「貯まらない共働き家庭」にありがちなことは?【お金の悩みをプロに聞く】
老後資金に2000万円が必要と言われても、目の前の教育費や住宅ローンで精一杯。
「働いているのに、思った以上にお金が貯まらない!」という悩みを持つ共働き家庭も多いのではないでしょうか。共働き家庭によくあるお金の悩みについて、ファイナンシャルプランナーの山口京子さんに聞きました。
Q.「貯まらない共働き家庭」まず何からはじめたらいい?
A.まずは座ったままできることから!
「まずは、簡単な『座ったままでできること』から始めましょう。通帳とクレジットカードの明細を用意して、ひと月の収入と支出をながめます。見るだけです。給料日に前月よりも貯金が増えていれば、まずは合格です。増えていない場合は、要注意。ここでよく聞くセリフが
『今月はたまたまなんです』
本当に今月はたまたまだったのでしょうか?1月はお正月、2月はバレンタイン、3月は新年度準備、4月はGW、5月は母の日、6月父の日・・・その間に家族の誕生日や冠婚葬祭があって、家電が壊れて!など、特別支出は、毎月あります。つまり、言い訳をしているといつまでたっても貯まらないのです。
まずは、貯めるお金をねん出するために、固定費を見直してみましょう。通帳やクレジットカードの明細から、毎月出ていく決まったお金の中で、必要ないものを解約したり、もっと安いプランにかえるだけで、生活レベルを一切落とすことなく、お金をねん出することができます。
ねん出したお金をそのままにしておくと、あっという間に使ってしまいます。給料が入ったら、有無を言わさず先取貯金です。先取貯金とは、使ってしまう前に、先に一定額をとって貯金しておくこと!そのお金はなかったものとして、残りのお金でやりくりします。
給料日前にクレジットカードを使う頻度が増えていれば、ピンチをクレジットカード払いで乗り切っている証拠。一旦クレジットカードはお家でお留守番して、デビットカードを使うのも手。デビットカードとは、口座残高までしか使えないカードで、そもそもムダ遣いができません。1日や1か月の上限を自分で設定することもできます。VISAやJCBなどの国際ブランドのついたカードなら、近所のコンビニから海外のお店まで、そのマークのついているお店ならどこでも使えます。ネットやアプリで買い物の記録がすべて確認できるので、家計簿いらずです。
貯まる家計への道は、言い訳をせず、固定費を見直し、ムダづかいできない仕組みを作って、先取貯金で確実に貯めていくことです。」
Q.貯めておくべきお金は何がありますか?
A.まずは「3大支出」から考えて
「『住宅資金』『教育費』『老後資金』の3つはしっかり考えたいお金です。この『3大支出』は急に用意できないので、いつまでにいくら貯める必要があるのか、今どれだけ貯まっているか、お互いに情報を共有しておく習慣をつけましょう。
『住宅資金』『教育費』は、支払い時期とおおよその金額が決まっているので、比較的計画が立てやすいお金ですね。ただ、マイホームは金額が大きいので、100万円単位の差が小さく見え、つい資金オーバーになりがち。決めた予算を守ることが大事です。
教育費は小学生までが貯め時ですが、スタートダッシュでおけいこ事に走りたくなるのが、親心。都市部では、中学から私立に通うのも珍しくありません。私立に行けば塾代はいらなくなる、と思っていたら授業のスピードについていけず塾に通うケースや、部活の費用、短期留学などで思わぬお金がかかることもあります。青天井になりがちですが、教育費をかけすぎて老後破綻しないように気をつけましょう。そのためにも夫婦で子どもの進路のことや進路に応じた教育費をいくら準備するかなど、話しあっておくことが、やはり大切です。また、子どもの進学先によっては大学からひとり暮らしせねばならない場合なども視野にいれて、教育費の計画を立てましょう。
3大支出の中で後回しにしがちなのが、『老後資金』。
人生100年時代だとすると、還暦を過ぎてから約40年という長い老後生活。いくらお金を貯めればいいのか、みなさん不安を抱えています。しかも、子育て世代は住宅ローンや教育費もあるため、老後資金のことまで考えられないという声が多くあります。でも先延ばしにしていても問題は解決しません。
自分の年金や退職金を全く知らない人が多いので、一度調べてみましょう。確定されたお金ではなくても、おおよその額をつかむことが大事です。夫婦の退職金と年金で毎月の生活費がカバーできそうであれば、あとは物価上昇に備えるくらいであまり心配はいりません。もし不足するようであれば、60歳以降もできるだけ長く働けるように準備しておくことです。老後はずいぶん先の話ですが、マイホームの有無、子どもの有無にかかわらずやってきて、いつまで続くかわかりません。だからこそ、時間を味方につけて少額でもコツコツ貯めて増やしておきましょう」
Q.夫婦別財布です。気をつけるべきことは?
