脳の発達にいい「知的好奇心」は親子のお出かけで伸ばせる!育まれるコミュニケーション力や思考力とは【脳科学者】
子どもが未来を力強く生きていくために大切だといわれるのが「知的好奇心」。物事に興味を持ってワクワクする気持ちのことで、親子で動物園や水族館などにお出かけすることでもはぐくむことができるといいます。
ワクワクすることはどうして大切なのでしょうか。 小児の脳発達に詳しい、東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之先生に聞きました。「楽しいことはすぐに覚えられるけれど、楽しくないことはなかなか覚えられないでしょ?」と瀧先生は言います。
親子のお出かけで「知ることが楽しい!」という経験を
――子どもの知的好奇心をはぐくむことが大切なのはなぜですか?
瀧先生(以下敬称略) 好奇心を持っていろんなことにワクワクしながら取り組むことは、知識の獲得に非常に重要であるといわれます。脳の記憶をつかさどる領域である海馬(かいば)と、感情をつかさどる領域である扁桃体(へんとうたい)は、密接に機能的につながっています。ワクワクしながら取り組むことは、イヤイヤ取り組んだことよりも記憶に残りやすいのです。簡単にいうと、楽しいことはすぐに覚えられるけれど、楽しくないことは覚えられないということ。一夜漬けの勉強が身につかないのと同じです。
また、「知ることが楽しい!」と感じる体験により、五感が刺激されドーパミンが出て脳の活動が促進されます。ドーパミンが流れると脳は気持ちのよさを感じるので、新たなやる気を作り出すことにもつながります。小さいときに学ぶことが楽しいという気持ちができると、何事も興味を持って取り組む土台ができるでしょう。
――好奇心を刺激できるような動物園や水族館に親子で出かけることは、子どものどんな力になるのでしょうか?
瀧 動物園や水族館に親子で出かけたときに、絵本や図鑑で見たことがある動物や魚などの実物を目にすると、「これ知っている!」と親しみがわき、好奇心をぐんと伸ばします。また、実際の大きさや動き、音、匂いなどによって五感が刺激され、新しい発見や感動を得ることができます。
さらに、親子の会話の機会が多くなり、コミュニケーション力を高めることにもつながります。会話をすることは、言葉のやり取りだけではなく、相手の表情やしぐさ、声の抑揚などを見たり感じたりして、相手はどう考えているのか、自分はどう適切な行動をしたらいいのかを考えるなど、実はさまざまな力を使っています。これらの言語、感情認知、社会性などの能力が複合的に絡み合い、さまざまな脳の領域を強調して使います。このような力は、脳の発達においてとても大事ですし、コミュニケーション力が高い人は学業成績も高いという報告もあります。
ほかにも「キリンはどの国から来たのかな」「どんなえさを食べるのかな」と考えたり判断する思考力を高めるのにも有効だと考えられます。
子どもの興味や関心を伸ばす声かけとは?
――動物園や水族館では、子どもにどんな声かけをするといいですか?
瀧 子どものために声かけをしようと努力したり、勉強させようというよりは、私たち親自身が楽しめばいいと思いますよ。動物や魚を見て「大きいね!」「不思議な色をしているね」と伝えてあげたり、「どうしてこんな形をしているんだろうね」などと自分が感じたことを伝えてあげるのもいいと思います。子どもはさまざまな能力を模倣によって獲得します。親が楽しんで見たり学んだりする姿を見せることが、子どもの興味や関心を伸ばすことにつながります。
――子どもの質問に答えられないときはどうすればいいですか?スマートフォンでその場で調べてもいいんでしょうか?
瀧 もし、子どもの「どうして?」の質問に答えられないときは、一緒に調べましょう。わからないことを自分で調べるのは勉強の基本ですから、子どもがその基本の流れを習得することにもつながります。
疑問はその場で解決しないと忘れてしまうこともあるので、スマートフォンやパソコンを使って調べるのもいいと思います。ただ、ネットで調べたことはピンポイントの答えになってしまうので、時間的・精神的余裕があれば、帰宅後に一緒に図鑑を見て調べることをおすすめします。図鑑のいいところは、魚には硬骨魚類と軟骨魚類がいるとか、どんな仲間がいてどんな海に生息しているとか、そういった情報が体系立てて説明され、俯瞰(ふかん)的に見ることができるところです。家に帰ってから一緒に図鑑を見て調べてみて「なるほど、こういうことなんだね」と知識を共有できるといいと思います。
まずは親がいろんなことに興味を持って楽しむことが大事
――一緒にお出かけしても子どもが動物などに興味を示さない場合、ほかのものを見せたりしたほうがいいですか?
瀧 私たちの好みは意外と早いうちからできてくるので、働く車が好きな子は、昆虫にあまり興味を示さないということはあるかもしれません。ただ、“単純接触効果”といって、人は年齢にかかわらず見たり聞いたり触れ合ったりする機会が多い物事に対して、興味を持ち、好きになることがあります。子どもが興味を示さなくても、親が好きなら何度も行くのはいいと思いますよ。
私の母は絵が好きで、小さいころはよく展覧会に連れて行かれていました。一緒に見ているうちに、人を描いた絵と風景を描いた絵があるな、とか、リアルに写実されている絵とアレンジした抽象画もある、など幼いながらに理解して、いつの間にか私も絵が好きになっていました。親が何度も触れる機会を作っていると、子どもは興味がなかったとしても、案外好きになっていることはあります。
――水族館や動物園に限らず、親が好きなことを楽しみながら行うことが、子どもの興味関心を伸ばすことにつながるということですか?
瀧 そうですね。スーパーで一緒に野菜を見て買って料理をするとか、サッカーのドリブルの動画を一緒に見て公園でボール遊びをするとか、親子で一緒に楽しみながらできるといいですね。親が好きで楽しんでいる姿を見ると、子どもも「それは楽しいことだ」とわかり、模倣することから始まって、いろんなことにチャレンジしたり、好奇心を持つことにつながるでしょう。
取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
コロナ禍の今はなかなかお出かけも難しいかもしれませんが、アフターコロナにはぜひ子どもと一緒にいろいろなところへお出かけし、親子で楽しみながら調べたり体験したりしてみましょう。
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