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<警鐘>厚労省アドバイザリーボードも提言。表情が判読しにくいマスク着用は子どもの成長のデメリットに【小児科医】

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マスクを着用したアジアのお母さんと娘
※写真はイメージです
maruco/gettyimages

日本で新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナ)が流行し、すでに2年半がたちます。長期間にわたり、感染対策を行うなかで「マスクの着用や黙食など徹底した感染対策が、子どもたちの成長や生活に影響を及ぼしかねない」と、一部の小児科医から声が上がっています。富山大学附属病院小児科 種市尋宙先生もその1人です。小児科医が抱く、コロナ禍の子どもたちへの不安などについて話を聞きました。種市先生は、富山市立学校新型コロナウイルス感染症対策検討会議座長を務め、富山市で子どもの感染対策に当たっています。

マスクで相手の表情がわからないのは、乳幼児の健やかな成長に影響が

長引くコロナ対策が、子どもたちの心に与えた影響は図り知れません。小・中・高校生では自殺者や不登校の急増だけでなく、摂食障害なども増えていると言います。乳幼児では、コミュニケーションへの影響が心配されています。

――先生が心配している、コロナ禍での子どもたちへの影響について教えてください。

種市先生(以下敬称略) まずはいきなりで申し訳ありませんが、自殺の問題です。小・中・高校生の自殺は2020年過去最多で499人です。ついで2021年が473人と2番目に多い結果となっています。過去ワースト1、2がこの2年です。これがコロナ禍で起きている日本の現実です。

また、海外、国内とも子どもたちの摂食障害が増えています。2021年オーストラリアのパース小児病院の調べでは、コロナ禍で一般入院患者数は減少したものの、拒食症で入院した子どもが倍増しています。米国の小児救急外来でも同様に摂食障害、チックの受診が増加したと報告されており、日本国内でも多くの地域で倍増、激増と報告されています。

子どもたちのメンタルの問題とも関係があると疑っていますが、富山市立学校新型コロナウイルス感染症対策検討会議調べでは、小・中学生の給食の残食率が急増しています。コロナ禍の2020年度、2021年度と例年を比較すると、残食率は約2倍です。コロナ禍に入ってから、子どもたちのおなかに入るはずのエネルギー源が残され、捨てられています。

富山市立の小・中学校の給食の残食率

富山市立学校新型コロナウイルス感染症対策検討会議の調査では、新型コロナ対策がとられ始めた2020年度から、小・中学校ともに給食の残食率は急増。

どちらも新型コロナ対策との因果関係は明らかになっていませんが、無関係とは考えにくいのではないかと感じています。

――乳幼児への影響について教えてください。

種市 乳幼児だけのデータはありませんが、2022年6月1日、新型コロナ対策を政府に助言する専門家組織(アドバイザリーボード)から、アメリカの調査結果を引用しマスクによって学校での感染を減らす効果は23%という発表がありました。
専門家組織ではマスクによって、子どもたちが相手の表情がわからないデメリットを考慮して、着用は場面で判断するべきと提言しています。
これは保育園の先生たちからも以前から出ていた意見ですが、マスクで相手の表情が見えないことが、どれほど乳幼児の成長に影響を及ぼすことか…。
乳幼児の心の発達への影響は、すぐには現れません。小児科医としてこれからのことを心配しています。

マスク着用がしっかりできる子は3割。子どもへの過剰な感染対策を見直して

2022年5月25日、厚生労働省は「マスク着用の考え方及び就学前児の取扱いについて」という資料を発表しています。資料によるとアドバイザリーボードで示された専門家の考え方を踏まえ、就学前の子ども(2歳以上)のマスク着用について、オミクロン株対策以前の取り扱いに戻すとしています。

――厚生労働省の資料によると「2歳未満は引き続きマスク着用は奨めない」「就学前の子ども(2歳以上)は、他者との距離にかかわらず、マスク着用は一律に求めない。マスクを着用する場合は、保護者やまわりの大人が子どもの体調に十分注意したうえで着用しましょう」と記されています。ママやパパの中には「本当に大丈夫?」と不安を抱いた人もいると思うのですが…。

