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大切な人との死別、自身のうつ病の経験。心を救う言葉は、苦しい経験から生まれた【精神科医Tomy】

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医師は、将来的に更年期と治療について患者に話します。
●写真はイメージです
wutwhanfoto/gettyimages

Twitterで36万人ものフォロワーに支持される“精神科医 Tomy”先生。心に寄り添う言葉や優しい語り口調がスッと心に入り込み、不安や悩みを吹き飛ばしてくれます。育児中のママ・パパたちの中にも気持ちが明るくなった経験をした人がいるのではないでしょうか。
読む人の心を軽くする言葉の数々は、Tomy先生自身のどんな経験から生まれたものなのか。詳しく話を聞きました。

ゲイというセクシャリティの自覚

――Tomy先生が自身のセクシャリティを自覚したのはいつごろですか?

Tomy先生(以下敬称略) 思春期を過ぎたころから同性が好きだな、と思う気持ちもあったけれど、きっと違うだろう、そうではないだろう、となかなか認められずにいました。それまで順調に進学校といわれる学校に通って、浪人せずに医学部に入って、という人生だった私にとって、自分のセクシャリティを認めてしまうと、この先どうすればいいかわからなくなる気がして、考えないようにしてたんだと思います。

医学部を卒業するころ、自分のセクシャリティはゲイだとはっきりと確認しました。それによって将来、結婚して子どもを作って親に孫の顔を見せて、ということはできないともわかり、気持ちが混乱した時期もありました。

――家族にはカミングアウトしたんでしょうか。

Tomy その時期、恋愛に悩んで追い詰められてしまっていて、私は言うつもりはなかったけど、母に言わざるを得ない状況になってしまって。だから母は知ってます。でも、父には話しませんでした。父はアテクシが31才のときに倒れて、1年ほど闘病をしましたが、亡くなってしまったんです。

父はアテクシのことをとっても大事に育ててくれました。だから、もし今も生きていたらきっといつか伝えていたかもしれません。

精神科医になったのは「いちばん医者っぽくないから」

――精神科医を専門にした理由はどんなことですか?

Tomy アテクシはすごく医者になりたいと思っていたわけじゃないんです。実は小説家になれたらいいな、という気持ちがありました。でも、どうやってなったらいいかわからなかったし、ほかになりたいものがなかったし・・・。父が医者だったからアテクシも医者になる、それ以外の人生が想像できなくて、成績もよかったから医学部を受けようか、という感じでした。

医学部に入ったけど、それまで病院ってあんまり行ったことがなかったんです。簡単な病気は父が家でみてくれていましたから・・・。だから、医学生として病院で研修を受けてみて、「あれ、病院っていう場所があんまり好きじゃないかも・・・」ってその時になって気づいてしまいました。

自分の専門を決めるとき、アテクシはとっても不器用だから外科は論外だし、内科的な処置も難しいな、どうしよう・・・と悩みました。そんなときに精神科に見学に行ったら、聴診器を持たなくていいし、人の体に触らなくていいし、いちばん医者っぽくないな、って。もともと人としゃべることは大好きだし、大好きな哲学や文学にも近いところがあって面白そうだな、と思えたので、精神科医になりました。

最愛のパートナーとの出会いと別れ

――その後、最愛のパートナーと出会ったそうですが、パートナーだったジョセフィーヌさんとのことを教えてください。

Tomy ジョセフィーヌと出会った当時、アテクシは自分らしく生きる、とかどうでもいいと思ってたんだけど、彼はアテクシと全然違って、自分の考えでいろんなことに挑戦して、それをきちんと成し遂げる人。ジョセフィーヌとの出会いはアテクシにとって、すごく衝撃的でした。自分の考えで自分の道を歩んで、少しの時間も無駄にしない、彼の生き方にすごく影響を受けました。

ジョセフィーヌとは7年半の時間を一緒に過ごしましたが、父の死の数年後、彼は病気で急に亡くなってしまったんです。私を大事にしてくれた父、人生で最愛のパートナーだったジョセフィーヌ。大切な2人を失って、苦しく、つらい時期でした。

