ママ泌尿科医・岡田百合香、性教育が進んでいるオランダ訪問で気づいたこと・感じたこと


男の子と女の子2人のママであり、泌尿器科医である岡田百合香先生の連載。総合病院の泌尿器科に勤務しながら、乳幼児の保護者を対象にした講座や思春期の生徒向けに性に関する授業なども行っている岡田先生ですが、今夏、性教育が進んでいるといわれるオランダを訪問する機会があったそうです。今回は、「オランダの性教育」について、岡田先生が体験されてきたことについてです。「お母さん・お父さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#60です。
性教育が進んでいる国、オランダ
2025年8月後半に約2週間、オランダに2人の子どもたちと一緒に滞在しました。
オランダといえば、性教育が進んだ国として界隈では有名です。私も講演や勉強会でオランダの事例を紹介することが多いのですが、これらの情報は日本にいながら入手したものが中心です。「ちゃんと自分で直接確認した情報を伝えたい」という思いをずっともっていました。
今回、縁あってオランダの日本人学校の先生方に向けた性教育の研修会を行う機会をいただきました。日本人学校には、オランダ在住数十年目で出産・育児もオランダで行ってきた日本出身の職員さんが複数おられ、彼女たちと日本とオランダのさまざまな違いについて意見交換できたことが本当に有意義で勉強になりました。
オランダでは、学校の授業でも博物館でも性についてオープン
まず、性教育については「オープンだよね」と口をそろえて言っていました。学校によって性教育への内容や熱量には差があるものの、「中1の生物の授業でコンドームについて学んできた」「うちの息子の学校は中学の遠足のバスでコンドームリレー(模型にコンドームをかぶせて次に回す)が恒例行事だったよ~」と楽しそうな話を聞かせてくれました。
性についてオープンに伝えようという姿勢は、アムステルダムの科学博物館「サイエンスセンター・NEMO」でも見て取ることができました。
ここは子どもたちに大人気の大きな科学館で、シャボン玉の中に入ったり、巨大なピタゴラスイッチ風のショーがあったりと子どもが「楽しく」「わかりやすく」学べる工夫が盛りだくさんです。
人間の性に関する展示スペースでは、全裸の成人男女の写真にさまざまな衣類を組み合わせられるしかけがあり、性器のしくみについて解説を受けられると同時に、性の多様性についても学べるしくみになっていました。
日本では考えられないような性行為Q&Aのコーナーも
また性行為についてたくさんのQ&Aコーナーが設けられており、「How often do people have sex?(人々はどのくらいの頻度でSEXするのか?)」「Do people of 70 and older have sex?(70歳以上の人はSEXするのか?)」といった「えっ、それ気になる…!」というお題設定に引き込まれ、多くの人が足を止めて展示を見ていました。また「Does the G-spot exist?(Gスポットは存在するのか?)」「Which is more sensitive:the glans or the clitoris?(亀頭とクリトリスはどちらが敏感か?)」など日本においては成人雑誌やエロサイトでしか取り扱っていなさそうなお題を堂々と科学館で回答してくれるオープンさ。
その場には子どもたちもたくさんいましたが、特別興奮したりふざける様子もなく、ほかの展示エリアと同じような空気が流れていました。
ほかにも「死」や「老い」を扱った展示もあり、日常の中でどうしても避けがちなテーマ・話題にも真正面から向かい合おうというコンセプトに感心しました。
子どもに性について伝えるとき、また子どもが何か性について話をしたいとき。
大人がオープンに取り扱える前提があれば、話をする・聞くときのハードルはぐっと下がることでしょう。
死や老いも同様で、デリケートであるからこそ対話や思索が必要なテーマについて、包み隠さずに提示し「みんなで考えようよ」という姿勢がすばらしいですし、オープンで積極的なオランダの性教育はこういったすてきな施設にも支えられていることを実感したのでした。
文・監修・写真提供/岡田百合香先生 構成/たまひよONLINE編集部
岡田先生は今夏のオランダ訪問で、「日常で避けられがちなテーマに正面から向き合う姿勢を見た」と言います。性の問題について、社会の中でみんなで考えていくためには必要なことなのではないでしょうか。
●記事の内容は2025年9月の情報で、現在と異なる場合があります。