子どもの写真を部屋に貼るだけで自己肯定感が伸びる。発達の専門家が提案
「自己肯定感」が高い子どもは意欲や自信、自分への満足感を持つことができ、何事にも積極的に取り組めるようになります。子どもの自己肯定感を高める方法として、部屋に飾った子どもの写真を見ながらほめる、「ほめ写」が注目されているのを知っていますか。「ほめ写」の効果を研究している、臨床発達心理士で東京家政大学子ども学部子ども支援学科教授の岩立京子先生に、「ほめ写」のやり方と効果について教えてもらいました。
子どもの写真を家の中に飾り、親子で見ながらほめる
――「自己肯定感」「ほめ写」どちらも初めて聞くママやパパが多いかもしれません。どのようなものか教えてください。
岩立先生(以下敬称略) 「自己肯定感」は「自分はこれでいいんだ」と感じられることで、意欲や自信の元になるもの。自己肯定感が高いと、何事にも前向きに取り組めるようになります。子どもの自己肯定感は、ほめられることで高まっていくのです。
「ほめ写」は、子どもの写真を家の中に飾り、それを見ながらほめることで、子どもの自己肯定感を高めようという、新しい子育て習慣のことです。
――ほめることで子どもの自己肯定感が高まるのはわかりました。なぜ「写真を見ながらほめる」のがいいのでしょうか。
岩立 写真に残したいと思うのは、子どものいいところや、ママやパパが「子どものここが好きだな」と思うところですよね。そうした写真を家の中に飾り、目に触れるたびに「このときはすごく頑張ったよね」「ママは●●ちゃんのこの顔がとっても好きなのよ」などと話しかけることで、自然と子どもの自己肯定感が高まっていくのです。
「子どもをほめるのが苦手」「どう声をかけたらいいのかわからない」というママやパパも少なくありませんが、そういう人でも「ほめ写」なら無理なく子どもをほめることができますよ。
――今の時代、写真はたくさん撮るけれど、スマートフォンやパソコンにデータとして保存しているだけ、という家庭が多いと思います。プリントして飾らないとダメでしょうか。
岩立 データ画像は、スマートフォンやパソコンを大人が操作しないと、子どもは見られませんよね。ママやパパも写真を見るためだけにスマートフォンを開く、ということはあまりしないでしょう。「ほめ写」では、家庭内の目に触れやすい場所に写真を貼ります。いろいろな生活場面で目に入りますので、あえてほめようとしなくても、写真を話題にしながら子どもをほめる機会がグンと増えるし、親子のコミュニケーションも増えます。
また、同じ写真を何度も見ていると、一度見ただけでは気づかなかったことを発見することがあります。つまり、子どものことをより深く理解することにもつながるのです。
一方、子どもも繰り返し写真を見ることで、親が声かけをしなくても、「このときのぼくは頑張っていてかっこいい」「このときは、うまくいかなかったけれど、自分なりに頑張ってたんだな」などと感じ、自信を積み重ねていくことができます。
――「ほめ写」に適しているのはどのような写真ですか。子どもが何かに頑張っているシーンがいいでしょうか。
岩立 もちろん、子どもが何かに挑戦しているシーンは素晴らしいですが、日常的によく見られるようなシーンでもOK。たとえば、大好きなおかずをほおばっているところや、面白い寝相で寝ているシーンなどは、ほのぼのしてすてき。変顔の写真も親子の会話がはずみそうです。
家族で旅行したときの、みんなが笑顔で映っている記念写真でもいいですよ。
子どもが小さいうちは、ママやパパが「飾りたい」と思う写真を選んでください。子どもと会話ができるようになったら、「どの写真を飾ろうか」と、子どもと一緒に選びましょう。親子の会話がさらに増え、きずなが深まります。
ラクにできる方法で写真を貼り、感じることをそのまま伝えて
――子どもの写真を飾るとなると、「きれいなフレームを用意しなくちゃ」「写真を飾るスペースをリビングに作らなくちゃ」となり、面倒になってしまうママやパパもいそうです。
岩立 実は私も、子育て時代は仕事と子育てに追われていて、子どもの写真を飾ることはしていなかったんです。「ほめ写」を研究するようになってから、娘に「うちには写真なんて飾ってなかった」と言われています。当時の私は写真を飾ることを大げさに考えていたんですね。
でも、そんなふうに考えなくていいんです。飾る場所は家族がよく目にする場所なら、必ずしもリビングである必要はありません。また、フレームに入れずに、プリントした写真を壁にペタッと貼りつけるだけでもOK。100円ショップでかわいいマスキングテープがたくさん売っていますから、子どもと一緒に選ぶのも楽しいと思います。
それも手間だという人は、冷蔵庫にマグネットでとめておくのがおすすめ。冷蔵庫を開けるとき一緒に見て、「変身ポーズの●●くん、かっこいい~」などと一声かけるだけで十分に効果的です。
――新型コロナウイルス感染予防のための自粛が解消されたとはいえ、コロナ前より家で過ごす時間が長くなることは確実です。「ほめ写」は家庭を明るくしてくれそうですね。
岩立 ウィズコロナの生活において、家族のコミュニケーションはますます大事になります。「ほめ写」は家庭内の会話を増やすきっかけになってくれると思います。
また、一緒に家にいる時間が長くなると、つい子どもにイラッとすることもあるでしょう。そんなときは壁に貼った子どもの写真を見てみましょう。自然とほほ笑んでしまい、子どもをいとおしく思う気持ちが強くなるはず。「ほめ写」は子どもだけでなく、ママやパパにとっても効果があるものだと思いますよ。
「ほめ写」してみてどうだった?みんなの体験談
実際に「ほめ写」を行ったママに、「ほめ写」によってどんな変化があったか、教えてもらいました。
息子をほめているうちに、息子も私のことをほめてくれるように
「ほめ写で息子をほめ続けていたら、3カ月目くらいから、「ママの手ってすごいよね。だって、こういうふうに鍋をもって、おいしい料理をつくれるから」などと具体的な理由もつけて、日々私のこともほめてくれるようになりました。3才にしてお互いのよさを認め合える関係になっているのは、ほめ写の効果だと実感しています」(3才の男の子のママ)
家族だけでなくお客さまからもほめられ、自己肯定感がさらにUP!!
ほめられることが増えて、率先して動くようになりました。親としても、写真が目に入ると自然とほめる機会が増えるので、プラスのかかわりが増したように感じます。また、お客さまが写真を見て興味をもたれることもあり、家族以外からもほめられることによって、自信が増したように感じます。(7才女の子・3才女の子のママ)
お話・監修/岩立京子先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部
壁に写真を貼り、子どもと一緒に見ながらほめる。だれにでもできることで、子どもの自己肯定感を高められることがわかりました。それに、壁に貼った子どもの写真を見るのは、ママやパパにとっても癒やしのひとときになりそう。ぜひ「ほめ写」を始めてみませんか?
岩立京子先生(いわたてきょうこ)
(臨床発達心理士。東京家政大学子ども学部子ども支援学科教授)
Profile
東京学芸大学教育学部、大学院修士課程を経て、筑波大学大学院博士課程心理学研究科心理学専攻に進学。博士(心理学)取得。専門分野は幼児教育、発達心理学。多くの幼稚園での助言者、文部科学省の調査研究協力者会議の委員などを歴任。