精神科医だってうつ病になる。全然楽しくない日々

――パートナーとの死別後、先生自身がうつ病も患ったそうですね。

Tomy はい。すごく寂しくて気分が落ち込んだり、人と話すときに言葉が3つくらいしか出てこなくなったり、大好きだったダンスのレッスンを受けても全然楽しくなかったり・・・。通っていたジムで筋トレしようとしてもダンベルを持ち上げられなくて、そのまま下ろして帰っちゃうこともありました。
ダンスもジムもなんのためにやってるのかわからなくなって、全部やめてしまいました。そしてそのころ、ちょっとおかしいな、危険だな、と気づきました。
友だちの精神科医に治療してもらい、3カ月くらいで治すつもりでいたけど、結局完全に治るまで1年くらいかかったように思います。

――自身がうつ病になって、患者さんの気持ちがよりわかったということはありますか?

Tomy そうですね・・・。うつ病になると「死にたい気持ち」がわくことがあって、精神科医としてはそれはいちばん注意してちゃんと扱わないといけないことなんです。自分の経験からしかのぞけないけど「死にたい気持ち」になるのはこういうことか、というのはなんとなくわかりました。

アテクシの場合は、健康なときだったら考えない、こわいことをずっと考えてしまって、それが自分でもわかるのにやめられなくて気持ちが悪い状態でした。うーん、たとえば、ホラー映画を無理やり見させられて、それがいつ終わるかわからない感じというか・・・。

自分が起きている間、ずっとそういう気持ち悪さが続くから、そこから飛び出したくなる、終わらせたくなる。それで衝動的に死ぬしかない、という気持ちになってしまうんです。
でも精神科医の知識もあるから、これはいつかは終わるとなんとなくわかりますから、あと少しだけなんとかしのごう、という感じでしたね。

悩みは発想を変えれば軽くなる

――苦しい時期を、どんなふうに乗り越えたんでしょうか。

Tomy ジョセフィーヌを亡くして、とっても大変だった時期、そばにいてアドバイスをしてほしい相手がいなくて、どうにもならない状況でした。
自分1人で解決しなくちゃならない不安や悩みに対して、ジョセフィーヌだったらこういうふうに言うかな、って考えて、少し心が軽くなるような言葉を自分自身にアドバイスするように書きためはじめたんです。自分の悩みを俯瞰しながら、自分で考えて少しずつ解決していきました。

――そんなふうに悩んだ自分に向けたアドバイスをTwitterで発信し始めたんですね。

Tomy 自分の経験から、ちょっと発想を変えれば悩みが減る、とわかり、自分に役に立った言葉やアドバイスを、診療でも患者さんに伝えてみました。それで、患者さんの反応がよかったものをさらに蓄積してTwitterで発信し始めたんです。それから半年で13万人の人にフォローされ、3年たった今では36万人になりました。こんなに多くの人の心に届けることができているんだな、とうれしく思います。

今の自分があるのは、ジョセフィーヌとの出会いと別れがあったからこそ。教科書的なアドバイスではなく、自分で考え悩んで、そんな自分を元気づけた言葉たちだったから、いろんな人に受け入れてもらえるのかな、と思います。


お話・監修/Tomy先生 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

Tomy先生がつぶやくたったひと言は、読む人の心にかかったもやをスッと晴らしてくれます。それは、先生自身が人生の悩みに向き合って生まれた言葉だからなのでしょう。「子育てしたことがないからとくにママやパパに向けてつぶやいているわけではないけど、人の悩みや不安などの普遍的なことに寄り添う内容にしたいわ」とTomy先生は言います。


●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

精神科医Tomy

PROFILE
1978年生まれ。某名門中高一貫校を経て、某国立大学医学部卒業後、医師免許取得。研修医修了後、精神科医局に入局。 精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、産業医。 精神科病院勤務を経て、現在はクリニックに常勤医として勤務。 ツイッター「精神科医Tomy@PdoctorTomy」(2022年9月時点で36万フォロワー突破)が人気。

ツイッター「精神科医Tomy@PdoctorTomy」

『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』

小説家になりたかった、と言う精神科医Tomy先生による小説仕立ての8つの物語。自身がこれまで抱えてきた葛藤も赤裸々にしつつ、多くの人が抱えがちな悩みの解決法をわかりやすい解説とともに説いてくれる。合計29万部を突破した大人気シリーズ『精神科医Tomyが教える1秒で〜』のスピンオフ小説。精神科医 Tomy著/1430円(ダイヤモンド社)

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