【小児科医監修】「嘔吐下痢」と「ウイルス性胃腸炎」何が違うの?
昨夜から嘔吐が止まらないと来院した、1才の男の子とそのお母さん。昨夜かかった救急外来では「嘔吐下痢」とのこと、でも吉永小児科では「ウイルス性胃腸炎」と診断されました。異なる病名で診断されたことに、不安顔。そんなお母さんに、先生がした説明とは…?
赤ちゃんやママ・パパにいつもやさしく寄り添う陽ちゃん先生こと、小児科医の吉永陽一郎先生が、日々の診察室で起きた、印象深いできごとをつづります。育児雑誌『ひよこクラブ』でも長年監修として活躍中です。「小児科医・陽ちゃん先生の診察室だより」#13
昨夜から続く嘔吐のため受診
来院したのは、昨夜から嘔吐が数回あり、深夜に救急病院で診察を受けた1歳の男の子です。今日になっても吐いていると当院を来院しました。
早速、診察をしました。聴診器で音を聞くと、腸の動きがやや強くなっているようです。脱水はあまり強くありません。
ーー ウィルス性の胃腸炎ですね
「そうなんですか? 昨日かかった救急病院の先生は“嘔吐下痢”だと言っていたので…。あの先生ったら、下痢もないのに“嘔吐下痢”って言ったんですよ」
まるで、診断が間違っていたような言い方です。
――どちらの診断も間違ってはいませんよ。ウイルス性の胃腸炎についているニックネームが、嘔吐下痢なんですから。
「それなら、どちらも同じ病気ということでしょうか?」
――そうです。吐いたり下痢をしたりする急性胃腸炎には、いろいろな原因があります。そのうち、病原体によるものを“感染性胃腸炎”と言います。“急性感染性胃腸炎”と“急性”をつけてもいいですが、長くなるので、省略する事が多いですね。
「その名前は聞いた事があります。よくわからないのですけど…。」
――この“感染性胃腸炎”のうち、さらに細菌によるものと、ウイルスによるものがあります。そのうち、ウイルスによるものを“ウイルス性胃腸炎”といいます。これも急性が省略されていますね。
「ややこしくて、なんだかゴチャゴチャになってきました…」
――確かに、まぎらわしいですよね。覚えておきたいのは、胃腸炎の中で子どもがかかる頻度が高いのは“ウイルス性胃腸炎”だということ。そして“嘔吐下痢”とは、そのニックネームのようなものなのです。症状が嘔吐だけでも下痢だけでも“嘔吐下痢”と呼ぶんですよ。
「そうだったんですか。それでは、昨日の先生も、吉永先生も、同じ病気のことを言っているのですね」と、お母さんも一安心な様子になりました。
下痢が出ないと嘔吐が続く!?
――最後のうんちはいつですか。
「昨日はしていないので、一昨日かな。下痢はないんです」
――浣腸をして、便を出しましょう。
「え、嘔吐下痢なのに浣腸するんですか?」
――下から出ないとね、上からばかり出ます。嘔吐の子どもたちは、だんだん下痢になって治っていくことが多いんです。下痢から始まった子は、吐かずに済むこともありますね。
「じゃあ、下痢したほうがいいんですね」
――そうですね。うんちが止まっているよりは、出てくれたほうがいいです。
浣腸をしてみると、はじめにかたい便が出て、その後、やや色の薄い下痢便が出てきました。こうやって二種類の便が確認できれば、その後の排便をじゃまする便は出たと考えていいでしょう。便を出した男の子の顔にはやや赤みが差し、表情も楽になったように見えました。お母さんには、水分摂取が大切だという話や、家族に移さないようしっかり手洗いをすることなどを話しました。
一般的に、胃腸炎の原因はさまざまなものがあります。毒になるような化学物質を誤って飲んでしまった場合や、薬が原因の場合、菌やウイルス、寄生虫が原因の場合もあります。しかし、患者が子どもなら、ウイルスによることが多いもの。中でも、冬に流行するロタウイルス、ノロウイルスが有名です。注意して冬を乗りきりましょう。
(構成/ひよこクラブ編集部)
初回公開日 2020/02/07
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