多様化する家族のカタチにサポートは追いつくのか⁉
専業主婦家庭がどんどん減り、共働き家族が増えていった平成。令和になってますますその傾向は強まり、家族のカタチも多様化しています。
家族が多様化すると、どんなことが起こるのか? 今、多様化する家族はどんな困難に直面しているのか?
毎年開催されている「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム」の対話型プログラムの一つ「いろとりどりな家族のカタチ」。結婚や出産にとらわれない未来の家族について、登壇者と参加者が一緒になって話し合えるプログラムとのこと。興味を持った筆者が参加しました。
結婚や家族のカタチは 想像以上に多様化している
人がともに対話し行動するための「ソーシャルイノベーションのハブ」として、2016年より毎年開催されている「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム」。2019年度は11月29日~12月1日までの3日間にわたり、「家族を、問う」「社会を、考える」「地球と、向き合う」の3つのテーマで行われました。
小泉進次郎氏をはじめ、豪華ゲストが登壇する講演や特別企画、参加型の分野ごとの会議、次世代の社会起業家を輩出するソーシャルイノベーションアワード、参加者同士が対話する「フューチャーセッション」など、プログラムは多彩。
筆者がとくに興味を持って参加したのは、フューチャーセッションの一つ「いろとりどりな家族のカタチ」です。
法的な整備や今の社会保障・支援が 家族の多様化に追いついていない
「いろとりどりな家族のカタチ」では、最初に登壇者が各30分間の講演を行いました。
●山田昌弘教授(中央大学文学部 教授)
テーマ:日本家族の現状とこれから
「一人親、再婚家族、同性結婚、共働き、専業主婦家族など、さまざまな形の信頼関係がある『家族』を社会が認め、法整備やサポートが必要」とのお話しでした。
●江口晋太朗氏(株式会社トーキョーベータ 代表取締役)
テーマ:事実婚という家族のカタチに対する社会を取りまく現状とこれからの課題
「事実婚や夫婦別姓など、既存の法律婚以外のパートナーシップを希望したとき、だれもが平等に幸せのかたちを選べる社会になってほしい」と訴えました。
●藤めぐみ氏(一般社団法人レインボーフォスターケア 代表理事)
テーマ:「LGBTと社会的養護」
「子どもは愛情をもって育ててくれる大人、自分を見てくれ頼ってくれる大人、チームになってくれる大人を必要としている。それは里親が同性カップル、トランスジェンダーであるからと言って変わるものではない。多様な里親がいることは、子どもにとっても、いいこと」というお話しでした。
3人の登壇者の講演はどれも興味深く、30分と言わず、それぞれもう少しじっくりと深く話を聞きたいと思いました。
共通していたのは、多様な形態の家族についてと、日本社会が抱える問題点です。「戦後型家族モデル」と言われている、ほとんどの人が結婚し、離婚せずに子どもを育てていた時代から、現状は大きく変化しているのに、法的な整備や社会保障・支援はまだまだ「戦後型家族モデル」のままで、今の人たちの結婚に対する価値観や、家族の多様性に追いついていないのだとの講演に多くの人がうなずいていました。
普通の講演会であれば、話を聞いて自分で考えを巡らせるだけで終わってしまいますが、今回は各講演後、同席した人たちと想いをシェアする時間が設けられていました。
自分の想いを他人とシェアすることで アイデアが生まれる
続いて行われた「フューチャーセッション」では、登壇者の講演を聴くだけでなく、同じテーブルに座った人たちと、2分間の講演内容の振り返り(感想)と、与えられた質問に対しての自分の考えを3分間話し合う「ワーク」を行いました。
同じ講演を聴いているのに人によって関心を持つ事柄や、感じることは異なるということ、そのことを実感してもらうためというねらいがあるようです。たとえば「日本家族の現状とこれから」の講演で「専業主婦を望むのは20代女性がいちばん多い」ということに驚きをもった人もいれば、「現状ではやはり結婚は考えられない。自分のこれからのキャリアを考えると事実婚がいい」と言う人もいたり…。また、「性体験がない未婚者割合が増えている」というデータをみて、「バーチャルな家族や恋愛への逃避が原因でもあるのだろうか?」と新たに疑問を持った人がいたり。それぞれの性別や年齢、バックグラウンドによって、思うことは実にさまざまなのだと実感しました。
「もし自分のきょうだいに同性婚をしようと思うと相談されたら?」という質問に対しては、年代や性別は関係なく「反対する理由はとくにない」「応援したい」など同じような意見になったとき、自分はきょうだいのために何ができると思うか、考えやアイデアをシェアすることにまで話が発展したのです。
さまざまな家族のカタチを知り、参加者と想いやアイデアをシェアできること、その体験を通して、自分にもできることがないか思いを巡らせることが、フューチャーセッションのいちばんの魅力なのだと気づきました。
「知らなくても生きて行けるけれど、知ることでもしかしたら少しずつ社会が変わっていくのかも?」と、新たな気づきを得られました。(取材・文・写真/本間勇気、ひよこクラブ編集部)