【要注意】子どもの転落事故は「2歳~4歳」がピークに!
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近年、ニュースに取り上げられる機会が増えているのが「子どもの転落事故」です。
・子どもの転落事故は行動力が増す小学生になってから
・高層階からの転落事故が多い
と思っていませんか?
実は、子どもの転落事故に関して、イメージと実態が異なっている要素がいくつか存在しているのです。
今回は、「子どもの転落事故の実態」と「対策・注意ポイント」などに関して防災アドバイザーの榑林宏之さんにお話しいただきました。
榑林 宏之
一級建築士・防災アドバイザー
一級建築士として活動。「都市環境・住宅環境と防災」「都市環境・ランドスケープ計画における、人の行動・動線設計と危機管理」などに携わっています。
BAUMPLANNING一級建築士事務所
転落事故は「2歳~4歳」の子供に多く発生しています
マンション住まいの方が増加する中、毎年一定数の「子どもの転落事故」が発生しています。
過去10年の統計から転落事故(※)の平均数を算出すると「約15人/年」という数値が導き出されます。ひと月に一件の子どもの転落事故が生じていることとなります。
「子どもの転落事故」に関して、一般的なイメージと実状に乖離のある「2つの要素」が存在しています。それが、
・転落事故は「2歳~4歳」の子どもに多く発生。
・高層階よりも実は「2階」からの転落事故が最も多い。
ということです。
※出典:東京消防庁所管内「子供のベランダからの転落事故に関する事故情報」
2歳児の運動能力を見誤らないようにする
一般的(アンケート調査など)には、転落事故を生じやすいのは「小学生」といったイメージがあるようなのですが、実は、子どもの転落事故統計を見ると「2歳児」の転落事故が最も多いことが分かります。
・2歳児には、すでに手すりを乗り越えるだけの十分な運動能力がある。
ということをしっかりと認識して多く必要があります。
「2歳~4歳」の子どもが転落事故を生じてしまいやすいのには、「身体バランス」が関連しているものと考えられています。
これから身体が成長する、「2歳~4歳」の頃は、身体的特徴として“頭部の重さ割合が高い”のです。
簡単に言うと、重心が頭部に寄っているため、手すりを乗り越えた時に、バランスを崩して落下しやすい(頭部の重さで落下)のです。
子どもの転落事故が多く発生する場所とは?
転落事故というと高所からの転落をイメージする方が多いものと思います。
それはニュースなどにて取り上げられる転落事故の多くがマンションの高層階からの転落であることに起因しているものと考えられます。
しかし、実状はそんな印象とは大きく異なっており、子どもの転落事故の過半(50%以上)が“2階”からの転落なのです。
ゆえに、統計的に「死亡事故」に至るケースは多くありません。とはいえ、2階からの転落事故にて、重傷となるケースも少なくありませんので、マンションのみならず、戸建て住宅においても「子どもの転落」に対する危機管理は十分対策を講じおく必要があります。
「手すり」に関する法規制の実状。戸建住宅に潜む危険性!
“転落防止”に関連して、現在の建築基準法では、3階以上の建物やマンションなどのベランダの手すり及び高層階の窓に関して、「高さを1.1m以上」とする規定が存在しています。
ただ、築年数が経過しているアパート・マンションなどでは、規制に準じた手すり高さが確保されていないことも、少なからず存在していますので注意が必要です。
この「手すり高さの規定」は、残念ながら“戸建て住宅”には適用されていません。
しかし、常識的な設計者であれば、規定はなくともベランダの手すり高さはしっかり「1.1m」を確保した設計としています。
一度、「ベランダの手すり高さ」を確認してみてはいかがでしょうか。
住宅選びの参考に。安全性の高い手すり形状とは!?
実は実証実験から、2歳児でも通常形状の「高さ1.1mの手すり」を乗り越えることが可能なことが分かっています。
ですから、手すりの「高さ1.1m」があれば、絶対転落事故が起きないわけではないということをぜひ認識しておいていただければと思います。
ただ、近年、実証実験結果に基づいて一般的な「2歳~4歳」の子どもでは、乗り越えられない(乗り越えにくい)手すり形状が見出されています。それが、
●手すり本体(手すり壁)よりも、笠木が手前側に飛び出ている形状の手すり
です。
乗り越えようとするときの“持ち手”となる「笠木」が手前側に飛び出ていると、手すりを容易に乗り越えることが出来ないことが実証実験から分かったのです。
そんな実験結果を受けて、最新のマシンョンなどでは、笠木が出前にあるデザインの手すりを使用し始めています。
これから新たに住宅選びをするのであれば、「手すり形状」も検討要素に加えてみてはいかがでしょうか。
子どもの転落事故を防止するための対策・注意点
子どもの転落事故を防止するためには、住宅環境を整えておくことがとても大切なポイントとなります。
そんな子どもの転落事故を防止するための代表的な対策・注意点を箇条書きにてご紹介いたします。ご参考にしていただけますと幸いです。
・バルコニーへ出る窓や腰高窓には、子どもの手の届かない位置に補助錠を付ける。
・窓にも必要に応じて、「手すり」を設置する。
・バルコニーに転落防止柵を取り付ける。
・バルコニーに、足台になるもの(台、プランター、植木鉢など)を置かない。
・エアコン室外機を手すりから離れた位置に設置する、(最低50cm以上の離隔)
・子どもをバルコニーで遊ばせない。
子どもの転落事故は、一般的なイメージと実状が乖離している要素が存在しています。
特に「低層階だから安心」と考えていることが最も危険であることを再認識。
まずは、現在の住宅環境(手すりの高さ、足台となる要素の有無など)をしっかりと把握しましょう。その上で不足があったときは、適切に住宅環境を整えていただければと思います。