お肉から始める!? 「赤ちゃんの食事」WHOの補完食の考え方について【小児科医】

「補完食」って聞いたことがありますか? 補完食とは、WHO(世界保健機関)が提唱する栄養を重視した乳幼児向けの食事のこと。日本では、まだ広く知られていませんが、ヨーロッパやアメリカなどでは補完食の考え方が主流となっています。補完食に詳しい、小児科医 工藤紀子先生に概要について聞きました。
科学的根拠に基づいた補完食! 体重の伸びで悩んでいる子は、とくに栄養を意識して
補完食とは、科学的根拠に基づきWHO(世界保健機関)が提唱する、乳幼児が必要な栄養を補うための食事のこと。工藤先生は、日本の離乳食の考え方とは異なる部分が多いと言います。
「日本では、2019年に厚生労働省が『授乳・離乳の支援ガイド(以下支援ガイド)』を改正し、現在、日本の離乳食は、厚生労働省が定めるこの支援ガイドに沿って指導が進められています。
支援ガイドの中では“WHOでは補完食という”というようなことに触れられてはいますが、日本の現状の離乳食との違いについては解説されてはいません。
今、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、ヨーロッパなどでは補完食の考え方が主流です。また発展途上国でも補完食を推奨しているところが多いです。理由は、子どもの栄養強化が国力向上につながると考えられているためです。
私は、子どもの発育・発達を考えると、日本でも補完食の考え方を取り入れたほうがいいと思っています。とくに小さく生まれた赤ちゃんで、産院などで定期的に発育・発達のフォローアップや個別栄養相談を受けていない場合は、補完食を取り入れたほうがいいでしょう。2200~2500gで生まれた赤ちゃんだと、フォローアップや個別栄養相談を受けていないケースが多いです。また体重の伸びで悩んでいる子にも、補完食はおすすめです」(工藤先生)
補完食では、最初から2回食が基本! 補完食の特徴とは!?
補完食の主なポイントは、次のとおりです。
●補完食の開始目安は、5~6カ月ごろ。首がすわって寝返りができ、食べ物をじっと見るなど、食べ物に興味を示すようになったら始めどき。補完食の卒業は2歳ごろが目安。
●補完食を始めても、母乳・ミルクは続ける(WHOは2歳まで授乳を続けることを推奨している)。授乳時間などは気にせず、子どもが欲しがるだけ授乳する。
●最初から2回食を与える。目安としては、5~6カ月ごろで2回食。6~7カ月ごろで3回食。1歳までには3回食+補食(2回)。ただしどの月齢も食べないときは無理して与えなくてOK。
●最初は、子どもの様子を見ながら1~2さじから始め、徐々に量や食材の種類を増やす。
●与える食材は、エネルギーと栄養が豊富なものを中心にする。とくに鉄、亜鉛、ビタミンA、ビタミンD、カルシウムの摂取を重視する。
「補完食を与える回数を見て“こんなに食べさせたら、胃腸に負担がかからない?”と思うママやパパもいるかもしれませんが、心配はいりません。諸外国では、補完食の考え方が主流です。外国の赤ちゃんは大丈夫なのに、日本の赤ちゃんだけ胃腸に負担がかかるということはありません」(工藤先生)
水っぽいおかゆはNG! 5~6カ月でも5倍がゆのかたさが目安
5~6カ月で補完食を始める場合は、どんなものから食べさせるといいのでしょうか。
「補完食は、乳幼児に必要なカロリーや栄養を補うことが目的ですが、10倍がゆなど水分が多いものは、カロリーや栄養が少ないです。そのためおかゆは、スプーンにのせて傾けても、たれ落ちないぐらいのかたさを目安にしてください。5~6カ月でも、なめらかにつぶした5倍がゆぐらいのかたさから始めてOKです。厚生労働省が定める支援ガイドでも、つぶしがゆから始めるように記載されています。
野菜の裏ごしなどを与えるときも、ポタージュ状やペースト状のかたさを目安にしましょう。とくにビタミンAがとれる野菜(にんじん、かぼちゃなど)は、意識して与えてください。ビタミンAは目の健康や、体の抵抗力を高めるのに欠かせない栄養です。
また補完食では、初期からお肉を与えることもすすめています。とくに発育・発達を促す鉄や亜鉛は、赤みの肉やレバーに多く含まれているので、乳幼児期は積極的にとってほしい食材です。
調理法は、日本の現状の離乳食とそんなに変わりません。離乳各期の作り方を参考にして、すりつぶしたり、とろみをつけたりして食べやすいように工夫してください。かたさの参考にはベビーフードを活用してみましょう」(工藤先生)
取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
工藤先生は「離乳食の場合、1回食だとワンチャンスと考えて、食べないと翌日に持ち越してしまい、なかなか進まないケースが多い」と言います。しかし補完食は2回食から始めるので、食べる練習が進み、食材の種類も増えやすいのがメリットだそう。離乳食につまずいて悩んでいるママはやパパは、補完食の考え方を取り入れてみるのも一案です。
進め方と作り方がわかるはじめての『補完食』