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【医師監修】子どものてんかんの症状、原因、診断、治療

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てんかんとは、脳のさまざまな部分の神経細胞(ニューロン)が、過剰な放電を起こすことでけいれん、意識障害、不随運動などの症状がくり返し起こる病気のことです。国内のてんかんの患者の数は、60万~100万人(1000人に5人~8人)と考えられています。乳幼児から成人まで発症の時期はさまざまですが、ここではとくに子ども、赤ちゃんのてんかんについて取り上げます。

てんかんとはどんな病気

てんかんは、脳の神経細胞に一時的に異常な電気的興奮が起こり、意識や運動、感覚などがくり返し障害を起こす病気です。てんかん発作の現れ方は、脳のどの部分に興奮が起こるかによって異なるため、てんかんといってもその症状は人によってさまざまです。

主なてんかん発作

・けいれん発作
手足の筋肉に本人の意志とは無関係に強い収縮が現れ、がたがた震えが起こります。全身の筋肉につっぱり、こわばりが起こる発作と共に現れることがあり、意識が失われます。発作は数分で収まります。

・欠神発作
数秒程度の短い時間、意識を失ってしまう発作です。けいれんは起こりません。欠神発作の時間は短いため、学校や幼稚園などでぼーっとしているようにしか見えず、てんかんの発作であることが周囲の人に気づいてもらえない子どももいます。

・ミオクロニー発作
全身あるいは手足などの筋肉が突然ビクッと緊張する発作です。

・失立発作
全身の筋緊張が一瞬低下する発作です。転倒したり、手に持っていたものを落としたりします。

◎「てんかん=けいれん」ではありません
てんかんというと、全身を強く震わせるけいれん発作をイメージする人も多いのですが、実際には、けいれん発作を伴わないてんかんもあります。また、けいれん発作自体も、てんかん(つまり、脳の神経細胞の異常興奮)が原因のものもあれば、高熱や感染症を原因とするものもあるのです。

てんかんの種類

てんかんにはいろいろな種類・症状があります。乳幼児期に発症するてんかんでは、成長に伴って治っていくてんかんもあれば、精神運動発達遅滞を示す難治のてんかんもあります。

原因による分類

・症候性てんかん
脳に障害が起きたり、脳に出血や外傷などが起きたりといった、明らかな原因があるてんかんのことです。具体的には、生まれつき脳にきずがあったり、低酸素状態で生まれたりした場合、脳炎、髄膜炎など脳に影響を与える病気になった場合です。

・特発性てんかん
検査をしても脳に明らかな障害が見つからない、原因不明のてんかんです。原因は不明ですが、脳波を調べると神経細胞の異常興奮を確認することができます。生後〜3歳ごろまでに発症する小児てんかんでは、原因のわからないと特発性てんかんが多く見られます。

脳の異常興奮が起こる場所による分類

・部分てんかん
脳の一部の部位に過剰な電気興奮が発生し、発作が起こるものを部分てんかん(局在関連てんかん)といいます。脳の一部が原因となるため、発作は、ちかちかと光りが見える、手足がぴくぴく動くといった身体の特定の部分に限定されることが多く、その場合、発作が起こる際には本人の意識があります(意識障害を起こす場合もあります)。

・全般てんかん
脳の全体または大部分に過剰な興奮が起こるてんかんのことを指します。脳の大部分が原因となるため、意識を失ってしまったり、倒れてしまったりといった発作が起こります。
さらに、部分か全般かが決定できないてんかん、部分、全般両方の特徴を持っているてんかんがあります。

子どものてんかん

新生児から3才までの乳幼児期に発症するてんかんとしては、次のようなものがあります。

点頭てんかん(ウエスト症候群)

乳児期の難治性てんかんです。生後3〜8か月ごろに頭を前屈、両腕を開きお祈りをするような瞬間的なけいれん発作が数秒から数十秒間隔で、数回〜数十回群発するようになります。発達遅滞を伴うことが多く、笑わなくなった、ものに興味を示さなくなった、首が座らなくなったなど知能と運動の両方で退行(できていたことができなくなる)が起こります。なお、点頭てんかんの瞬間的なけいれんは、乳児が抱きつくような動きを示す「モロー反射」と似ています。てんかんの場合は、発作が短時間に繰り返されること、表情が乏しくなるなどの特徴がありますが、気になる場合はかかりつけの小児科医に相談するとよいでしょう。

