ママでもキャリアアップをめざしたい。そのためのヒントを教えて【専門家】
子育てをしながら働くとなると、どうしても制約が生まれがちです。でも、本当はやりがいのある仕事をしたい、キャリアアップをめざしたいと考えるママも少なくないはず。育児と仕事を両立させ、キャリアアップするには、どうしたらいいでしょうか? 思いを実現するためのヒントを、自身も子育てしながら管理職に就いた経験のあるキャリアコンサルタントの櫻木友紀さんに聞きました。
まずは自分がどんな人生を歩みたいかを考え、言語化してみる
本当はもっとやりがいのある仕事をしたいのに、育児と両立できるか迷ったり、一歩を踏み出す勇気が持てなかったりする場合、“自分はどんな人生を歩みたいか”を考えることが大切だと言います。
「子育てに追われ、あわただしい毎日を送っていると忘れがちですが、子どもはいずれ大きくなります。つまり、子ども中心の生活は意外に短いということ。
まずは、人生100年時代において、自分はどんなふうに生きていたいかを考えてみましょう。もちろん、未来のことなので途中で変わっても構いません。自分にとって『やりがい』を感じるのはどんなものかを明確にするのもいいでしょう。自分が本当に求めているものを自覚することでブレなくなり、今、仕事とどう向き合ったらいいのかが見えてきます。
自分で収入を得られるということは、何があっても自分で生きてくれる強さがあるということです。キャリアアップしたいと思う気持ちを大事にしてほしいと思います」(櫻木さん)
自分の考えは、1人で考えるだけでなく、いろいろな人に話をして言語化するのがいいそうです。
「ただ頭の中で考えるだけでなく、言葉にすることで『自分はこんなことを考えていたんだ』と再発見できます。
話す相手は友人や同僚、先輩でももちろんOK。でも、お互いのことをわかっているために価値観を押しつけられたり、共感し合うだけで終わってしまったりすることも。そんなときはプロのコーチやメンターをおすすめします。コーチングや自己理解を深めるセミナーなどもあるので、活用してみてください」(櫻木さん)
上司や周囲には、普段からどんなことをやりたいか伝えるように意識して
職場では、普段からどんなことをやりたいのか希望を伝えておくことが大切だと言います。
「以前、私も派遣社員として働いていたことがあったのですが、『正社員になりたい』と希望を伝え、正社員になったことがあります。そのときに周囲から『正社員になりたいとは知らなかった。あなたは派遣社員として働くのが好きなんだと思っていた』と言われたんです。そのときに、自分の気持ちや希望は、はっきりと見せないと周囲には伝わらないんだと痛感しました。
やりがいのある仕事をしたいと思っているのなら、普段から上司や周囲にはそのことを伝えておきましょう。
『子どもがいるから〇〇ができない』とネガティブになるのではなく、『こんなことをやりたいです。今は難しいですが、何年後にはやらせてください!』と積極的にアピールすることで、上司もどんな業務を与えたらいいのかわかりやすくなります。頑張っている人は、周囲も支えたくなるものです。何かいい仕事があったとき、声をかけてくれる機会も増えるはずです」(櫻木さん)
チャンスが訪れたら、ぜひ挑戦して。現時点で得ている評価に自信を
とはいえ、実際にやりがいのある仕事に取り組める機会があっても、‟ちゃんと育児と両立できるかな”と不安になるときもあるかもしれません。でも、櫻木さんは「チャンスがあったらぜひ挑戦してみてほしい」と言います。
「女性は、できていることは過小評価し、できなかったことは実際より悪く思う傾向があります。そのため、自分が仕事をこなせるか心配になり、しり込みしてしまうことも…。
でも、未来のことはだれにもわかりません。将来に不安を覚えるときは、これまで自分が積み上げてきた実績を振り返ってみてください。過去の自分が評価されたからこそ、チャンスが訪れているということを忘れないでほしいです。
不安を払拭するためには上司に『自分を選んだ理由』を聞いてみるのもひとつの方法。客観的な理由がわかると、自信になるはずです」(櫻木さん)
急な休みのリスクを考え、常に仕事はオープンに
キャリアアップしたいと考えていても、子育てをしていると、子どもの急な発熱などで休まないといけない場合もあります。でも、“子どもがいて急に休む可能性がある”と最初から想定できるのは、メリットでもあると言います。
「風邪をひいたり事故にあったり、あるいは親の介護をしなくてはならなくなったなど、どんな人でも突然休む可能性はあります。子育て世代の場合、急に休む可能性があると自分も周囲もわかっています。普段から対策を立てられるのはママのメリットだといえるでしょう。ここで鍛えたリスク管理能力は仕事でも威力を発揮します(笑)
急に休むことを想定し、仕事はすべてオープンにする工夫をしましょう。だれが見てもわかるよう、どんな仕事を抱えているか、締め切りはいつかなど『業務の見える化』を。机の中や書類、自分の予定は全部公開するくらいの気持ちでいましょう。このような姿勢は、だれが休んでも仕事が回る組織作りにも貢献すると思います。
また、普段から周囲には子どもの様子は話しておくことも大切です。『インフルエンザが流行っているからうちもまずいかも…』など予告をしておくと、周囲も心構えしやすいです」(櫻木さん)
また、急に休んだときは仕事を代わってくれた人へのフォローも忘れてはいけません。
「まず、『すみません』は『ありがとう』に変換しましょう。そして、つい忘れがちですが、仕事を代わってくれたときは、ただお礼を言うだけでなく、その人が評価を得られるように配慮することが大切です。
たとえば、上司には『だれがどれだけの業務を引き受けてくれたのか』を伝えるなど、代わってくれた人の労力を見える化しましょう。逆に、その人が困っているときはサポートする気配りを。こうすることで、周囲も『育児中でもやりがいのある仕事をしたい』という気持ちを尊重してくれるはずです」(櫻木さん)
お話・監修/櫻木友紀さん 取材・文/齋田多恵、ひよこクラブ編集部
「子育てを通じて、仕事に活かせるスキルがたくさん身につきます。また働く私を見た子どもは、仕事に対してポジティブな印象を持ってくれました。『働くのって楽しそう』と子どもに思ってもらえるだけで、親の役割は果たしていると思いましょう」と櫻木さんは言います。
今後、共働き家庭も増えていく中で、共働きは当たり前という環境で育つのもいいことだと言います。やりがいのある仕事に就き、いきいきとしているママの姿を見て、子どもたちも多くのことを学べるに違いありません。
櫻木友紀さん(さくらぎゆき)
Profile
キャリアコンサルタント、プロコーチ、プロメンター。製薬企業で子育てをしながら管理職を経験。退職後、仕事を模索する中で、キャリアコンサルタントの職を知り、2018年に独立。管理職、女性、グローバルをキーワードに、第三者の視点からよりよい組織やキャリアに向けての活動を国内外で展開中。国際コーチング資格(ACC)、メンター資格を保有。
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