ベストセラー絵本作家に聞く! ここが違うよ! 世界と日本のプログラミング教育
日本では2020年から小学校で必修化されるプログラミング教育ですが、世界ではすでにプログラミング教育が始まっている国もあります。世界20ケ国以上で翻訳されているプログラミング絵本のベストセラー『ルビィのぼうけん』シリーズ(翔泳社)の著者であるリンダ・リウカスさんの母国フィンランドでも、2016年から小学生らがプログラミング教育を受けています。プログラミング教育の世界的な普及にも尽力されているリンダ・リウカスさんに、世界と日本のプログラミング教育について聞いてきました。
「正解か不正解か」にとらわれずに自由に考えさせる
――リンダさんはプログラミング教育の普及のために世界中をまわられています。各国を巡りながら感じたことはありますか?
リンダ・リウカスさん:いくつかの国を訪れるなかで感じたのは、どこの国でも親の考え方にはそんなに差がないということ。日本の親も、ドバイの親も、フィンランドの親も、「子どもたちはこれからどのような世界を生きていくのだろう」と、共通して子どもたちの将来について不安に思っているんです。
――世界のトレンドとして気がつくことはありますか?
リンダ・リウカスさん:今年とくに顕著だったのが、音声認識技術の浸透です。コンピューターにしゃべりかけるということを、フィンランドの子どももシンガポールの子どもも日本の子どももしています。これは私たちの世代とは大きく異なる点だと思います。今の子どもたちの世代は、コンピューターの音声認識機能を身近に感じています。
――日本では2020年から小学校でのプログラミング教育が始まります。一足先に2016年からプログラミング教育が始まっているフィンランドでは、いろいろな科目にまたがってプログラミング的な思考を教えているようですね。プログラミングを横断的に学ぶことのメリットはどんなところにありますか?
リンダ・リウカスさん:問題を解決するツールだということを認識できることがメリットだと思います。さらに、自己表現をするツールであるということもわかってもらえる。たとえば社会にはいろいろな問題がありますが、それをどういうふうに解決すればいいのかを考えるときに、プログラミング教育で学んだ問題の解決方法が役に立つと思います。
――逆に、プログラミングを横断的に学ぶことのデメリットは?
リンダ・リウカスさん:この学校ではこういう教え方をしていたのに、別の学校では違う教え方をしている、ということが起こると思います。プログラミング教育の内容が、学校によって大きく違ってしまっては問題なので、そこはしっかりコントロールしないといけないと思います。
――リンダさんは日本でもワークショップを開かれています。日本の子どもたちにはどのような特徴があると感じていますか?
リンダ・リウカスさん:日本の子どもたちは、正解か不正解かを気にしていて、考え方が二択になっているような印象を受けます。そうではないことを伝えないといけない。コンピューターサイエンスにおいて、答えは1つではありません。いろいろなやり方があります。プログラミングを学ぶ方法も一つではなく、いくらでもあるので、大人たちが子どもたちにどのように教えるかについても、考えていかなければいけないと思います。
――もしもリンダさんが、日本のプログラミング教育のカリキュラムを作るとしたら?
リンダ・リウカスさん:日本で『はじめてのおつかい』というテレビ番組を見たことがあります。初めておつかいに出かける子どもを、大人たちが見守って、「困っている」と言われたら助けてあげる。プログラミング教育も、そういうものにしたらいいと思います。子どもの自主性に任せて、ある程度守られていないところまで行かせる。そして自分で問題を解決させる。大人たちはその様子を見守っている。そうすると学校の先生たちも、必要なものだけ渡して「いってらっしゃい」というだけでいいし、子どもたちは未知のことに対して好奇心を持ってクリエーティブに取り組めるようになると思います。
世界的にも始まったばかりのプログラミング教育。学ぶ方法は1つではないということで、これからいろいろな形が模索されそうです。子どもよりも親のほうが不安に思うこともあるかもしれませんが、未知の体験を親子で一緒に取り組むと楽しいでしょうね。いったいどういったことを学ぶのか気になるというママ・パパは、まずリンダさんの絵本からプログラミング教育の入り口部分をのぞいてみるのもいいかもしれません。日本で先行してプログラミング教育が行われている一部の小学校でも、リンダさんの絵本『ルビィのぼうけん』シリーズが導入されています。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
プロフィール/リンダ・リウカスさん
フィンランド・ヘルシンキ出身のプログラマー、作家、イラストレーター。世界中の人々にプログラミングの基礎を学んでもらうために、さまざまな活動を展開。著書『ルビィのぼうけん』シリーズは世界20ケ国以上で翻訳されるベストセラーに。