります。つまり、都市に人が集まることは、最終的には国の発展につながるのです。

もちろん、都市部と地方のさまざまな格差は縮めていかなければいけないし、地方移住を考える人への後押しを国がすることも大切です。しかし、その一方で、都市部でチャンスをつかみたい人、自己実現をしたいと望む人の流れを止めるべきではありません。国はその両方を考えて政策を立てる必要があります。

コロナ感染予防からの地方移住。子育て世帯はどう考えるべき?

――東京、大阪などの大都市は新型コロナの感染者数がどうしても多くなるので、感染リスクを避けたいという思いから地方移住を検討する人も一定数いるようです。

山口 たしかに、地方移住を検討しているという人は、コロナ前より増えています。しかし、実際に移住した人は今のところ少数派でしょう。今後も地方移住者が急激に増えることはないと私は見ています。

――子育て世代がコロナをきっかけにして地方移住を検討する場合、どのようなことを考えるべきでしょうか。

山口 旅行ではなく永住を見すえて移るわけですから、人間関係のネットワークがとても重要になります。今までなんのかかわりもなかった場所に、家族そろって移住するのはかなりの冒険ですね。通常はどちらかの実家がある地域に移住することになるでしょう。移住というよりUターンに近い形でしょうか。親の近くに住めば子育てに協力してもらえるでしょうし、親の介護に備えるという面でも、メリットのあることだと思います。

そして、何より重要なのは家計経済の安定を考えること。たとえばオールテレワークで転職せずに移住できるのか、転職する場合は今と同程度の生活水準を確保できる仕事につけるのか、その点を慎重に考えなければいけません。

――地方移住は子どもにとってメリットがあると思われますか。

山口 「子どもは大自然の中でのびのび育てるのがいい」とよく言われますよね。もちろんそれは間違いではないですが、子どものタイプにもよるのではないでしょうか。美術館や博物館をめぐるのが好き、すごく打ち込んでいる習い事があるなどの子どもは、都市部で暮らすほうが、充実した日々を過ごせるかもしれません。
これは親にも言えますね。アウトドア志向なのかインドア派なのか。子どもだけでなく、親の暮らしやすさを考えることも忘れないようにしましょう。

ウイズコロナの時代、さまざまな生活変容が起こっていますし、これからも起こっていくでしょう。この機会を利用して、今の生活だけでなく、これからの生活も想像し、家族全員が幸せに暮らせる場所はどこなのか、夫婦で、親子で、話し合ってみるのはいいことだと思います。

取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

お話・監修/山口慎太郎(やまぐちしんたろう)先生 

出生率が高いから子育て世帯が暮らしやすい、低いから暮らしにくい、とは単純に考えられないようです。暮らし方は家庭によってさまざまで、幸せに暮らせる場所も家庭によって違うということのよう。今の生活とこれからのことを、家族で話してみるのはいいかもしれません。

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