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新型コロナウイルス「子どもからうつるかも」という不安・元WHO村中璃子医師特別寄稿

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写真/西川節子

いっこうに収束する気配がみえない新型コロナウイルス。「うちにはおばあちゃんがいる」「もしも子どもが新型コロナウイルスに感染したら」など不安な日々を過ごしているママ・パパのためにWHOの新興・再興感染症チームの勤務を経て、現在は医業の傍ら執筆活動を続けている村中璃子医師に、前回記事「換気が重要!新型コロナウイルス「一斉休校と学童のリスク」」に引き続き、3月16日時点でいえることを寄稿してもらいました。

わかってきたこと、わかっていないこと

新型コロナウイルスは子どもに感染しても、無症状か軽症で終わることが多いという話はもうご存知でしょう。

インフルエンザは脳症を起こすなど子どもで重症化することが珍しくありませんが、新型コロナウイルスでは人工呼吸器をつけなければならないような子どもの重症例は稀です。それでも「未知のウイルス、どうなるか分からない」と、不安はどんどん膨らんでいきます。

とはいえ、新型コロナウイルスと人類が付き合いを初めてからはや3か月。人類はすでに約17万人分の新型コロナウイルス感染者のデータと約8万人の回復者のデータを持っています。まだわからないことも多いウイルスですが、わかってきたこともたくさんあります。

子どもたちは無症状で集団感染している?

安倍首相は3月2日から始まった全国一斉学校閉鎖要請の理由を「子どもたちを集団感染から守るため」としました。そのためか、感染しているのに無症状や軽い症状の子どもたちが、知らぬ間に家庭にウイルスを持ち込み、大人にうつすことへの懸念が広がっています。特に自分や家族に持病があったり、高齢のおじいちゃん、おばあちゃんと同居していたりすればなおさらのことですね。

やっかいなことに、新型コロナウイルスは、無症状の感染者も他の人を感染させる可能性があると考えられています。

ただ、症状のある人と比較した場合の実際の感染力の強さについて、はっきりしたことはわかっていません。

発症前の感染者(潜伏期)の体内にも、症状のある人と同じくらいのウイルスがいるというデータも出てきていますが、ウイルスの量と実際に他の人にうつす感染力の強さは別の話。症状のない人は、せきやくしゃみなど飛沫を飛ばさないので、症状のある人に比べれば感染力は低いと考えられています。WHO(世界保健機関)も現在までのところ、「無症状の感染者が、流行拡大の大きな原因になっている可能性は低い」としています。

無症状の感染者に警戒するよりずっといい予防法

社会のどこにいるのか特定できるはずもない「症状のない感染者」に気を付けるよりずっと大事なのは、「感染が起きやすい環境」に気をつけること。海外のデータからも日本のデータからも、感染者の約8割はほぼ誰もほかの人を感染させておらず、残りの2割の人が、閉鎖空間や人との距離の近い場所、手で触れるものを他の人と共有する機会のある環境で感染を広げていることが分かっています。

つまり、道端ですれ違うとか換気のよいオフィスで一緒に仕事をするなど、普通に生活している分にはそれほど広がりやすいウイルスではない一方、特別な環境では広がりやすいウイルスということです。

症状のある人は外出しない、症状のない人も感染の起きやすい環境に身を置かないことで効率よく感染拡大を抑えることができることが分かりますね。

最近、有名な医学雑誌に「新型コロナへの子どもの感染しやすさは大人と変わらない」という論文が出ました。そのためか、症状のない子こどもが感染を広げているという不安感が一気に高まっていますが、これも「うつりやすさ」と「うつしやすさ」を混同した仮説です。

もちろん、症状のない子どもから感染する可能性がないとは言いきれませんが、元気に見える子どもたち全員が実は感染者ですでに集団感染している、子どもたちはそこら中でウイルスをまき散らしているといった可能性は低いと考えていいでしょう。

ただ、WHOは「子どもが流行拡大に果たしている役割については不明」としており、まったくの楽観もできません。現在、世界中で一般人口での年齢別の抗体保有率の調査(症状がない一般の人の間でどのくらい感染した形跡があるかを調べること)が急がれています。

軽くても症状があれば外出禁止、リスクの高い人は注意!

子どもの生活圏は学校と家との往復を基本としており、大人よりもずっと限られています。これまでにわかっている集団感染でも、出張先での飲み会とか近隣の都道府県からたくさんの参加者が訪れたライブハウスなど、集団感染が起きやすい場所を大人が訪れた時に発生し、地理的にも広げています。

症状のない子どもを警戒することより大切なのは、どんなに大事な仕事や楽しみにしていたイベントがあっても、「症状があれば行かない」こと。特に閉鎖空間や半閉鎖空間で過ごす用事であれば、絶対にやめましょう。

くりかえしになりますが、まずはこれを大人が率先することが大切です。

もう一つ大切なのは、症状がある家族が家庭内にいる場合に注意することです。一緒に食事をした、一緒に旅行した、一緒のイベントに参加したなど「濃厚接触」という言葉をよく聞くと思いますが、中でもリスクの高い濃厚接触は「感染者との同居」です。

といっても、やることはインフルエンザの時と同じ。

症状のある家族は別の部屋に休ませ、タオルや食器などの共有をやめます。症状のある家族本人にマスクをさせ、看護にあたる家族もマスクを着用します。手洗いを頻繁に行い、症状のある家族に接したら、その手で自分の鼻や口、そして「目」を触らないようにします。ドアノブやトイレ、テーブルなどを薄めた台所用漂白剤や「洗剤など」でこまめに掃除し、具合の悪い人が休んでいる部屋を1時間に数回換気しましょう。洗濯は他の家族とは別にしてください。

マスクには「感染を広げない効果しかない」という報道も目にしますが家庭内に新型コロナの可能性のある人がいる場合や、満員電車など感染者に至近距離で「ごほっ」と咳を吹きかけられる可能性のある場所は例外です。

健康な親御さんたちが症状のまったくない子どもの感染を疑って、不必要に子どもから距離をおく必要はありませんが、高齢の方や基礎疾患のある方が子どもと同居している場合には念のため、先に挙げた注意を実行してもいいでしょう。それ以前の問題として、リスクの高い人は、感染の起きやすい場所には絶対に行かないようにしましょう。
文/村中璃子 

関連:新型コロナウイルス 期待されている薬は妊婦には禁忌、妊婦が感染したらどうなるの?を、医師に聞く

村中璃子先生
PROFILE
医師・ジャーナリスト。一橋大学社会学部出身、北海道大学医学部卒。京都大学医学研究科非常勤講師。WHOの新興・再興感染症チームの勤務を経て、現在は医業の傍ら、執筆や講演活動を行っている。2017年、科学誌『ネイチャー』等主催のジョン・マドックス賞を、日本人として初めて受賞。海外メディアにもたびたび取り上げられ、世界からも注目を集める。著書に、『10万個の子宮 あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか』 (2018年、平凡社刊)。

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