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【女優・加藤貴子】子どもにうまく愛情を伝えられていないかも。愛着障害が心配…。専門家の回答は?

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子育て中は子どもを心配するあまり、つい子どものすることに干渉したり先回りして手を出してしまったりすることがあります。そんなとき気をつけたいことについて、2人の男の子のママである女優・加藤貴子さんが、発達心理学・感情心理学が専門の東京大学大学院教育学研究科・遠藤利彦先生に話を聞きました。
この連載では、加藤さんが気になる育児関連の悩みや気がかりについて専門家に聞いています。今回は第4回目。テーマは第3回に続く“アタッチメント”についてです。

愛着障害はレアケース。不安定なアタッチメントはいつでも修復できる

加藤さん(以下敬称略) 私はときどき子どもにうまく愛情を伝えられているのかな、と心配になることがあります。幼児期に親子のアタッチメント(子どもが不安なとき特定の誰かにくっついて安心感を得ること)がうまくいかなかった場合には、子どもは愛着障害になってしまう可能性があるのでしょうか。

遠藤先生(以下敬称略) 最近、「愛着障害」という言葉が広く使われていますね。人間関係がうまくいかないこと全般に対して使われる場合があるようですが、あまり適切ではないと私は感じています。発達心理学でいう愛着障害はめったに見られないレアケースなのです。子どもの欲求が無視され続けるような環境や、保護者が頻繁に変わるたらい回しのような状況、日本ではほとんどないと言えますが、たとえば赤ちゃん20人に対して大人1人がケアをするような例外的な施設での養育など、そういった極端に劣悪な環境の中で生じるのが愛着障害です。

おそらく一般的に愛着障害というイメージが持たれているのは、発達心理学では「不安定なアタッチメント」といわれる状態だと思います。不安定なアタッチメントとは、障害や病気ではなく、状態を指す言葉です。

加藤 不安定なアタッチメントの状態では、子どもにどんな様子が見られるんですか?

遠藤 不安定なアタッチメントにはいくつかタイプがあるといわれます。1つは“回避タイプ”といわれ、恐怖や不安を感じても、泣いてママやパパにくっつこうとしない傾向があるものです。泣いてアタッチメントを求めたときに「なんで泣くの」「うるさいからあっちへ行って」などかえって親から遠ざけられてしまう経験から、恐怖や不安を感じたときにも泣こうとしないのです。
親がどこかにいってしまうより、見えるところにい続けてもらえたほうがまだ安心なんですね。そういう行動を生後12カ月〜18カ月という早い段階で示すこともあります。

ほかに “アンビバレントタイプ”というものもあります。アンビバレントとは「相反する感情を持つ」という意味です。親にくっついて離れず、ずっとぐずっていたり怒りをぶつけたりします。このタイプの子どもは、親の気分や都合で受け入れられたり受け入れられなかったりと、気まぐれな養育にさらされた経験があると考えられます。子どもからすると、いつどうすれば確実にくっついて安心できるかの見通しがつきにくいので、警戒心が強くなっているんですね。親にくっついても安心できなくて、親の気持ちを信じきれずぐずったり、自分を置いていかないで、と怒りをぶつけたりします。

恐怖や不安を感じたときに、だれかにくっつきたいのは人間に共通の欲求です。ただし、アタッチメントには必ず相手が必要で、相手が拒否すると成り立ちません。子どもは、親が受け入れてくれないとしても、その親の元でしか生きられません。だから自分の欲求にどう応じてくれるかによって、自分のくっつき方を調整しているんですね。

加藤 もしそのような状態になってしまったら、どのタイミングで親子関係が修復できるんでしょうか?

