「母乳外来」に行けば母乳育児の悩みが解決する?助産師が答えます
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出産前に想像していたとおりにはいかず、産後に「こんなはずじゃなかった~」と感じることの大きな1つに母乳育児の悩みがあります。毎日の母乳育児に悩むママたちの強い味方になってくれるのが「母乳外来」。しかし、出産した病院に母乳外来はなく、どんなところなのかいまいちわからないという声も聞きます。母乳外来はどんなことを相談できて、どんなことが行われるのか、東京・日本赤十字社医療センター産科の助産師・川井由美子先生に伺いました。
母乳育児に関することであればなんでも相談を
母乳外来には母乳育児で悩むママたちの駆け込み寺のようなイメージがありますが、どんなことを相談できるのでしょうか?
「多くの母乳外来には、赤ちゃんを見続けてきた助産師がいますので、母乳育児に関することでしたらなんでも相談に来ていただきたいです。
受診の流れとしては、まずママがどんなことを心配されているかお話を伺います。そのあと、赤ちゃんを観察させていただき、必要であれば授乳のご様子やお胸の状態を拝見します。母乳外来と聞くと、“乳房だけを診る場所”と思われる方も多いのですが、母乳育児に関する不安や悩みをママと一緒に解決する場所と思ってもらえるといいかもしれません」
時間をかけて解決することを念頭に
受診は一度で済むのでしょうか? 連続して受診する必要があるのでしょうか?
「1回の来院で解決することはあまり多くないように思います。どんな悩み、症状でも経過を見ないといけないですし、提案させていただいたことが本当に適切だったかどうか確認する必要があります。
とくに、おっぱいの張りに悩んで来院される方は、時期と症状によって対応もさまざま。乳腺が詰まっていた場合はマッサージだけで解決することもありますし、炎症を起こしている『乳腺炎』だと数日かかることもあるので、時間がかかるということは念頭に置いておいて来ていただきたいと思います」
助産師に不安をすべて伝えるのが重要
遠慮がちで相談がうまくできないママが多いようですが?
「たとえば、夜の授乳回数が多く寝不足である場合には、授乳のしかたをアドバイスさせていただくことで、睡眠が取れるようになることも。その悩みにおっぱいがからんでいれば、何でも伝えていただきたいです。『これは母乳外来で聞いてはだめなのかな?』とは思わずに、そのとき気がかりに思っていることは、診察のときに伝えて。何かアドバイスできることがあるかもしれません」
断乳・卒乳、離乳食の悩みも相談可能です!
授乳のペースができてきたら、もう母乳外来では相談にのってもらえないのでしょうか?
「出生直後から、断乳・卒乳までの時期について、お話を伺っています。離乳食が始まれば、母乳の分泌を見つつ『そろそろごはんの量を増やしてみましょう』といったアドバイスができます。断乳・卒乳後も、あまり時間がたっていなければ受診可能です。断乳後におっぱいが張ってしまって痛い、などのトラブルの対応もしています。ただ、断乳・卒乳後1カ月以上過ぎた時期のトラブルは母乳外来の対象外なので、内容に応じた相談先をご案内しています」
母乳外来選びは値段ではなく、信頼できるかどうかを
受診料やどのクリニックの母乳外来にかかったらいいかなど、選ぶポイントを教えてください。
「診察時間は30分や1時間、値段も初診料を含めて5000~1万円とさまざま。病院だけでなく、開業や出張で母乳外来をしている助産所などもあります。基本的にどの母乳外来も予約制です。
病院選びのポイントは、値段よりもママが通いやすく、助産師に信頼が置けるかどうか。最近では、保健所で母乳外来を紹介してくれる地域も増えています。保健所には最新の情報があるので、聞いてみるのがおすすめです。その地にある病院や母乳外来を受診するということは、近くに住むママたちが集まっているということ。知り合いができると情報共有ができ、ママ同士で育児の不安や悩みを解決できることもあるので、すごくいいことだと思います。実際に、何度も相談に来られていたママが、母乳外来で知り合ったママ同士と交流することで不安が少なくなり、卒院されたということもありました」
母乳育児にはママの頑張りが必要不可欠
母乳外来に行こうと考えているママたちへアドバイスをお願いします。
「母乳外来では、できる限りのアドバイスやマッサージをしますが、母乳育児にはママの頑張りも必要です。おっぱいトラブルで言えば、セルフケアですね。1回の受診でよくならなかったから、『あの母乳外来は合わない』と決めつけず、アドバイスを聞いて実行してみてほしいと思います。赤ちゃんは自分の思いを伝えられません。ママが赤ちゃんに代わって不安を伝え、助産師の話をよく聞き、一緒に乗り越えていくことが何より大事です」
気になること、心配なことが多い母乳育児ですが、授乳は赤ちゃんにとってママの体温やにおい、愛情を感じられる大切な触れ合いの時間です。また、赤ちゃん時代にしかできない経験でもあります。母乳外来でアドバイスをもらい、ママ、赤ちゃんともに快適な授乳ライフをめざしましょう。(取材・文・ひよこクラブ編集部)
■監修/川井由美子先生
Profile●日本赤十字社医療センター産科外来勤務。診療を通じて、多くのママや赤ちゃんに寄り添っているベテランの助産師です。
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