23年4月からルール変更も。入園前に子ども乗せ自転車の安全な乗り方・使い方を再確認しよう【専門家】

保育園の送迎などで大活躍する子乗せ自転車。大人1人で運転する場合と比べて、子どもの体重もプラスされているので、バランスを取りにくくなったり思わぬ油断が事故につながったりすることも。また、親はヘルメットをかぶらずに乗ることが多いようですが、2023年4月から自転車に乗る人全員に対し、ヘルメット着用が努力義務化されます。自転車を安全に利用するために気をつけたいことについて自転車の安全利用促進委員会メンバーで自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんに聞きました。
自転車に同乗できるのは年長まで。子どもの体重も要確認
メーカーによって多少の違いはありますが、子乗せ自転車の子ども用座席に乗せられる体重は決まっています。
「3人乗り対応の子ども乗せ自転車の場合は、前部のシートが15kg以下、後部は20kgもしくは22kgであることが多いです。また、身長制限もあるため、お子さんの成長に合わせて乗せてください。前部のチャイルドシートは支えがなくてもおすわりができる1歳から3歳ごろまで、後部座席は2歳から6歳が使用の目安です。なお、子乗せ自転車の子ども用座席に子どもを乗せられるのは就学前まで。法律により、小学生の子どもは同乗できないので注意しましょう」(遠藤さん)
【要注意ポイント】容量オーバーで乗ると破損や転倒の危険が
たとえば、子どもが子ども用座席に乗せられる体重を超えているのに乗せ続けたり、荷物を積みすぎたりするなど、重量オーバーの状態で自転車を走行するのは危険があります。
「重量オーバーの状態だと、走行中に子ども用座席が荷台から外れてしまったり、部品が破損することも考えられます。子どもの体が小さすぎるからといって、クッションなどでスペースを埋めて座らせるのもNG。段差を乗り越えた衝撃でそれらが飛び出して車輪に挟まり思わぬ転倒事故につながったり、転倒時などに子どもがシートをすり抜けて、転落・車道に投げ出されてしまう可能性があります」(遠藤さん)
また、赤ちゃんを抱っこひもで前抱っこして自転車に乗るのも危険です。
「赤ちゃんを抱っこひも使って前抱っこしながらの自転車走行は、足元が見えず非常に危険なので絶対にやめましょう。法律にも違反します。赤ちゃんをおんぶしてもう1人をチャイルドシートなどに同乗させる3人乗り(運転者含め)は認められていますが、もちろん安全に注意が必要です」(遠藤さん)
道路は微妙に傾斜している!傾きにくい場所に駐輪を
自転車は平らな道路に停めて乗り降りするのが基本ですが、平らな場所に停めたつもりでも、実は道が傾斜していることも多いそうです。
「ほとんどの道路は、水はけをよくするため、かまぼこのように道路の端が低くなっています。じゃまにならないようにと、道路のぎりぎりに停めると自転車が傾きやすくなることがあります。目に見えにくい傾斜は多いので、停車時はとくに慎重に確認しながら乗り降りしましょう」(遠藤さん)
【要注意ポイント】子ども用座席に子どもを放置するのは絶対にやめて
子どもを自転車の子ども座席に乗せたまま、親がその場を離れてしまい、転倒して子どもがけがをする事故が起きています。
「停車中の子乗せ自転車は、ただでさえ不安定なもの。『子どもが寝ているから』『ちょっとコンビニで買い物をする間だけ』と、子どもを自転車の子ども座席に乗せたまま、親がその場を離れるのは絶対にやめましょう。子どもはじっとしていられないので、少し動いただけで、自転車ごと倒れてしまう可能性があります。
子どもを自転車の子ども座席に放置したことで起こる事故に対し、各省庁などからも毎年勧告が出ているのですがなかなか減らないのが現状です。
親にも事情があるのだとは思いますが、子どもの安全を優先してほしいもの。子どもを子ども座席に放置するのは転倒の危険と隣り合わせであること、転倒して救急搬送されるお子さんが後を絶たないことから、改めて注意を徹底しましょう」(遠藤さん)
親子でヘルメットを着用しましょう
2023年4月より大人も含めて自転車に乗る人全員にヘルメットを着用することが努力義務化されます。
「自転車事故の6割以上で頭部にけがを負ったというデータもあります。事故の際の死亡率も、ヘルメットをかぶっているのといないのでは、2.6倍の差が あるといわれています。安全のためにも親子でしっかりヘルメットを着用しましょう」(遠藤さん)
1歳ごろの子にはヘルメットが重たそうにも見えて体への負担が気になるママやパパもいますが…?