遠藤 不安定なアタッチメントの状態は、親の対応次第でいつでも修復はできると考えます。その子の気持ちを受け止めて応えてあげれば、基本的には何才からでもいい方向に修復できるでしょう。しかし、年齢が上がるほど難しくなるのも1つの事実なので、早いタイミングに越したことはないかもしれません。

親は子どもの成長の黒子であり応援団でもある

加藤 乳幼児期の安定したアタッチメントが子どもの心の成長の土台を作るために大切なんですね。

遠藤 はい。子どもが「不安だな、怖いな」とシグナルを送ってきたらできるだけ受け止めて応えてあげることで子どもは安心感を得ることができます。

気をつけたいのは、親はできるだけ子どもにいいことをやってあげたいと思うものですし、その気持ちは否定されるべきではないですが、あまりにもその気持ちばかりが強くなってしまうと、つい先回りしたり、後ろをついて回ったりしちゃいますよね。でもそれでは、子どもの1人でいられる力、つまり自律性の発達はうまくいきません。

子どものシグナルを受け止めると同時にもう一つ大切なのは、子どもがシグナルを送ってこないときには、子どもがやっていることにできるだけ踏み込まないでいるということです。踏み込まないというのは何もしないのではなく、黒子であると考えるといいかもしれません。

加藤 黒子ですか?

遠藤 親は子どものため、自分が何かしてあげないといけないと思いがちですが、親には子どもの環境を整えてあげる役割もあります。黒子となって子どもがより楽しく遊び、安全に生活できるように環境を整え、成長を支えるという気持ちを持つことです。

そして応援団として子どもにエールを送り続けることも大切。子どもが何か頑張っているときに、もどかしく感じて「ああやればいいのに」「こうすればうまくできるのに」と、手伝ってあげたいと思うかもしれませんが、ぐっと思いとどまりましょう。子どもって、よく「見て」って言いますよね。「ここからジャンプするから見てて」とか。あれは、応援してねというメッセージなんですね。「見てね」というときにただ見てあげればいいんです。

加藤 うちの子どもたちはよく「うまくできないからやって」って言うんです。欲求に応えてあげることも一つの愛情だと思ってやってあげて、長男にはやり過ぎちゃったかも、という懸念が…。「見ててあげるからやってごらん」と促すのでもいいのでしょうか?

遠藤 「見ててあげるからやってごらん」というのはとてもいいと思いますよ。子どもが自分で何かしようとしているなら、声かけをしてあげる、ただにっこり見てあげる。それが応援団の役割です。

親と子はよきパートナー。お互いの強みを生かせる道を見つけたい

加藤 子育てしていると、きょうだいやお友だちと比べてしまったり、不安からいろんな情報を集めてはあれこれ取り入れて、かえって子どもをがんじがらめにしてしまっているんじゃないかというときがあります。

遠藤 今は、いろんな子育ての情報がはんらんしています。ネットで検索すれば、子どものIQが高くなるためにどういう声かけをすればいいか、なんていう情報も得られますね。それを否定はしませんが、情報をそのまま取り入れてうまくいくかというと、うまくいかないことが普通なんだと思います。なぜかというと、人間は一人一人違うからです。親も子も、好きも嫌いも得意不得意も違うわけです。

だから、親自身と子どもの個性の組み合わせの中で、お互いがうまくいくような形って何かなと考えるのが自然でしょう。自分の強みを生かして、自分の子どものいいところを引き出すにはどうすればいいかな、と見つけていくのが、子育ての楽しみかもしれません。一見大変なようですが、それぞれの親子に固有のいい形が見つかったときには、親も子も、充実した楽しい気持ちで人生を送れるのではないでしょうか。

加藤 親があれもこれもしなくちゃ、ではなくて、お互い成長するパートナーであればいいという考え方だと気が楽になるかもしれませんね。よき親であろうとすると責任を感じてしまいますが、よき理解者・パートナーであろうとするなら、少しハードルが下がり、身構えずにいられそうです。今までの私は木を見て森が見えていなかったように感じます。

遠藤 子どもから教えてもらうという気持ちを持ってもいいと思います。たった一つ、これをやれば完璧だという理想的な子育ての形なんてあり得なくて、それぞれの形を見つけていければいいと思います。


お話/加藤貴子さん、遠藤利彦先生 監修/遠藤利彦先生 撮影/アベユキヘ 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

親は子どものために何かしてあげようと思ってしまいますが、まずは子どもの気持ちを受け止め、子どもを応援してあげることが大事だそうです。子どもの人生をサポートするパートナーとして、親子でお互いの強みを見つけられるような関係性を築きませんか。

※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

遠藤利彦(えんどうとしひこ)先生

加藤貴子さん(かとうたかこ)

PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。

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