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子どもの先天性代謝異常症の症状、原因、診断、治療

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先天性代謝異常症は、遺伝子の変異によって体の中の物質の合成や分解に必要なさまざまな酵素が作られなかったり、不足したりすることで起きる病気の総称です。治療しないと、子どもの発達を阻害したり、命に関わったりする病気ですが、いくつかの先天性代謝異常症は、新生児のうちに病気を見つけ、適切な治療を行うことが可能です。ここでは、先天性代謝異常症と、新生児に行われる「新生児マス・スクリーニング検査」について解説します。

先天性代謝異常症とはどんな病気か

先天性代謝異常症は、生命を維持するための細胞の働きに必須の物質の合成や分解(代謝)に必要な酵素が、遺伝子の変異によって生まれつき欠損していたり、不足したりしていることが原因で起きる病気の総称です。ここで言う代謝とは、食事や呼吸で体内に取り込んだ栄養素や水分、酸素を、糖、脂質、アミノ酸など の細胞の活動に必要なほかの物質に換えていくことと、反対に、不要なものを分解して体外に排出する機能のことを指します。この代謝は身体のさまざまな臓器や器官の細胞内酵素の働きによって行われますが、遺伝子の変異によって特定の酵素が欠損していて、糖代謝やアミノ酸代謝、脂質代謝、金属代謝などがうまく機能しない状態が、先天性代謝異常症というわけです。欠損している酵素によって現れる症状、治療法などはさまざまです。

先天性代謝異常症の原因

両親の遺伝子(DNA)の組み合わせによって、子どもが先天性代謝異常症となる場合があります。人間には22対(44本)の「常染色体」と2本の「性染色体」(男:XY、女:XX)があります。子どもは、父親と母親それぞれから1本ずつ染色体を受け継ぎ、2本で1ペアとなります。遺伝の病気には、常染色体の片方の中に含まれる遺伝子に変異があれば発症するもの(常染色体優性遺伝の病気)と、常染色体の両方の遺伝子に変異があるときだけ発症するもの(常染色体劣性遺伝の病気)があります。多くの先天性代謝異常症は、常染色体の両方の遺伝子に変異があるときだけ発症する病気です。つまり、先天性代謝異常症は、原因となる遺伝子を持った染色体を保持している両親(どちらも発症はしていない)から生まれた子どもが発症することがある病気なのです。

先天性代謝異常症の主な種類

先天性代謝異常症は、遺伝子の変異でどの酵素が正常に作られていないかによって、病気の種類が分類されます。アミノ酸を代謝する酵素が正常に作られないアミノ酸代謝異常症、糖質を代謝する酵素が正常に作られない糖質代謝異常症などがあり、100以上の疾患があります。以下は、主な分類と具体的な疾患名です。

アミノ酸代謝異常症

食物中のタンパク質は消化管の中で分解されていろいろな種類のアミノ酸になりますが、代謝機能がうまく働かないとアミノ酸の代謝ができず、さまざまな障害を起こします。
例)フェニルケトン尿症、高チロシン血症(1型、2型、3型)、メープルシロップ尿症、プロリダーゼ欠損症など

有機酸代謝異常症

有機酸と呼ばれる物質が体内にたまって障害を起こします。
例)メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、β-ケトチオラーゼ欠損症など

糖質代謝異常症

例えば、食物に含まれる糖質は小腸でガラクトース、グルコース等に消化されますが、ガラクトースに関する代謝がうまく機能しないことで、血液中にガラクトースが蓄積し、さまざまな障害を起こします。
遺伝性フルクトース不耐症、ガラクトース血症、ガラクトキナーゼ欠損症など

脂肪酸代謝異常症

全身性カルニチン欠損症、中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、三頭酵素欠損症など

ミトコンドリア病

細胞の中にあるミトコンドリアという小器官にある酵素が欠損することによって起こります。ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、フマラーゼ欠損症など

先天性代謝異常症の症状

代謝がうまく機能しないと、特定の物質が体内にたまりすぎたり、必要な物質が作られなかったりすることになります。それによって現れる症状はさまざまですが、成長が妨げられたり、肝臓や脾臓、骨格などの異常が現れたりします。そして多くの先天性代謝異常症では、知的な発達の遅れやてんかんなどを伴います。

先天性代謝異常症の治療

先天性代謝異常症は、酵素の異常によって栄養素の代謝がうまく行われないことが原因で起きる病気です。根本的な治療方法は今のところなく、代謝できない栄養素を含む食品を摂らない(例えば、フェニルケトン尿症の乳児には、代謝できないフェニルアラニン成分を除いた治療用特殊ミルクを与える、など)、有毒な物質を体外に出す薬を飲む(カルニチンの投与)といった治療を行います。

先天性代謝異常等検査「新生児マス・スクリーニング」

先天性代謝異常症があるかどうかを調べるために、生まれたばかりの赤ちゃんを対象に「新生児マス・スクリーニング」という先天性代謝異常症の検査が行われています。先天性代謝異常症は、病気に気づかず放置したままだと、神経障害が出たり、命にかかわったりする障害があるため、すべての赤ちゃんを対象に新生児のうちに病気を見つけ、適切な対応を施す国の政策として行われている予防事業です。
生後4〜6日の赤ちゃんの足の裏から血液を採取し、先天性代謝異常症と一部の内分泌疾患についてスクリーニングします。2011年までは先天性代謝異常症のうち4つの疾患が対象でしたが、現在は17の病気が検査でわかるようになりました。ただし、先天性代謝異常症のうち検査できるものは、比較的出現の頻度の高い疾患で、乳児期からの治療が有効なもので、すべての先天性代謝異常症が検査対象になっているわけではありません。

「新生児マス・スクリーニング」で発見できる病気

・アミノ酸代謝異常症の5疾患:フェニルケトン尿症やメープルシロップ尿症など
・有機酸代謝異常症の7疾患:メチルマロン酸血症やプロピオン酸血症など
・脂肪酸代謝異常症の4疾患:中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症や三頭酵素欠損症など
・糖質代謝異常症の1疾患:ガラクトース血症

「新生児マス・スクリーニング」検査の結果はいつわかるか

検査後1〜2週間程度で出産した産科医療機関に結果が連絡されます。異常が疑われる場合は、再検査や精密検査が行われることになります。

「新生児マス・スクリーニング」検査の費用

「新生児マス・スクリーニング」検査は国の事業であり、検査は無料で受けられます。ただし、採血に必要な費用は自己負担となる場合があります。

(取材・文/たまひよONLINE編集部) 

監修/榊原洋一先生
東京大学医学部附属病院小児科医長、お茶の水女子大学副学長などを務める。「子ども学」の研究のため、ベネッセコーポレーションの支援のもと設立されたCRN(チャイルド・リサーチ・ネット)所長。発達障害など子どもの心と体の研究の第一人者。お茶の水女子大学名誉教授。

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