赤ちゃんの保湿剤は処方薬を選ぶべき?小児皮膚科医に聞きました
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アトピー性皮膚炎(あとぴーせいひふえん)の赤ちゃんに処方されることが多い保湿剤。処方薬と市販の保湿剤の違いや、使い分け方について、小児皮膚科医の馬場直子先生にお話を聞きました。
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処方薬の保湿剤は副作用が出ることも
生後3ヶ月ごろになると、赤ちゃんの皮膚はカサカサしやすくなってきます。こまめに保湿剤を塗ってあげているママも多いことでしょう。
2017年11月、厚生労働省が「処方薬である保湿剤(とくにヘパリン類似物質)が大人の美容目的で使われている」ことを問題視し、ニュースになりました。処方薬の保湿剤と市販の保湿剤には、どんな違いがあるのでしょうか?
「処方薬の保湿剤として、『ヒルドイド』をはじめとする“ヘパリン類似物質”があります。これは、血液を固まりにくくする物質です。塗ると血行が促進されるため、かつてはしもやけや関節痛の治療に用いられてきました。
その後、ヘパリン類似物質が水分子と強く結びつくことがわかり、保湿剤として用いられるようになりました。乾皮症<かんぴしょう>(皮脂欠乏症<ひしけつぼうしょう>)という病気への処方薬として、保険が適用されています」
乾皮症(皮脂欠乏症)とは、皮脂が減少することで皮膚の水分量が減り、乾燥する病気です。かゆみを伴ったり、かくことで湿疹(しっしん)になったりすることが。アトピー性皮膚炎には、根本に皮脂の減少や乾燥があります。そのため、健康な皮膚を維持するために、ヘパリン類似物質が処方されます。
「ヘパリン類似物質は血行を促進するため、皮膚に炎症や切り傷があると悪化することがあります。副作用のことも知っておきましょう」
処方薬のほうがいいとは限らない
市販の保湿剤より処方薬のほうが効きそうな気がしますが、馬場先生いわく、いちがいにはいえないとのこと。
「ヘパリン類似物質以外にも、水分子と強く結びつく物質があります。代表的なのは尿素、アミノ酸、セラミドです。どれが優れているということはないので、皮膚にトラブルがなければ、市販の保湿剤で十分な効果が得られます。赤ちゃんの肌に合うものを選びましょう」
市販の保湿剤を選ぶ際に、気をつけたいことについても聞きました。
「保湿剤にはいろいろな物質が含まれています。なるべく添加物が含まれていない赤ちゃん用を選び、アレルギーテスト済み、パッチテスト済みとあるものを選ぶといいでしょう」
保湿剤に含まれる主な保湿物質の種類と特徴
保湿剤にはたくさんの物質が含まれています。その中でも保湿をつかさどる主な物質には、以下のような種類があります。どんな特徴があるのか知っておきましょう。
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■監修:馬場直子先生
神奈川県立こども医療センター 皮膚科 部長。滋賀医科大学医学部卒業後、横浜市立大学医学部附属病院皮膚科講師を経て、現職。日本小児皮膚科学会会員。