A.相手まかせにしないこと
「共働きの増加に伴い、”住居費や光熱費は夫、通信費は妻”といったように、費目ごとに夫婦で分担する『別財布』の家庭が増えています。夫婦といえども、お互いの収入について根ほり葉ほり聞くことをタブーと感じている人も多いようです。
家計の在り方はそれぞれですが、夫婦別財布の場合、気をつけたいことが2つあります。
ひとつめは『支出状況の共有・見直しをまったくしない』こと。
担当している支出について自己完結せず、『今月の光熱費は先月と比べて〇〇円あがっていた』など定期的に相手に共有することが大切です。夫婦別財布でお金が貯まっていない家庭は、この共有をしていないケースが多いと感じます。『担当している分は支払っているから大丈夫』とお互いが支出を見直さないでいると、支出の無駄に気づけず、貯まらない原因になってしまいます。
ふたつめは『お互いの貯蓄をまったく把握していない』こと。
『想定外』のできごとに対処できないリスクがあります。
どちらかが突然入院したり、勤務先の経営が傾いて給料が減ったり、災害にあったり、人生何が起こるかわかりません。別財布の最大のメリットであり、デメリットは、生活費を出した残りが全部自分のおこづかいになることです。お互いに『相手が貯めていると思っていた…』ということにならないよう、もしもの時に使える貯金額は共有しあってお部きましょう。へそくりは言わなくていいので大丈夫です」
Q.お金の話をしようとすると嫌がられます。どうしたら?
A.金額を明確にしてタイミングをみて話し合いを
「家計の見直しについて話し合うのを嫌がる人は、男女ともに少なくないようです。まっ先に『自分のおこづかいが減るのでは…』と考えてしまうからでしょうか。
しかし、消費税がアップして家計の支出が増えたと思ったら、コロナウイルスの影響で収入が減ることも考えられます。今こそ、こうしたお金の見直しについて話すタイミングです。
子どものいる家庭では、消費税アップにより【1カ月あたり約3000〜5000円】支出が増えたと言われています。増えた支出をどこから捻出するのかを話題にするといいかもしれません。
なぜ支出が増えたのか、どこから捻出するのか、捻出しなければいけないのか、何のためにいくら貯めなければいけないのか。話し合いをするときは、家計を見直す理由と、金額(数字)を明確にしておくとスムーズですよ。
ただし、見直しを迫られるほうは、なぜ見直しを迫られているのか、理由がわからないと辛いだけ。相手の事情に共感してうえで、『子どもの教育費のため』『家族旅行のため』『老後資金のため』など明確な理由と、未来への仕送りであることのメリットを伝えるといいですね。
男性の場合は、収入と支出をまとめて、数字で示して話すのも効果的です」
Q.最近「投資」「資産運用」をよく聞きますが、危なくないですか?
A.今はワンコインから気軽に投資できる時代
「今は銀行預金だけでお金を増やすのは難しい時代。投資について理解しようとせず、ただ『怖い』『よくわからない』という理由でやらないのはもったいないことです。
お金は『貯める』だけでなく『増やす』こともできるものですが、見落とされがちです。投資というと100万円くらいないとできないイメージを持っている人が多いのですが、それは一昔前の話。今は、100円から投資が出来ますし、お金がなくてもTポイントや楽天ポイントでも投資ができる時代です。LINEスマート投資の、ワンコイン投資は、その名の通り毎週500円玉貯金みたいに、ワンコインずつ世界中に投資することができます。
WealthNavi(ウェルスナビ)や、THEO(テオ)といった、ロボットアドバイザーの質問に答えるだけで、あなたの年齢や収入、貯金、投資に関する考え方にあった商品を教えてくれて、クリック一つで買える、という資産運営サービスを展開している企業もあります。もう、何を買ったらいいの?で迷う必要はありません。
いずれも、スマホで申し込みができるため、働いているママが、平日の昼間に証券会社にいかなくてもOKです。
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なぜ増えたのかというと、リーマンショックという大暴落があったからです。毎月コツコツお金をつみたてる『つみたて投資』の結果は、一度に投資をする『一括投資』とは違い、下落した時にたくさん買えるのが特徴。一度調べてみてはいかがでしょうか」
いかがでしたか?貯まる家計にするには、まずは夫婦で話し合うこと。
この機会に夫婦で家計や資産運用などお金の話をして、貯まる家計に変えていきましょう。
(bizmom編集部/酒井範子)
山口京子さん
ファイナンシャルプランナー。証券外務員と保険募集人、宅建資格も取得。雑誌やテレビ・ラジオ出演など多方面で活躍。著書に『なまけものが得をするワンコインつみたて投資術』(ダイヤモンド社)『そろそろお金のこと真剣に考えなきゃと思ったら読む本』(すばる舎)などがある。
(編集部注)投資は元本保証がありません。資産運用はあくまでもご自身の責任で行ってください。
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