【専門家監修】赤ちゃんが生まれたら税金ってどうなるの? 扶養控除ってなんだっけ?
赤ちゃんが生まれたら、生活や仕事、社会的な責任も大きく変わってきます。ここでは、赤ちゃんが生まれた時に税金について会社や役所へどんな手続きをすればいいか、それによって、税金はどう変わるかについて税理士の須栗一浩さんにお話しいただきました。
文中の「所得税」は国の税金、「住民税」は都道府県と市区町村の税金を指します。
子どもが生まれた時に会社へ提出する税金の書類は何があるの?確定申告の場合は?
会社に勤めている人は、子どもが生まれた時に扶養家族が増えたことを会社へ知らせることになります。所得税では「扶養親族」というものです。年末調整の書類の中に翌年の「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」という横長の用紙に記入しているはずです。扶養している家族に異動があった場合等には、もう一度この用紙に記入することになります。用紙の一番下の「住民税に関する事項」という箇所に、生まれた子どもの氏名等を記入して会社へ提出します。
また、会社へお勤めではなく、2月~3月に確定申告をされている方は、生まれた年の翌年に申告書を提出するときに確定申告書に記入することになります。2018年の様式でいうと、第二表の左下「住民税に関する事項」の「16歳未満の扶養親族」の欄に記入します。
扶養控除ってなんのこと?
前項で子どもが生まれた時に記入する書類について説明しましたが「あれ?記入する欄が、扶養控除を受ける欄ではない?」と思われた方、その通りです。
2019年現在の所得税・住民税では、子どもが16歳未満(年少者)の場合、所得からの控除がありません。2010年の税制改正で、子ども手当の創設とともに年少者の扶養控除が廃止されたことによります。
では、なぜ控除もないのに別のところに記入しなければならないのか。それは、住民税を計算するときに「非課税限度額」と呼ばれる別の計算があるためです。これには、扶養親族の人数に応じて、非課税限度額の金額は変わり、その金額以下になる場合には、住民税は課税されないという制度です。ただ、各自治体によって金額や税額がさまざまなため、詳しくは自治体に問い合わせてください。
また、万が一、子どもが障害者手帳を受けることがあった場合には、所得税・住民税の控除に障害者控除があります。これは年齢に関係なく受けることができます。
出産費用は医療費控除を受けられるの?
出産はお金がかかるものです。この出産に伴う支払いも医療費控除の対象になります。しかも、家族間での医療費と合算できるので、ともかく各領収書は取っておいて、1年間まとめて合計した結果で適用できる金額になれば、控除を受けることができます。
出産の際の医療費控除の対象になる支払いは、自費診療でも対象になるものがあります。まず、妊娠と診断されてからがスタートになり、定期検診や検査費用、公共交通機関を使った場合の交通費、入院中の食事代も含めることができます。割と細かいので、対象かどうかは、集めながら確認していくのがいいでしょう。バスや電車などは、通院した日にちと金額をメモなどで取っておきましょう。また、健康保険組合などから支給される出産一時金は、出産費用の合計から差し引かなければなりません。したがって、一時金の方が多い場合には、医療費控除の対象になる出産費用はゼロになってしまいます。ただし、一時金が多い場合でも、所得税の課税対象になったり、ほかの医療費から差し引いたりする必要はありません。
以上のように、普段ふれることがない難しい内容が多くあります。詳細は、会社や市区町村の自治体、税理士などに確認しましょう。税理士は、大体決まった場所で定期的に無料相談会を開催しています。税理士会のホームページなどで確認して質問してみてください。
初回公開日 2019/10/12