子どものコロナは、無症状や軽症! 過剰な不安に押しつぶされないで【小児科医】
日本で新型コロナの流行が始まって1年がたちました。新型コロナについてはまだわかっていないこともありますが、小児に関しては「子どもは新型コロナに感染しにくいし、かかっても無症状か軽症」「子どもが新型コロナの感染源になることは少ない」ことがわかっています。しかし、こうした情報がママやパパに十分行き渡っていないのが現状です。峯小児科医院長 峯眞人先生に、小児の新型コロナについて話を聞きました。峯先生は「ママやパパたちがコロナ禍で不安を抱えるあまり、子どもの健康や夫婦関係に影響を及ぼし始めている」と警鐘を鳴らしています。
コロナ禍、疲れやすい、眠れない、吃音、寝言などで受診をする子が増加
峯先生のクリニックには、臨床心理士のスタッフもいて、心の相談も受けています。とくにコロナ禍は、子どもでもだるい、眠れない、食欲がない、疲れやすい、吃音、寝言などの相談が増えていると言います。
「主な原因は、コロナ禍でのストレスでしょう。子どものストレスには、ママやパパのストレスが影響していることもあります。
赤ちゃんの場合は“泣きやまなくて…。どこか悪いのでしょうか?”と相談に来るママやパパもいますが、具合が悪くないのに、抱っこしても泣きやまないときは、ママやパパのストレスが原因のことが多いです。イライラしたり、不安な気持ちで抱っこされると、赤ちゃんは敏感に反応して泣きます。
乳幼児を持つファミリーに伝えたいのは、新型コロナに対する正しい知識を持って、必要以上の不安やストレスを減らしてほしいということです」(峯先生)
子どもの新型コロナは、ほとんど無症状か軽い風邪程度。
新型コロナの主な症状というと、発熱やせきをイメージするママやパパが多いと思いますが、子どもの場合は無症状か軽い風邪程度が一般的。発熱はほとんどないそうです。
「まずママやパパに覚えておいてほしいのは、子どもは新型コロナに感染しても、高熱は出ないということです。
“39度の熱があるけれど、うちの子新型コロナかしら?”と心配して、小児科に来たママがいます。そのとき私がママに伝えたのは“子どもが新型コロナにかかったら、39度も熱は出ませんよ”ということです。
するとママは“そうなんですか!?”と驚いていました。新型コロナの情報は大人と子どもでは違うことをママやパパにわかってほしいです」(峯先生)
また峯先生は、子どもにとって本当に怖い病気は新型コロナではないと言います。
「以前、子どもが発熱したとき新型コロナを疑い、医療機関で子どもにPCR検査を受けさせたママがいました。結果は陰性。でも熱が下がらないと言って、小児科に来ました。
PCR検査を受けた医療機関では聴診器を当てたり、のどを診たりすることはなかったそうです。
今、PCR検査を受けて“新型コロナでなければ安心”と考えるママやパパもいますが、小児科医からすると、子どもにとって本当に怖い病気は新型コロナではありません」(峯先生)
コロナより怖い病気の目安は発熱。高熱や熱のぶり返しは、必ず小児科へ
子どもにとっての怖い病気の1つの目安が発熱です。
「新型コロナウイルスの流行で、昨年は、季節性インフルエンザやRSウイルスなどが流行りませんでした。これは徹底した感染対策の効果だけでなく、ウイルス干渉によるものではないかという考え方もあります。
ウイルス干渉とは、新型コロナが大流行し人の体内に侵入しているときは、ほかのウイルスが新型コロナに席を譲るような現象です。
新型コロナが怖いからと受診を控えるママやパパもいますが、新型コロナ以外の感染症が流行っていない今、高熱が出たり、熱が下がってもすぐにぶり返すときは、必ず小児科を受診してください。また食欲がない、機嫌が悪い、寝つきが悪いなどいつもと様子が違うときも同様です。新型コロナ以上の大きな病気が隠れていることもあります」(峯先生)
小児科医・峯先生が回答! コロナに関する育児、夫婦関係の悩みアレコレ
コロナとの闘いは先行きが見えないため、ストレスや不安を抱えているママやパパも。なかには夫婦関係や育児に影響を及ぼすケースもあるようです。コロナ禍でのママの悩みに、峯先生が答えます。
【Q】里帰り出産から、東京の自宅に帰るのが不安
里帰り出産をしたのですが、新型コロナのことを考えると東京の自宅に帰るのが怖いです。パパとは、もう3カ月も会っていません。パパに「心配性過ぎるよ」と怒り気味に言われると悲しくなります。
【峯先生より】基本的な対策をしていれば必要以上の心配はいりません
新型コロナは、人との関係を壊す感染症でもあります。うまく乗りきらないと、夫婦関係に影を落とすこともあるでしょう。ママは、東京の感染者数を見て、自宅に戻ることを躊躇されているようですが、新型コロナは、子どもに感染しづらく、万一、感染しても無症状や軽症がほとんどです。子どもがうつるのは、大人からが多いので、外ではパパとママがマスクをするなど基本的な対策をしっかりしてください。陽性者とマスクなしで15分以上接触すると濃厚接触者になるので、ランチなどの飲食は十分注意を! そこさえ注意していれば、過剰に怖がることはありません。
【Q】コロナが怖くて、お散歩にも行けません
6カ月の息子がいますが、6カ月ごろから赤ちゃんは免疫が落ちると聞いて、怖くてお散歩にも行けません。家にずっといると、私も涙が出てきます。
【峯先生より】赤ちゃんの健康のためには、少しでも外へ
子どもの心と体の健康のためには、家に閉じこもっていることがいちばんとは言えません。子どもはお散歩に行って、肌で風を感じたり、電車や車を見たりするなどいろんな刺激を受けることで、心も体も健やかに成長します。ママがマスクをしたり、帰宅後、手をよく洗ったりするなど基本的な対策をとっていればお散歩に行っても大丈夫! 家にこもっていると涙が出るような状況は、ママのメンタルヘルスにもよくないです。
【Q】集団健診が中止になり、子どもの発達が心配
11カ月ですがおすわりが安定しません。9~10カ月健診がコロナで中止になり、様子見の状態が続いています。家にいると、おすわりのことばかり気になります。
【峯先生より】かかりつけの小児科で個別健診を受けて
集団健診が中止になった場合は、かかりつけの小児科で個別健診を受けましょう。9~10カ月健診ではおすわりやはいはいの様子などを確認します。発育・発達は継続して診て行く必要があり、気になる場合は「翌月、もう1回来てください」など医師から言われます。中止になったからといって、次の健診まで待つ必要はありません。
お話・監修/峯 眞人先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
新型コロナの流行で心配されているのが医療崩壊です。しかし峯先生は「子どもは大人よりもコロナに感染しづらく、ほとんど無症状なので、小児医療はひっ迫していません。そのため新型コロナや病気のことだけでなく、発育・発達や離乳食のことなど気になることは、遠慮なく小児科医に相談してください」と言います。育児の不安をため込まないことが、コロナ禍でのママやパパのメンタルヘルスを保つことにもつながりです。
峯 眞人先生(みねまひと)
Profile
医療法人自然堂 峯小児科医院長。日本大学医学部卒業。埼玉県立小児医療センター未熟児新生児科などを経て、昭和59年開業。彩の国予防接種推進協議会会長、SIDS家族の会医学アドバイザーを務める。
※文中のコメントは口コミサイト「ウィメンズパーク」の投稿からの抜粋です