46歳で出産 女優・加藤貴子 子どもに“普通”を求めてしまった過去
連載8回目となる今回は、自分の中にある「ものさし」に関するお話です。無意識に、自分が考える“常識”に、子どもをはめ込もうとしてしまっていた、と語る女優・加藤貴子さん。この連載は、44才で第一子、46才で第二子を出産した、加藤さんの赤裸々な育児話と、育児に影響を与えた言葉を紹介しています。
自分の中で作り上げた“ものさし”
先日、友人に子育ての近況を話していたときのこと。私はたびたび「普通は…」を会話の冒頭につけていたようです。自分ではまったく意識していなかったのですが、気のおけない友人とのリラックスした会話の中で、なんの気なく口をついて出ていたようです。
だから、「タカちゃん、『普通は~』なんて~ないんよ~」と言われたとき、なんのことやらポカーンでしたが、友人は、かみくだいてていねいに説明してくれました。
「『普通さ~』とか『常識的に』なんて言葉が頭につく発想は、実のところ自分固有のものさしなんよ」
「なんでもそのものさしを当てはめて、人のことを計ろうとすると、トラブルになることが多いんやで~」
「育った環境も、価値観も感性も外見も、みんなそれぞれ違うんだから、同じ『普通』感なんて、あるようでないんよ」
「他人はもちろん、夫婦でも、親子であっても、言えることやで」
軽やかな関西弁に救われましたが、言葉の重みが胸にきました。そして自分が大きな勘違いをしていたことに気づき、恥ずかしくなりました。
無意識に子どもに求めていた“普通の子”
私は子育てするようになってから、普段気をつけていることがあります。それは、“まわりと比べて子どもをしからない”です。これは先輩ママから教わったことで、納得して、とくに心に留めていることでした。
でも…確かに同級生やお友だちと比べることはしなくても、自分の育った環境やなんとなく持ち合わせている常識観から私なりの“普通の子”のイメージを作り上げて、知らず知らずその頭の中の“普通の子”と息子たちを比べて、しかったりほめたりしていたんですね。
今までその“普通の子”のものさしで、どれだけ自分の子育てに足かせをしてきてしまったことか…。息子たちもずいぶん窮屈だったろうな~と反省しました。
子育ての一筋の光
ただ、いったん反省しながらもなお、そうそう簡単にそのものさしを手放せるものでもないよなと、すぐにまたモヤモヤがわいてきたので「それでも私の心の中で根づいてしまっている“普通の子”が、不安を感じて暴れ出したらどうしよう?」と食い下がってみたら、「その子の『個性』『特徴』と思って愛したらええやん、しゃーないな~って思ったらええやん」と、さらっと言われました。
なんだか一筋、光が射したような気持ちになりました。きっとこれから、やっぱり幾度もわくであろう不安のモヤモヤも、そのたびその一筋を見失わずたどっていけば、なんとか晴らしてくれるんじゃないかなと、そんな気にもなりました。
私が不安を抱いたり、イライラするときは大概、人や物事がこの自分のものさしの規定からはみ出したとき。
『個性』『特徴』を認める。
親子に限らず、すべての人付き合いでもそれを意識できたら、違いを個性として尊重できたら、いろんなことがスムーズにハッピーに進むんじゃないかな、と思いました。
(文/加藤貴子 構成/ひよこクラブ編集部)
子育てだけでなく、人間関係全般に通じる今回のお話。自分のものさしを一度見直してから、子どもはもちろん、すべての人と向き合えると、何かが変わるかもしれません。次回も、加藤さんの育児に影響を与えた言葉が登場します。お楽しみに!(構成/ひよこクラブ編集部)
Profile●加藤貴子
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。