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「運動会に参加させてあげたい」約2万人に1人の難病、“色素性乾皮症”の子を守る紫外線対策ウェアを開発。きっかけは息子のアトピーだった

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色素性乾皮症を患うお子さんが紫外線対策製品ブランド「エポカル」の防護服を着用している様子。

日本には2万2000人に1人、日光に当たることができない病気の方がいます。病名は「色素性乾皮症」(※1)。紫外線を浴びると皮膚がんのリスクが高まり、病が進行すると聴力の低下や歩行障がいなどの神経症状を発症する方も多く、寿命が20~30歳と言われるケースも。治療法はまだ見つかっていません。

埼玉県で紫外線対策製品に特化したブランド「エポカル」を運営する、株式会社ピーカブーの松成紀公子さんは、色素性乾皮症の子どもたちが、日光の下で安心して過ごせるようにと、UV防護服の開発に乗り出しました。

「たくさんの方にこの病気を知っていただき、UV防護服を着ていることを理解してほしいです」そう話す松成さんに、起業のきっかけや、UV防護服の開発にまつわるエピソードなどをお聞きしました。

特集「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

わが子のアトピー性皮膚炎が起業のきっかけに

アトピー性皮膚炎と診断された松成さんの息子さん(写真は4歳のころ)。「息子の肌の状態は、おなかをスーッと触っただけで、細かな皮膚が剥がれて空中を舞う感じ。夏はこまめなシャワーが必須でした」(松成さん)

「まさか、自分の息子がアトピー性皮膚炎と診断されるとは夢にも思いませんでした。診断当日はすごくショックで、病院からどうやって家に帰ってきたか覚えていないんです」(松成さん)

松成さんの息子さんがアトピー性皮膚炎の診断を受けたのは1歳のとき。医師からは、悪化させてしまう可能性があるので、日焼けをさせないように注意して、と言われました。

「診察を終え、気がつくと私は自宅の玄関に立ち尽くしてて…。信じられないっていうくらい、ぼう然としていました」

なぜ、松成さんは診断にショックを受けたのでしょう?

「私自身がアトピー性皮膚炎とは無縁で、幼少期は毎日元気に外を走り回る病気知らずの子どもだったんです。あと、私が会社員時代の同僚でひどいアトピー性皮膚炎の方がいて…。首元などをいつも痒そうにしていて、かなりつらそうだなと思っていました。
だから、アトピー性皮膚炎の息子をどうやって育てていけばいいんだろうと、不安しかありませんでした。
でも、“日焼けさせなければ大丈夫かな…”当時は、そんなことばかり考えていましたね」

息子さんをアトピーと紫外線から守るため、松成さんはあることを思いつきます。

「息子のアトピーの肌に日焼け止め剤をつけるのはちょっと心配で。安心安全に、確実に紫外線をカットできるものは何だろうと考えに考えて…。洋服で紫外線をカットするしかないと思ったんです」

当時は、紫外線をカットするための洋服は市販品がなく、松成さんは手作りしようと布地探しを始めます。

「手芸専門店に行ったら、“紫外線カット”と書かれたグレー色のシャンブレー地があったんです。それを見たとき、“これだ!”って確信しました」(松成さん)

松成さんはその布地をたくさん入手するために、メーカーに問い合わせをしますが、“個人には売らない”と断られてしまいます。

「現金を前払いすると言っても、販売価格の2倍を支払うと言っても“個人には売らない”の一点張りでした」(松成さん)

この出来事がきっかけとなり、松成さんはある行動に移ります。

紫外線カット素材入手のため、会社を設立

布地を大量に手に入れるためには、会社を立ち上げることが必須だと考えた松成さん。図書館に足を運び、起業に関する本をたくさん借りて読み漁ったと話します。

「私は、手芸店で見た布で作ったウエアがあれば息子は健やかに過ごせると信じて、“会社を作るしかない!”と思いました。本を読み、いちばん会社を設立しやすいのは合資会社と知って起業を決意したんです」(松成さん)

