【医師監修】夏に注意したい7つの感染症、ウイルスの変化で症状も変わる!?流行予測&最新情報
お出かけが増え、活動的になる夏ですが、厳しい暑さで赤ちゃんが体調を崩しやすい時季でもあります。夏に気をつけたい代表的な感染症について、ここ数年の傾向を帝京大学医学部附属溝口病院小児科の黒澤照喜先生に聞きました。
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暑さに対応しきれず体力を失うと、夏でも感染症にかかりやすい
「感染症は冬にかかるイメージがあるかもしれませんが、夏でもかかります。とくに赤ちゃんは体温や汗の量を調整する機能が未発達で、夏は暑さに対応しきれず体力を失いやすいです。体力が落ちていると、感染症にかかりやすくなることも。とくに6ヶ月ごろからはママからもらった免疫が少なくなるため、大人よりも病気にかかりやすいです。また、保育園などで集団保育の機会があったり、上にきょうだいがいる場合も、感染症にかかるリスクは高まります。夏に活発になる病原体もいるので要注意です」(黒澤先生)
去年の夏はヘルパンギーナ、手足口病が大流行。今年はどうなる?
夏にとくに気をつけたい感染症は、
・ヘルパンギーナ
・手足口病
・咽頭結膜熱(プール熱)
・細菌性胃腸炎
・ウイルス性胃腸炎(胃腸風邪、乳児嘔吐下痢症)
・RSウイルス感染症
・風邪症候群(ウイルス性上気道炎)
この7つ。同じ感染症でも、ここ数年で症状の出方などに変化があるものや、流行に特徴が見られることがあるそう。ママやパパが注目しておくべき傾向を、黒澤先生に解説していただきます。ウイルスが変化して、症状が以前とは変わることもあるので、最新情報を知っておきましょう。
「手足口病」はウイルスが変化して、手足口以外にも発疹が!
まずは、赤ちゃんが夏にかかりやすい4大感染症とも言われる「ヘルパンギーナ」「手足口病」「咽頭結膜熱(プール熱)」「細菌性胃腸炎」について、病気の特徴や症状と、ここ数年の傾向を伺いました。
■ヘルパンギーナ
「コクサッキーウイルスやエコーウイルスに感染し、突然39~40度の高熱が出て、のどの奥に小さな水疱が数個~数十個できるのが大きな特徴。水疱がつぶれると唾液を飲み込むのもつらいほど痛みがひどく、食欲が低下します。
特効薬はなく、自然に治るのを待ちます。水分をとれないとき、高熱が5日以上続くときは再受診をしましょう。
一昨年と昨年に大流行したため免疫を持っている子が多いので、今年は流行しにくいことが予想されます。ただ、原因になるウイルスはいくつもあるため、油断は禁物です」(黒澤先生・以下同)
■手足口病<てあしくちびょう>
「口の中の粘膜や歯肉、唇の内側などに赤い小さな発疹ができ、同時か少し遅れて手のひらや足の裏のほか、ひじ、ひざ、おしりなどにも小さな水疱ができます。38度前後の発熱、下痢や嘔吐を伴うことも。ウイルスはのどにいて、水疱から人へはうつりません。
手足口病も一昨年と昨年に大流行したため、今年は流行しにくいと考えられますが、油断は禁物です。
また、4~5年くらい前からウイルスに変化が起きたのか、手足口以外の部位にも激しく水疱が見られることが増えました。そのため、ママやパパが水ぼうそうと間違うことも。見た目はつらそうですが、痛みやかゆみはそこまで強くないことが多いです」
■咽頭結膜熱<いんとうけつまくねつ>(プール熱)
「アデノウイルスに感染することで、高熱が4~5日続き、のどの腫れ、せきのほか、結膜炎症状や下痢を伴うことも。高熱は1週間以上続くこともあります。
夏にプールで集団感染することから『プール熱』と呼ばれることがありますが、実際にはプールで感染するとは限りません。感染力が強いので、ママやパパもお世話のあとは手洗いをして感染予防を。
アデノウイルスにもさまざまな種類があるので、アデノウイルスに感染した人が、すべて咽頭結膜熱を発症するわけではありません。
ここ数年は大きな流行が見られていませんが、だからといって、今年もはやらないとは限りません。感染した人とタオルや食器を共用することから感染が広がることもあるので、気をつけましょう」