レノックス・ガストー症候群

1〜7歳くらいまでの小児期に発症する難治性てんかんです。点頭てんかん(ウエスト症候群)から移行することが多く、全身の強直発作、脱力発作、欠神作などさまざまな症状が現れます。歩行障害や言語の退行が起こることがあります。

乳児重症ミオクロニーてんかん

発熱を原因とする熱性けいれんをくり返し発症した乳児で、さらにてんかんの家族歴(両親のいずれかがてんかん患者である)場合に起こることがあります。当初は知的発達は正常ですが、1〜4歳頃にてんかんが発症すると、症状を繰り返すうちに次第に知的な発達が停滞するようになります。

ローランドてんかん(中心・側頭部に棘波を示す良性小児てんかん)

5歳前後(3~10歳)で発症することが多く、思春期後期(15歳前後)で自然治癒する良性てんかんです。睡眠時に頭部(顔面の片側けいれん)、上肢のけいれんなどを起こします。発作頻度は少なく、大部分が一生のうちで6回以下程度とされています。

治療は適切な抗てんかん薬を服用することで、大部分の患者さんでは発作は抑制され通常の社会生活を支障なくおくれます。一方、抗てんかん薬では発作を抑えることができず、「難治性てんかん」として複数の抗てんかん薬の調整や外科治療などの専門的なてんかん治療を必要とする場合もあります。

てんかんの診断

脳波検査を行うと、てんかん特有の波形が確認できます。さらに、CT検査やMRI検査などを行い、脳の奇形やきずなどの有無を調べて、原因を絞り込み、治療方針を立てていくことになります。出生時の様子や頭のケガ、熱性けいれんを起こしたことがあるかどうかなどについても医師が確認していきます。

てんかんの治療

乳幼児期に発生したてんかんは、治療の内容や予後(病気の経過)はてんかんの種類によってさまざまです。治療の柱は、薬物療法(投薬)、脳外科的療法(手術)、そのほか(食事療法など)になります。

薬物療法(投薬)

てんかんの治療の中心は投薬です。てんかんの種類によってどの薬を選択するかが決まってきます。投薬は、医師の指導の下、副作用に注意しながら行っていきます。てんかんの種類にもよりますが、長期間にわたって毎日服用することが必要です。定期的に血液検査を行い、身体の状態を管理していくことが大切です。

脳外科的療法(手術)

投薬に行っても発作の回数が減らない場合、手術が検討されます。良性の脳腫瘍などはっきりした病変が脳にあり、それがてんかんの原因となっている場合は、手術することで発作の完治を期待することもできます。

そのほか(食事療法など)

糖などの炭水化物を減らし、脂肪を多く摂る「ケトン食療法」は、レンノックス・ガストー症候群などの一部のてんかんに有効とされています。医師と栄養士の管理の下に行われます。また、点頭てんかん(ウエスト症候群)には、発症後、早期であるほど脳下垂体ホルモン(副腎皮質刺激ホルモン)の筋肉注射(ACTH療法)が有効とされています。

てんかんの子どもを持つ保護者が気をつけたいこと

てんかんを疑う症状が見られたら、すぐに医師の診察を受け、てんかんの診断が出た場合は、医師の管理の下で治療を進めていくことになります。そのうえで、てんかんの子どもを持つ保護者の方には次のことに注意して、子どものサポートをしていただきたいと思います。

定期的な服薬管理、副作用のチェック

多くのてんかんでは、長期にわたる服薬が必要になります。医師の指示通りに、薬の飲み忘れなどがないようにお薬の管理を。

睡眠時間の確保

とくに幼児期から学童期までは、睡眠不足はてんかんの発作を誘発する因子の1つと考えられています。睡眠不足にならないように生活のリズムに気を配ってあげましょう。

行動の観察(単独行動を避ける)

てんかんがあるからといって過度に気を配ることはなく、できるだけほかの子どもと同じように育てていくことが子ども本人の成長にとって重要です。しかし、発作が起こったときに危険のある場所には1人で行かないようにしましょう。例えば、海水浴に行くときなどは保護者の目が届くところで遊ぶようにしましょう。

劣等感を持たせない

成長するに連れて、子ども本人も自分の病気を理解します。そのときにてんかんという病気による日常生活の制限ばかりに目を向けさせないように、その子が得意なこと、取り組んでいて没頭させることを見つけておくことが大切です。長期間、治療を続ける中では保護者の方にも大変なことはあるはずですが、子どもが楽しい!もっとやりたい!と思えるものを一緒に探してあげてください。

(取材・文/たまひよONLINE編集部)

監修/榊原洋一 先生

初回公開日 2017/8/18

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