親子で楽しみながらできる! プログラミング的思考力がつく遊び方
2020年度から小学校の必修科目となるプログラミング。「まだうちの子どもは小さいし…」と思っていても、子どもはあっという間に大きくなります。また逆に、「何かをしないと乗り遅れるかも!」とあせっているママ・パパも多いのでは…? 子どもにプログラミング思考の基礎を身につけさせるには、幼児期にどのようなことをしておけばいいのでしょうか? 世界20ケ国以上で翻訳されているプログラミングの知育絵本『ルビィのぼうけん』シリーズ(翔泳社)著者、リンダ・リウカスさんに、幼児期でもできる「プログラミング的思考力がつく遊び方」を聞きました。
手を使って、体を使ってプログラミング的思考を身につける
――日本では2020年から小学校でのプログラミング教育が始まります。就学前の5歳以下の子どもが、今のうちからやっておいたほうがいいことはありますか?
リンダ・リウカスさん:私個人の意見としては、5歳以下の子どもにプログラミングを教える必要はないと思います。よっぽど子どもがプログラミングに興味を持っていない限りは、親から何かをしてあげる必要もないでしょう。私がこれまで見た中では、3~4歳からプログラミング教育に近いことをしている例がありますが、それはプログラミングを学ぶというよりは、シーケンス(命令の連続)や条件分岐(枝分かれした2つの選択肢から一つの処理を実行させる)といったコンピューターサイエンスの基本的概念を学んでもらうものです。
――どのようにして、コンピューターサイエンスの基本的概念を学ばせるのですか?
リンダ・リウカスさん:たとえば私が行っている親子ワークショップでは、コンピューターが同じ処理を繰り返す「ループ」という概念をダンスで学んでもらっています。次のような振り付けを繰り返す遊びです。
「手をたたく」
↓
「手をたたく」
↓
「足ぶみ」
↓
「足ぶみ」
↓
「手をたたく」
↓
「手をたたく」
↓
「ジャンプ」(※最初に戻る、あるいは終わる)
同じ処理を繰り返し、それを決まった回数や何かの合図で終わらせることは、プログラミングの処理でもよく使われます。ダンスの遊びでは、振り付けの中に「まわる」や「キック」を入れたり、オリジナルのパターンを作ってもらったりした後、自分の生活の中にはどんなループがあるのかということも考えてもらいます。
――その遊びは小さな子どもでもできそうですね。ほかにも親子でできる遊びはありますか?
リンダ・リウカスさん:私の本の中で、紙でコンピューターを作るアクティビティー(練習問題)を紹介しています。紙に描かれたキーボードやCPU、ディスクなどの部品をはさみで切って、のりではってコンピューターを組み立てる遊びです。実際に目で見て、触ってみることで、コンピューターが身近に感じられるようになると思います。紙のコンピューターのイラストは『ルビィのぼうけん』のウェブサイトからダウンロードできるので、プリントアウトして遊んでみてください(→翔泳社のホームページからダウンロードできます)。
――折り紙やお絵かきの創作対象として動物や車などが一般的ですが、コンピューターも子どもの創作対象になりうるんですね。
リンダ・リウカスさん:『ルビィのぼうけん』シリーズは今までに3冊出していますが、1冊目の第1版を読んだ5歳の子たちは、今8歳になっています。その子たちからすると、「テクノロジーっていうのはとっつきやすくて、面白くて、もっともっと学べるもの」なんです。このアルゴリズムはこうだとか、サーバーとは何かとか、本に書いてあるすべてのことを頭に入れているわけではありませんが、テクノロジーに対する恐怖心がありません。幼児期で大切なことは何かというと、このように恐怖心をなくすことだと思います。
――恐怖心がなくなると、子どもは自分からどんどん覚えていきそうですね。
リンダ・リウカスさん:幼児期というのは人格形成の重要な時期です。とくに、物事を信じる、自分を信じる、他人を信じる、そして認識力をつけることが大事。そのためには読み聞かせや、ごっこ遊びなども、プログラミング的思考を身につけさせる基礎になると思います。この時期に大切なのは、子どもたちに物事への興味を持たせるということ、創造性とイマジネーションを高めることです。逆に何かを記憶させるようなことはまだ重要視しなくてもいいでしょう。テクニカルな技術とともに、イマジネーションを持った子どもたちが、これからの時代の先駆者になっていくと思います。
プログラミング教育が始まるといっても、ママ・パパはあわてなくても大丈夫そうです。それよりも絵本の読み聞かせや、お絵かきや折り紙など、これまで通りの子どもらしい遊びをして想像力を伸ばすことが、新しく始まるプログラミング教育を受ける上でも大切な基礎となるようです。「コンピューターは苦手だ」というママ・パパも、普段の遊びの中からプログラミング的思考を意識してみるといいかもしれません。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
プロフィール/リンダ・リウカスさん
フィンランド・ヘルシンキ出身のプログラマー、作家、イラストレーター。世界中の人々にプログラミングの基礎を学んでもらうために、さまざまな活動を展開。著書『ルビィのぼうけん』シリーズは世界20ケ国以上で翻訳されるベストセラーに。