「軽いものであれば、子ども用の自転車用ヘルメットの重さは200g程度。むしろ着用させないで転倒したときのリスクのほうが大きいです。たとえ子どもが嫌がっても、自転車乗車の際はヘルメットを着用させ、安全を守ってください」(遠藤さん)
【要注意ポイント】サイズの合わないヘルメットは避け、適度にサイズアップを
自転車用のヘルメットは子どもの成長に合わせてサイズアップすることも大切だそうです。
「サイズが合わないヘルメットでは、事故が起きたときに頭部をしっかり守れないことがあります。
個人差がありますが、小学生になるまでに1~2回買い替えることが多いようです。1歳~2歳ごろが乳児用、2歳~6歳ごろが幼児用、小学生以降になるとキッズ用のサイズに変えるのが目安です。子ども用ヘルメットはサイズが微調整できるものが多いですが、ヘルメットそのものの大きさが変わるわけではないのできつくなったらサイズアップをおすすめします。
また、子どもに装着させるときに、留め具であごの肉をはさんでしまうことが。はさみにくくて着脱が簡単なマグネットタイプの留め具もおすすめですよ。また、ひもが緩すぎるといざというときにヘルメットが脱げてしまう恐れがあるので、ときどき確認して適切な長さに調整しましょう。あご下に指1本程度の余裕がある程度が適正です」(遠藤さん)
子ども座席のシートベルトはしっかり締める
子ども座席のシートベルトにも注意が必要です。
「走行中に転倒し、シートベルトをしていない子どもが車道に飛び出してしまったら、大きな事故につながります。
シートベルトをしっかり締めることはもちろん、子どもがリュックなどを背負った状態でシートベルトを締めると、ベルトがゆるんでしまうことがあるので注意を。子どもに荷物を持たせるのは構いませんが、シートベルトをした上で、荷物はひざに乗せるようにしましょう」(遠藤さん)
【要注意ポイント】シートベルトはきつくてもゆるくてもダメ
成長に合わせて、ベルトの長さや位置を調整することも大切です。
「ベルトがきついと居心地が悪いですし、ゆるいと事故のときに危険です。ベルトの長さだけでなく、両肩のベルトの高さが体格に合っているのかも確認を。肩~肩よりやや下のあたりから肩ベルトが出ていて、固定されているのが適正です。それより高い位置にあると、ベルトはゆるみやすいです。合っていないようなら、ヘッドレストを動かして、ベルトの高さを調整しましょう」(遠藤さん)
交通ルールは守るのが大原則。歩道を走るときは車道側に
自転車は法律上、軽車両になるので、車道を走るように定められています。
「路上駐車が多い、道幅が狭いなどで、安全を確保できない場合は例外的に歩道を走行することが認められています。ただし、もちろん歩道は歩行者優先です。自転車は車道側を走り、いつでもすぐに停車できる速度で通行するのが決まり。電動アシストつき自転車に乗っていると、歩道でもスピードを出しがちなので気をつけましょう」(遠藤さん)
【要注意ポイント】危険運転で自転車側が加害者になることも
自転車の運転は交通事故の被害に遭うだけでなく加害者になる可能性も十分あります。実際に自転車が歩行者を跳ねる事故が増えているそうです。
「電動アシストつき自転車に乗って急いでこいでいると、意外と簡単に時速20kmくらいのスピードになります。
自転車が歩行者を跳ねる事故でとくに多いのが信号のない交差点で起こるもの。交差点を渡るときは、一時停止して安全確認をしなくてはいけないのですが、スピードを落とさずに通行してしまって事故を起こす…というケースが目立ちます」(遠藤さん)
急いでいるときこそ、交通ルールをしっかり守ることが大切です。
「自転車は免許なしで乗れる乗り物。ほとんどの子どもが自転車に乗れるようになったらすぐに公道に出るので、交通ルールをしっかり教える機会もなかなかありません。だからこそ、将来、子どもが自転車で事故を起こすのを防ぐためにも、親が安全に自転車に乗る姿を見せてあげてほしいと思います」(遠藤さん)
監修/遠藤まさ子さん、取材協力/自動車の安全利用促進委員会 取材・文/中澤夕美恵、たまひよONLINE編集部
自動車の事故数は減少傾向にあるものの、自転車の事故数は横ばいなんだとか。入園や進級を機に、これから子乗せ自転車を使うという人は、乗る前に安全な走行方法を再確認して。親が見本を示して、子どもが小さいうちから、自転車の安全な乗り方を伝えていけるといいでしょう。
遠藤まさ子さん(えんどうまさこ)
PROFILE
自転車業界新聞の記者や自転車専門誌の編集などを経てフリーランスへ転向。自転車・育児用品を中心に取材を行い、各誌に寄稿している。自転車の中でも子乗せ自転車、幼児車、電動アシスト自転車を得意とし、各種メディアでコメンテーターとして活躍。全国のセミナーや講演会などに登壇し、自転車の安全利用の普及に努めている。
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