■細菌性胃腸炎<さいきんせいいちょうえん>
「サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌<びょうげんせいだいちょうきん>、ブドウ球菌など、細菌に汚染された食べ物やペットのふんなどを介して起こる胃腸炎。食後(感染後)すぐから数日後、腹痛とともに激しい下痢や嘔吐、発熱などの症状が出ます。食材およびママの手や調理器具を介して感染する場合が大半です。
夏は暑いので細菌が増殖しやすく、夏に増える感染症ではありますが、ウイルス性胃腸炎に比べると、そもそもそこまで多く見られる感染症ではありません。細菌に汚染されたものを口にして起こるので、全国的に流行するというよりは、局所的に見られるのが特徴。肉や魚、卵など、細菌が感染している可能性がある食材は十分に火を通して与えるように注意しましょう」
冬の感染症だった病気が、夏にも流行するように
以前は冬に流行することが多かった感染症だけれど、最近は夏にかかることも多いものがあります。赤ちゃんがかかると重症化するものも多いので、注意が必要。下記のような症状が見られたら、なるべく早く受診しましょう。
■ウイルス性胃腸炎(胃腸風邪<いちょうかぜ>、乳児嘔吐下痢症<にゅうじおうとげりしょう>)
「ノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルスなどが主に口から胃や腸に入りこみ、最初に嘔吐、続いて下痢、発熱などの症状が出ます。
ロタウイルスの場合は、米のとぎ汁のような酸っぱいにおいがする下痢を繰り返します。また、ノロウイルスの場合は、嘔吐の症状が強く出ます。家族への二次感染を防ぐため、吐しゃ物やうんちのついた紙おむつを処理するときは注意をしましょう。
ウイルス性胃腸炎は、以前は冬に多い病気でしたが、2005年以降は3~6月にも感染が見られるようになり、昨年も3~5月ごろまで流行しました。ただ、ロタウイルスのワクチン接種が広まってきたこともあって、しだいにロタウイルスによるウイルス性胃腸炎の感染者数は減少しています」
■RS<あーるえす>ウイルス感染症
「風邪症候群の代表的なウイルスで、とくに呼吸器に感染し、発熱、鼻水、せきなどの症状が出ます。1~2週間で回復しますが、細気管支炎や肺炎を併発することも。
3ヶ月未満の子や免疫不全児、早産児、呼吸器・循環器系に病気のある乳幼児は、重症化しやすいです。感染後、3~5日が最も重症となり、2ヶ月未満だと入院する場合も。
以前は秋から冬に流行することが多い感染症でしたが、最近になって夏にも流行が見られるように。1年を通じて注意が必要です。昨年の夏に流行したので、今年はそこまででもないと思っていましたが、春先にも感染者が見られ、油断は禁物です」
■風邪症候群<かぜしょうこうぐん>(ウイルス性上気道炎<せいじょうきどうえん>)
「鼻やのどの粘膜からウイルス・細菌に感染して、発熱、鼻水やせき、のどの痛みなどの症状が出ます。下痢、発疹などが見られることもあります。急性気管支炎、急性中耳炎など、ほかの病気を併発したり、発熱がきっかけで熱性けいれんを起こすこともあるので注意が必要です。
集団保育デビューした子の多くが、何度もかかります。4月に集団保育デビューした赤ちゃんは、4~5月あたりから、せきや鼻水が続いて、時々発熱することも。6月ごろまでせき、鼻水が続いて心配になるママ・パパも多いですが、7~8月になると免疫がつき始めて、落ち着くことが多いでしょう」
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“感染症は冬に流行する”と思いがちですが、とくに赤ちゃんや小さい子どもは夏でも感染症に注意が必要です。流行予測をチェックしながら、規則正しい生活を心がけ、症状が見られたら早めに受診をして、夏の感染症を乗りきりたいものです。(取材・文/古川はる香、ひよこクラブ編集部)
初回公開日 2018/07/22
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