2002年4月。松成さんは、合資会社ピーカブーを設立。2004年に紫外線対策専門ブランド「エポカル」を立ち上げます。

素材や機能性にとことんこだわった製品づくりが特長

「エポカル」の取り扱い商品は赤ちゃんから大人まで。防護服以外にウエアや帽子などの小物類も充実。写真はUVカットパーフェクトケープ(8800円)。UVカット率99%以上。

「エポカルは英語で“画期的な”という意味です。20年前に起業したとき、だれも商品化していないものをつくっていきたいと思ってブランド名を決めました」(松成さん)

エポカルで扱う布地は、繰り返し洗濯しても紫外線カット率が低下しない特殊な繊維素材。すべての製品が紫外線カット率91%以上で、シンプルな見た目ながら機能性の高いデザインが大きな特徴です。

「ブランドのこだわりは、みなさんに“これは便利!”と言っていただける機能性をデザインに落とし込むこと。一般的なウエアをUVカット素材でつくっただけじゃないんです」

たとえば、写真のUVカットパーフェクトケープは、首元のスナップボタンを留めるだけで羽織れるつくり。赤ちゃんから3歳ごろまで長く愛用できることも魅力です。

「ママの目線を忘れずに、商品を企画しています」(松成さん)

“いい製品が作りたい”“必要としている方々に役立ちたい”“私たちしかできないものを作りたい”と思いながら、製品開発に従事する松成さん。

そんな松成さんに、大きな決心をもたらしたのは、2018年に参加した色素性乾皮症の患者会でした。

「参加されていたご家族のお話しに、とてつもない衝撃を受けました」(松成さん)

「運動会に参加させてあげたい」に同感し、防護服の開発へ

色素性乾皮症のお子さんが屋外で活動する様子。「色素性乾皮症を患うお子さんの多くは、年齢が上がるとともに身体機能が低下し、走ることができなくなるんです」(松成さん)

色素性乾皮症の患者会に参加したことを機に、松成さんは高難度の製品開発に挑戦します。

「ご家族から“子どもの体が動くうちに、運動会に参加させてあげたい”と聞いて、あまりのショックに泣き崩れそうになりました。“子どもには太陽の下でいろいろな経験をさせてあげたい”というご家族の想いに、ただただ同じ親として同感しました」(松成さん)

色素性乾皮症の子どもに向けた防護服は、市販品がなく、各家庭で苦労して手作りされています。

「紫外線カット効果の高い布地や顔を覆う透明フィルムは、手に入れにくいんです。でも、みなさん工夫して調達されていて。ほとんどの方が自費で賄って、大変な思いをされながらつくっていらっしゃることを知りました。

日本にはたくさんの企業があるのに、“この子たちの防護服はだれもつくってないんだ…”と知ったら、“ずっと紫外線対策製品を作ってきた私たちがやらずにだれがやるの?““何とかしなきゃ!”と奮い立ちました」(松成さん)

UV防護服完成までの道のりは困難の連続

色素性乾皮症の子ども向けの防護服を開発中の様子。「顔を覆う透明フィルムは、ファスナーで着脱できる作りに。地面からの照り返しによる日焼けを防ぐため、首元と重なるデザインにしています」(松成さん)

防護服の開発費用は、クラウドファンディングで募り、さまざまな工程を経て約3年がかりで完成します。しかしながら、この開発は従来品とはまったく違う難しさがあったと松成さん。どういうところが難しかったのでしょう?

「全身を紫外線から100%遮蔽(しゃへい/※2)して、暑くなく動きやすいつくりにすることがとても難しかったです。指先まですっぽり覆うデザインのアイデアがなかなか出てこなくて…。寝ないで考えた時期もありました」

手の甲を守るために指を通すテープがついたつくり。

紫外線を完全に遮蔽する素材探しと、暑さを逃がすためにつけるファンの仕入れ交渉は、とくに長い時間がかかったそうです。

「“コレ1枚あれば安心!”と思ってもらえるようにしたかったので、素材探しとファンの採用は腰を据えて取り組みました」(松成さん)

周りの人から一目置かれるようなデザイン性や、洗えて気持ちよく着られることも重視して開発は進んでいきます。

数々の課題を一つ一つ乗り越え達成!

