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上司に「ごめん」と言われたら育休なんてとれない…。男性育休が取りにくい現状は変わるのか?【経済学者】

若いアジア家族のソファーでリラックス
itakayuki/gettyimages

政府が2022年度以降の施行をめざし検討している育児・介護休業法の改正案では、産後8週までに最大4週取れる「男性産休」の新設や、夫婦で交互に育休を取得できるようになるなど、これまでより柔軟な育休取得が可能になる見通しです。
東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎先生に、働き方の面から見た日本の男性育休の現状と、法改正により育休取得は進むのかについて話を聞きました。

世界一の育休制度なのに、取得率が低い理由は?

――日本の育児休業制度は世界一といわれる一方で、2019年度の取得率は7.48%と伸び悩んでいます。取得しにくい理由には、収入面の不安が大きいといわれています。

山口先生(以下敬称略) 現行制度では育児休業給付金に加え税金や社会保険料の免除があり、育休中には実質80%の収入が保障される計算です。しかし、これにはボーナスは含まれませんし、これから子育てにお金がかかるとわかっている中で、2割も収入が減ると負担に感じますよね。夫婦で家計を話し合った結果、一方だけが育休を取ろうという決断に至るのも当然とも言えます。

収入面での不安を改善するには、たとえば最初の1カ月は男女問わず実質100%保障になるよう、給付金の引き上げをめざす必要があると私は考えています。国の財政的に厳しいのは理解できますが、仮に8割の人が男性育休を1カ月取得することを目標とするなら、1カ月は金銭的な不安がなく休みを取れる制度は必要だと思います。

――収入以外では、会社や上司に育休取得を申請しにくい雰囲気があったり、会社の制度が整っていないという場合もあります。この職場環境についてはどうお考えですか?

山口 法律上は企業は育休申請を断ることはできませんし、拒否した時に罰金や企業名公表などの罰則もあります。しかし、メンバーシップ型の雇用形態が多い日本では、上司に「ごめんね、取らせてあげられないんだ」と言われて引きさがらざるを得ないという話も聞きます。労働者が自分の権利を主張して戦うことが難しいという現実がありますよね。さらに、自分の上司や先輩が育休取得できない姿を目にすると、会社で育休制度が整備されているかどうかそもそも調べてもしょうがないという考えが働くのでしょう。そのため、制度についての知識が不十分であるのだと思います。

この悪循環には、日本の組織のマネジメント力不足が現れているといえます。育休で欠員が出ている間、どうやって仕事を回すかを考えるのは、本来は管理職の役割です。育休は事前にいつ人が抜けるのかが数カ月前にわかりますよね。大企業なら十分なリソースは持っていますし、中小企業でも金銭的な手当の制度もありますから、まずはそういった職場環境を整えるべきです。働きやすい職場環境であれば、優秀な人材を確保できるということも認識する必要があります。

育休を取りにくい、職場環境は改善される?

――2022年度以降に施行が予定されている育児休業制度の改正案では、企業から育休対象者へ取得を働きかけることも義務づけられるそうですね。

山口 はい。これは、形式が充実していても取得率が上がらなかった日本の育休制度に実効性を持たせる取り組みの1つだと思います。育休取得が従業員の権利であると説明する義務が与えられれば認知度も上がりますし、とくに大企業ではこのような法令順守は実行される方向性にあるので、ここから少しずつ育休取得が広がる動きが出てくるのではないかと思います。

――大企業は育休の人員カバーがしやすく育休申請しやすくなるかもしれませんが、中小企業にとっては制度面でどのようなフォローが必要でしょうか。

山口 現在の制度でも中小企業に対しては両立支援等助成金(育児休業等支援コース)が支払われるものの、中小企業は普段の仕事で忙しく、制度についての理解が不十分ということはよくあります。育休で欠員が出た際の代替要員確保の手続きが煩雑だったり、わかりにくくて利用されないということも。中小企業での育休取得を推進するためには、国が環境整備を支援するなどのサポートが必要です。それに加え、育休で欠員が出る際に、どのように計画的に人員配置をしてカバーしていくかというマネジメント面でのノウハウのフォローがあるといいと思います。

法改正で、さらに柔軟な育休取得が可能になる

――育休制度の改正によって、労働者側も取得しやすい流れになると考えられますか?

山口 制度が改正され、男性も育休のほかに妻の産後8週までに最大4週まで産休が取れたり、女性も2分割で育休が取れるようになれば、多様な働き方に合わせた柔軟な育休取得が可能になると思います。また、勤務1年未満のパートや派遣社員も育休が取れることで、親になる人たちの権利が広がったことも歓迎すべきですね。
ただ、改正案では育休は2週間前までの申請が必要です。産前・産後は女性の健康状態が不安定なので、急に病院に行きたいなどの突発事象もありますよね。現在は有給休暇で対応しているかもしれませんが、こういう時に育休を使いたい人も少なくないでしょうから、急な休みは事後申請して育休にできるという柔軟さも必要だと思います。

夫が出産にあたり休んだ妻の 75%は満足している

――まだまだ課題が多い現状ではありますが、この度公表された「たまひよ妊娠・出産白書2021」調査報告では、パートナーが出産にあたり休みを取った妻の満足度は75%という結果が出ました。

山口 妻の4人に3人はパートナーが休みを取って満足しているという結果は本当によかったなと思います。夫が休みをとっても家事・育児に主体性がないなどという意見もありますが、個人の意識として、出産にあたって取った休みがポジティブに捉えられているのは、見逃せないポイントです。

また、この調査では若い世代ほど取得率や取得日数が高いという結果も出ています。今、学生と話していても感じますが、若い世代は今後のキャリアについて話す中で、「育休を取りたい」という意見も当然のようにありますし、家族形成についての価値観のジェンダーバイアスが少なくなっていると感じます。それと同時に、40〜50代の価値観も少しずつアップデートされ、肯定的な意見を表明する人が増えてきていますよね。少しずつではありますが、世の中全体が子育てにとっていい方向に向かっていると感じます。

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

お話・監修/山口慎太郎先生

育休取得をしやすくするには、法制度の改正に加え、個人の意識が変化することも大事です。育休は子を育てる親の大切な権利です。もし育休を取りたいと思っているのなら、まずはパートナーや職場に相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

子育て支援の経済学

多くの人が働き方や家族の在り方を模索する今、必要なのは「子育て支援=次世代への投資」という考え方。そのエビデンスが詰まっています。(日本評論社)

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(※)参考「たまひよ妊娠・出産白書2021 第3弾」

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