種市 われわれがまとめたデータでは、しっかりマスクを着用できる幼児は3割程度です。感染対策につながるように適切にマスクを使用できる子は、そもそも少ないです。それを証明するかのように、2021年には各地でRSウイルスが大規模に流行しました。RSウイルスは新型コロナ同様に飛沫(ひまつ)感染するウイルスです。子どもたちはマスクをして対策をしていたにもかかわらず保育施設ではRSウイルスが大流行しました。ほかのウイルス感染症も各地域で小流行を繰り返しています。幼児にマスクをさせても感染対策としての効果は限定的であることを示しているのではないでしょうか。これまで、健康な幼児にマスクをさせてウイルス感染対策をするという発想は、われわれ小児科医にはありませんでした。さまざまなデメリットを背負わせながら、効果が定かではないマスクを子どもにさせている現状をいい加減に考え直す必要があるのではないでしょうか。社会の認識を改める必要があると考えています。

過剰なコロナ対策による、子どもたちへの影響を考える時期に来ていると思います。
世界中から周産期コロナ感染の恐れに関連する母親のストレスについての報告などが上がっています。親のストレスや不安が、子どもの発達や環境に多大に影響を及ぼすことは明らかです。
たとえば人が少なくて、人との距離が十分にとれる公園や広場では、親子でマスクをはずして、子どもをのびのび遊ばせるなど、コロナ前の生活を少しずつ取り戻してほしいと思います。

――熱中症対策としても、子どものマスクは不要と考えていいのでしょうか。

種市 幼児にとって適切な使用が難しく、感染対策としてほぼ意味がないという理由でマスクをつけさせる必要はないと思います。まして熱中症の危険性を予見できるこの状況でマスクをさせる根拠はほぼありません。多くの国々や機関でも推奨されていません。もしマスクをしているときは、子どもの様子をよく見てください。暑くて顔が赤くほてっているのにマスクをさせるのはとても危険です。

オーストラリアでは、2022年4月からインフルエンザが急増

種市先生によると、子どもにとって怖い感染症は、やはり新型コロナよりもインフルエンザやRSウイルス感染症で、とくに季節外れのインフルエンザの流行に注意が必要と言います。

――新型コロナ以外で、子どもたちが注意したほうがいい感染症はありますか。

種市 私は以前から言っていますが、子どもたちにとって怖いのは新型コロナよりも、インフルエンザやRSウイルス感染症です。
とくにインフルエンザは、2022年4月からオーストラリアで流行が始まっています。例年よりも1~2カ月流行が早いです。オーストラリアのインフルエンザの感染状況を見ると、明らかに子どもが多いです。南半球でインフルエンザが流行すると、日本を含む北半球でもインフルエンザが流行するといわれています。新型コロナの流行によって、感染症の流行は季節性がなくなっています。日本で夏にインフルエンザが流行してもおかしくない状況です。

――新型コロナよりもインフルエンザが怖いのはなぜでしょうか。

種市 オミクロン株の流行で、子どもたちにも新型コロナの感染者が増えましたが、無症状・軽症が圧倒的に多く、臨床症状はインフルエンザの半分以下です。インフルエンザの予防接種が始まらないうちに、国内でインフルエンザが流行すれば、子どもたちの間で瞬く間に感染が広がる危険性があります。またインフルエンザは、基礎疾患がなく健康な子どもでも感染すると急激な経過で亡くなったり、生涯にわたる後遺症をわずらうこともあります。2020年厚生労働省 人口動態統計では「年齢別死因順位および死者数」は、1~4歳、5~9歳ともにインフルエンザが5位でした。1~4歳は19人もの子どもが亡くなっています。コロナ禍なので例年に比べてこれでも少ないほうなのです。

年齢別死因順位および死者数

表は2020年 厚生労働省 人口動態統計より作成。

ママやパパには、国内のインフルエンザの流行にもアンテナを張ってほしいと思います。

取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

お話・監修・資料提供/種市尋宙先生(たねいちひろみち)

種市先生は「コロナ禍の今、目の前の子どもたちの心を救い、支えられるのはママやパパ、そして小児科医です。困ったことや不安があれば、小児科医に相談してください」と言います。子どもの健やかな成長のためには、まずはママやパパのメンタルヘルスも大切です。人があまりいない河原や広場をのんびりお散歩したりして、親子でいい気晴らしをしませんか。

※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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