ファンを取り扱う企業との打ち合わせの様子。

顔を覆う透明フィルムは、折れても白く濁らない、柔らかい透明ビニール製を採用した松成さん。紫外線を99。7%カットする素材を見つけるのにも1年半かかったそうです。

「今までお子さんたちが着ていた防護服の透明フィルムは、紫外線カット率がはっきりせず、クリアファイルみたいに折ると白くなってしまうタイプ。これだとお子さんの視界が鮮明でなくなるので、ご家族の方々もすごく困っていたんです。だから、なんとかして見つけようと、スタッフ総出であらゆるメーカーに連絡して、ようやく見つけ出しました」(松成さん)

ファンの特許を持つ企業との契約交渉も課題がたくさんあったと言います。

「防護服の布地は紫外線カット率100%の安心素材なんですが、密閉されると夏はすごく暑くて…。体温を下げるためには外気を取り入れて汗が渇く時に体温を奪う(気化熱)構造のファンが絶対必要でした。
防護服にファンを取り付けるためには、さまざまな課題があったんですが、一つ一つ解決して約2年かけて契約していただきました」(松成さん)

防護服を着用したときの暑さ対策に不可欠なファン。

2021年2月。さまざまな課題を乗り越えて完成した防護服は、色素性乾皮症の患者会のもとへ届けられました。

感謝の言葉に「やってよかった!」と実感

エポカルの製品を愛用する方からもらった手紙を読んでいる様子。

会社運営は大変な面もあると言いますが、“起業してよかった!”と松成さんは話します。

「エポカルの商品をご愛用いただいているたくさんの方から、“安心して外出できるようになった”などとお礼の言葉をいただくと本当にうれしく思います。
お手紙もたくさんいただいて…。“出かけるときはこの帽子しかかぶらないんですよ” とか、“大人になってもエポカルの帽子をかぶりたい”といったお手紙を拝見するたびに、ウルウルしています。
みなさんのお役に立てる製品を作れているのかなと思うと、“起業してよかった!”“挑戦してよかった”とつくづく思います」(松成さん)

今回、松成さんが挑戦したUV防護服は小学生向きのものでしたが、次はベビー用の防護服を完成させるそうです。

世界一の紫外線対策製品ブランドを目指したい!

松成さんに将来の展望を尋ねると、
「色素性乾皮症を患う方以外にも、紫外線ケアを必要としている方はいらっしゃると思うので、みなさんに“エポカルのものを使えば安心”と思ってもらえるような製品づくりをしていきたいです。そして、世界に向けてエポカルをPRして行けたらいいなと思います」

取材協力・写真提供/株式会社ピーカブー

※1遺伝病で、A~G群という8つの型がある。多くは紫外線に当たると肌がやけどのように赤く腫れ、しみができて皮膚がんになりやすい。A群では、成長とともに聴力や身体機能の低下などの神経症状を発症する。
(難病情報センターのHPを参照してまとめたもの)

※2 覆うものを掛けたり張ったりして、光線などからさえぎること。

病気のことを知らなければ、「なぜあの子は透明フィルムで顔を覆っているんだろう」と違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。
防護服を必要とするお子さんの中には、周りの方からの理解が得られず、つらい思いをしていることもあるそうです。
病気を患う方々を取り巻く環境が、今よりもやさしい世界になるように、まずは一人一人が病気のことを正しく知ることが大切なのかもしれませんね。

取材・文/茶畑美治子

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

株式会社ピーカブー 代表取締役 松成紀公子さん

大学卒業後、大手銀行に約10年勤務し、結婚。2001年長男を出産。2002年合資会社ピーカブー設立。2005年株式会社化。紫外線対策の重要性をWHO(世界保健機関)から学び、2004年に日本で唯一の紫外線対策製品専門ブランド「エポカル」を立ち上げ。「日本学校保健会」の推薦を得た製品の企画・製造も手掛ける。
世界一の紫外線対策大国・オーストラリア市場にもチャレンジし、オーストラリア政府直下の検査機関「ARPANSA」にて日本初の企業認証を得る。

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